国内の飲食マーケットが縮小する中、海外に活路を求めている飲食企業は少なくない。しかし、海外で店舗展開するのは国内での展開にはない課題が少なからず存在する。外食ドットビズでは、飲食店の海外進出に際しての課題と解決策を飲食業に関わる先人たちの経験から探り、情報として提供していきたいと考える。
今回は、海外飲食店の店舗ITを支える株式会社寺岡精工の代表取締役社長 寺岡和治氏にお話をお伺いした。
− 中国の方は、優秀でハングリー精神を持っているというお話でしたが、反面独立精神が高くて定着率が低いのではないでしょうか?
【 寺岡社長 】(以下、敬称略) 私どもの場合は定着率が低いということはないです。なぜかというと、現地のマネージメントを中国人責任者が担当しているからです。他の日本企業と大きく違うところではないでしょうか。
我々より十数年遅れて中国に出てきた競合企業さんは、社長はもちろん、製造部長、営業部長、管理部長、品証部長など各部門の責任者がすべて日本人という体制でした。中国人はその下で働くことになりますが、日本人と中国人はメンタルがまったく違います。コミュニケーションひとつをとっても難しい。上が日本人ばかりの体制で働かせられると、実際に仕事をしている人たちには、「 自分の会社 」 という意識が希薄になってしまうのです。これは、中国人のメンタリティの問題と一言では片付けられないと思います。マネジメントスタイルの違いも大きいと思います。ですから良い条件があればそちらに行ってしまうのではないでしょうか。
当社はトップも中間管理職も中国人ですから、コミュニケーションに問題はありません。一体感を持って仕事ができています。しかも、わりと自由にやっているんじゃないですか(笑)。自分たちで考えて製品開発したり、販売網をつくったり、海外市場の開拓をしています。ビジネスそのものを 「 自分たちがやっているという意識が高い 」 ですから目を輝かせて働いていますよ。早期退職者が皆無とはいいませんが、定着率が低いということはありません。
− では、日本人スタッフの役割はどこにあるのでしょうか?
【 寺岡 】 上海の拠点には従業員が299人いるのですが、日本人は1人だけです。なぜ必要かというと、日本の小売店や外食企業が中国に出店される際に現地で対応させていただくために駐在しているのです。本社とのインタフェースというよりも、現地のお客様とのプロトコルのためですね(笑)。やっぱりプロトコルが合わないとビジネスもうまく行きませんから。
− 話は変わりますが、日本人枠が1人だけだとなかなか赴任できないですね
【 寺岡 】 大きい声では言えませんが、体質はドメスティックですね。日本全体に言えることかもしれませんが、昔の方がまだ目線が外に向いていました。今は、同じ釜の飯を食った人たちと一緒に仕事をするのが心地良いからか、外に出て一旗あげてやろうという人は少なくなりました。最近の学生は、面接中でも 「 海外駐在はないでしょうね?」 なんて聞いてきますから(笑)。
− 日本人スタッフがお客様対応に専従し、その他は現地スタッフが担うとい体制が鍵ということですね。
【 寺岡 】 日本人スタッフが現地と本社のインタフェース役をやっていると、どうしても心配事が先に立ってしまい、“ 物事を規制する ” というベクトルが強く働く懸念があります。さらに、現地のトップや幹部クラスに、日本のスタッフがとっかえひっかえやって来るような事態になると、その度に方針が変わります。下で働く中国人スタッフは、「 この会社にいて将来はどうなるのだろう?」 「 自分が上に行くチャンスはないな 」 と思っていまします。それならば、機会があったら転職しようということになってしまうのではないでしょうか。
中国人のメンタルがどうこうと言われますが、大きな問題はマネジメントスタイルじゃないでしょうか。相手を信頼して任せるところは任せてしまう。そこまで踏み込めるかどうかで、中国ビジネスの成否が決まるような気がします。
株式会社寺岡精工
会社概要 1934年11月(昭和9年)に、「はかり」メーカーとして創業、一貫して先進技術を追求する姿勢で、計量機器から情報機器へとはかりを進化させ、業界のリーディングカンパニーとなる。80年代からはスーパーなど流通業界向けのPOS事業を展開、90年代には高度情報化時代に対応すべく、POSや計量包装機、電子棚札などすべての製品をインターネットでつなぐシステムを開発するなど画期的な製品を市場に投入してきた。近年になって外食産業に参入、ASP型フードサービス統合システム「Delious(デリオス)」やペン型オーダー端末など最新技術を駆使した商品やソリューションを提案している。
代表者 代表取締役社長 寺岡和治
経営理念 経営革新と新技術により、世界市場における新しい価値の創造を企業活動の基本理念とし、もって顧客、取引先、社員ともども真の繁栄を期する。
取材協力 ホスピタリティソリューション事業部 ソリューション営業部 次長 鹿野浩二氏