オーダリングシステムやPOSレジによって外食業界での確たるブランドを確立している寺岡精工には、もうひとつ外食分野と密接に連関する事業がある。2000年に立ち上げた、逆浸透膜ろ過システムを使った純水製造装置「ECOA(エコア)」である。スーパーマーケット等に設置する自販機型や社員食堂向けのサーバー、厨房での調理業務用などさまざまなタイプがあり、水道水を安心な純水に変えて供給している。震災に伴う原発事故で発生した放射性物質を除去できることも判明し、さらに注目度が高まっている寺岡精工の浄水事業に焦点をあててみる。
東日本大震災に伴う福島第1原発事故で、水道水への放射性物質混入が明らかになると、「 ECOA 」 を設置する企業や店舗、利用者から放射性物質のろ過能力に関する問い合わせが寺岡精工に相次いだ。スーパーマーケットや飲食関連施設に設置する純水造水装置であるため、開発段階で放射性物質を想定した実験はしておらず、問い合わせに対して 「 当初は、確たるデータが無いため保証はできませんでした。原水は水道水ですから、管轄の水道局もしくは自治体の発表にしたがった使用をお願いしますとしか言えなかったのです 」 と包装環境事業部 営業グループ 次長 小池宏昭氏。
復興支援活動の一環として、同社は安心な水を確保すべく福島県飯館村の役場に 「 ECOA 」 を設置(避難区域となったためすでに撤去)、周辺住民に自由に使ってもらえるようにしていた。そこで、飯舘村役場の協力を得て、放射性物質を含んだ同役場の水道水を原水としたECOAのろ過能力測定を実施したのである。2011年3月26日、飯舘村役場の手洗い場の水道管にECOAを接続して公共水道水(原水)とECOAでろ過した水を採取、同28日に株式会社化研・水戸研究所へ測定を依頼したところ、原水には最大値で暫定規制値の2倍の放射性ヨウ素131と、暫定規制値を下回る放射性セシウムが含まれていたが、「ECOA」でろ過した試料からはいずれも検出されないレベルになっていたのである。データ公表後は、継続的な除去能力や排水の放射性物質に関する質問も多数寄せられるなど大きな反響があった。
(詳細は下記サイトを参照)
2011年3月31日発表 「 ECOAの放射性物質除去能力について 」
http://www.teraokaseiko.com/news/topics/11_3_30/index.html
2011年4月7日発表 「 ECOAの放射性物質除去能力についての回答 」
http://www.teraokaseiko.com/news/topics/11_4_7/index.html
新規設置の問い合わせも多くなっており、比較的に導入事例が少なかった飲食店からも来ているという。「 大規模チェーン様から個人店様まで、規模・業態に関係なく問い合わせをいただいています。食事されるお客様に、“安心してもらえる食材を提供したいから”という意識が高まっているようです 」(小池氏)
被災した飲食店の中には、再建に伴い 「 ECOA 」 導入を決めたところもあるという。水道水に含まれる放射性物質は減少傾向にあるので、必要以上に神経質になることはないのかもしれない。しかしながら、人が口にするものを提供している飲食店としては、命を預かっているという責任がある。安心を維持するための手間やコストはいくら掛けても無駄にはならない。「 水も大切な食材 」 と捉え、真摯に安心な水を追求した寺岡精工の姿勢は見習うべきものがあるだろう。
会社名
ECOA OFFICE オフィシャルサイト
会社概要 1934年11月(昭和9年)に、「はかり」メーカーとして創業、一貫して先進技術を追求する姿勢で、計量機器から情報機器へとはかりを進化させ、業界のリーディングカンパニーとなる。80年代からはスーパーなど流通業界向けのPOS事業を展開、90年代には高度情報化時代に対応すべく、POSや計量包装機、電子棚札などすべての製品をインターネットでつなぐシステムを開発するなど画期的な製品を市場に投入してきた。
近年になって外食産業に参入、ASP型フードサービス統合システム「Delious(デリオス)」やペン型オーダー端末など最新技術を駆使した商品やソリューションを提案している。
代表者 代表取締役社長 寺岡和治氏
経営理念 経営革新と新技術により、世界市場における新しい価値の創造を企業活動の基本理念とし、もって顧客、取引先、社員ともども真の繁栄を期する。
取材協力 包装環境事業部 営業グループ 次長 小池宏昭氏