オーダリングシステムやPOSレジによって外食業界での確たるブランドを確立している寺岡精工には、もうひとつ外食分野と密接に連関する事業がある。2000年に立ち上げた、逆浸透膜ろ過システムを使った純水製造装置「ECOA(エコア)」である。スーパーマーケット等に設置する自販機型や社員食堂向けのサーバー、厨房での調理業務用などさまざまなタイプがあり、水道水を安心な純水に変えて供給している。震災に伴う原発事故で発生した放射性物質を除去できることも判明し、さらに注目度が高まっている寺岡精工の浄水事業に焦点をあててみる。
寺岡精工が浄水(純水)事業を立ち上げた当時、水を売るビジネスは日本国内には皆無に近い状態だった。一部には、マイナスイオン水やアルカリイオン水をタンクに溜めてスーパーの出入口に置くという事例もあったが、あくまで「調理用水」としての供給であった。「 調理用水 」 は、簡単に言えば “ 飲用時には煮沸が必要な水 ” のこと。裏を返せば、飲料水の自販機を設置するには、厚生省の認可や所轄保健所の自販機設置許可などが必要なのだが、当時の水供給器はそういう仕組みになっておらず、しかも、水の自販機の前例がないために行政側に認可の枠組みさえ存在しなかったのである。「 逆浸透膜に着手しましたが、“ 直接飲めない水 ” を提供しても仕方がありません。次のステップは、飲料水としての認可を取得し、同時に機械の構造を検討していきました 」(包装環境事業部 営業グループ 次長 小池宏昭氏)
逆浸透膜による水の自販機がすでに普及していたアメリカでは、つくった純水を一度タンクに溜めて1ガロンずつ供給する仕組みだった。しかし、厚労省からは 「 溜め水では認可できない 」 と指摘があり、利用者ごとに提供する構造へ変更しなければならなかった。その結果、貯水タンクを使わず水道に直結して、逆浸透膜から直接新鮮な純水を供給できる 「 ECOA 」 のシステムが誕生することとなったのである。また、運用に関しては、利用者側が雑多なボトルを持って来ると、何らかの残液が付着して異臭を発する可能性もあるため、専用ボトルを導入することとなった。製品タイプによる型番認可が取れて設置前例ができると、事業は比較的スムーズに進んだ。設置されたスーパーマーケットを訪れる消費者に対しては、寺岡精工の営業マンが機械の横に立って説明して浸透を図った。
スーパーマーケット等の販促用に開発した経緯があるため、スーパーのカード会員限定で専用ボトルを販売したり、カードを自販機のリーダーに通すことで給水できるといった仕掛けで、リピーターや新規顧客獲得に貢献したのである。
外食店舗向けの 「 ECOA 」 としては、調理場専用タイプの 「 ECOA-K80 」 がある。上下水道と設置スペースがあればすぐに運用できるもので、厨房の蛇口から直接純水が供給されるようになる。寺岡精工の社員食堂には完備されており、本体は上階に設置、厨房で使う水やカフェのコーヒーなどすべてに純水を用いている。実際の飲食施設への導入事例としては、ホテルの厨房やスーパーマーケット内の米飯センター、社員食堂が多いとのこと。また、飲食店の利用者向けに提供するのであれば、冷水と温水を分けて供給できる 「 ECOAオフィス 」 が適している。同製品は、ショッピングセンターの飲食施設や企業の福利厚生設備として導入例が多い。
会社名
ECOA OFFICE オフィシャルサイト
会社概要 1934年11月(昭和9年)に、「はかり」メーカーとして創業、一貫して先進技術を追求する姿勢で、計量機器から情報機器へとはかりを進化させ、業界のリーディングカンパニーとなる。80年代からはスーパーなど流通業界向けのPOS事業を展開、90年代には高度情報化時代に対応すべく、POSや計量包装機、電子棚札などすべての製品をインターネットでつなぐシステムを開発するなど画期的な製品を市場に投入してきた。
近年になって外食産業に参入、ASP型フードサービス統合システム「Delious(デリオス)」やペン型オーダー端末など最新技術を駆使した商品やソリューションを提案している。
代表者 代表取締役社長 寺岡和治氏
経営理念 経営革新と新技術により、世界市場における新しい価値の創造を企業活動の基本理念とし、もって顧客、取引先、社員ともども真の繁栄を期する。
取材協力 包装環境事業部 営業グループ 次長 小池宏昭氏