ペン型オーダー端末やタッチパネル式券売機など、外食産業向けに新たなシステムを提案している株式会社寺岡精工。フードサービスソリューションの企業としては後発参入となるが、独自の視点と切口によって誕生した商品やシステムは斬新なもので、飲食店の新サービスになるという声も多く聞かれている。
今回は、代表取締役社長・寺岡和治氏へのインタビューを通して、外食産業の活性化に貢献する“ホスピタリティ・ソリューション”を考察してみる。
―昨今は「とがった価値で限界突破!」という積極的なキーワードを掲げられているようですが、これにはどういった意味や思いがこめられているのでしょうか?
【 寺岡氏 】 いまはマーケットが成熟しているため、通り一遍の必要性というものはすでに満たされてしまっています。プラスα程度の価値を持ったソリューションを持っていっても反応してもらえません。景気も影響しているでしょうが、マーケットの本質的な厳しさは成熟度が極めて高まっているからだと思います。そのような状況で、企業として生きていかなければいけませんし、成長もしなければいけません。そのためには、我々のお客さんでさえも気がついてないことや、競合企業がトライしていない領域を探しださなければいけないのです。そこに向けたソリューションというものは、ある意味で独善的なものかもしれません。なぜかというと、飲食店からのニーズに基づいてつくったというものではないからです。潜在的ニーズはあるのかもしれませんが、「 こういうものがほしい 」 と口には出てきていないからです。
しかしながら、我々はソリューションの分野では、飲食店の方々よりもプロであるはずです。レストランで美味しいものをつくったり、快適なサービスを提供することはできませんが、レストランについてのソリューションはつくれるのですから、店舗側が気付いていないソリューションを率先して提供すべきだと思っています。我々は、ニーズに対応して製品を開発してお届けするというビジネスはやりません。これは、「 やろう できる 他で造れぬものをつくる 」 という社訓にも表れています。70年以上も前に親父がつくった社訓と同様に、自分達のオリジナリティーで勝負しろという意味を含んでいます。
―今後の展開について、海外の外食産業向けソリューションでは、どのような展望をお持ちですか?
【 寺岡氏 】 狙っているのは、やはり中国をはじめとするアジア全域です。彼らはどん欲ですからね。基本的にビジネスというものは、ハングリーなマーケットでやる方がいいですから。アジアはまだまだハングリーです。日本の外食チェーンも日本がオーバーストアになっているため、中国、マレーシア、シンガポールに進出するところが増えていますが、それよりも何百倍もの規模で現地のチェーン店が育っています。それを狙わない手はありません。
―発展段階のマーケットに対しては、基礎的なソリューションを提案するのですか?
【 寺岡氏 】 そうではなく、最先端のソリューションを持っていきます。ソリューションのマーケットというのはおもしろいもので、たとえば日本で10年掛かったプロセスを追いかけるのではなく、10年掛かって結論をすぐ導入するという意識が強いのです。ですから、言語を含めて多少はローカライズしますが、日本で積み上げた最先端のものをそのまま提供することになります。ですから、現地の経営者達は、我々の話を積極的に聞いてくれますね。
我々の製品は、すべてASPをベースにしているわけですから、お客さんが100店舗持っていようが、1000店舗であろうが、いわゆる本部システムというものを構築する必要がないのです。我々が大きな本部システムをつくって、その中にお客さんごとのしきりをもうけて、セキュリティーを確保する仕組みをつくっています。中国やシンガポールにも顧客ができましたが、皆さんすべて日本のサーバを見ているという状況です。すべて同じデータをもとにして、中国語で出したり、英語で出したりしています。そういう意味では、海外展開しやすいビジネス環境にあるといえます。
―最後に、日本国内の外食業界に向けて、今後提供していく商品やソリューションの計画について教えてください。
【 寺岡氏 】 統合システム 「 Delious 」 を核にして、オーダー入力手段を多様化したりと展開を広げていきます。それから、お店がホスピタリティレベルを上げようとするには、現状のサービスレベルを計測しないことには何もできないはずです。がんばろうと声をかけて上がるものではないですから、注文から提供までの時間を計測し、これを2分縮めるにはどうしたらいいかを提案し、実際に短縮されたかを検証するという仕組みを構築したいと思っています。
これはとても大事なことだと思っています。ただデータを出すだけでは、「 なるほど 」 で終わってしまいます。ASPでのデータ加工を工夫していけば、次々と新しいニーズが出て、システムの全体のブラッシュアップになるはずです。データからサービスレベルを計測して強化するという指標を出せれば、ホスピタリティ領域は大きく発展できるのです。我々の強みは、ハード・ソフトの両方をつくっていることにありますから、業態に合わせてソリューションを強化することも考えていきます。これからもいつも次の商品やアイデアを頭のなかにたくさん描くようにしていきます。
―お忙しい中、貴重なお話をいただきありがとうございました。
株式会社寺岡精工
会社概要 1934年11月(昭和9年)に、「はかり」メーカーとして創業、一貫して先進技術を追求する姿勢で、計量機器から情報機器へとはかりを進化させ、業界のリーディングカンパニーとなる。80年代からはスーパーなど流通業界向けのPOS事業を展開、90年代には高度情報化時代に対応すべく、POSや計量包装機、電子棚札などすべての製品をインターネットでつなぐシステムを開発するなど画期的な製品を市場に投入してきた。近年になって外食産業に参入、ASP型フードサービス統合システム「Delious(デリオス)」やペン型オーダー端末など最新技術を駆使した商品やソリューションを提案している。
代表者 代表取締役社長 寺岡和治
経営理念 経営革新と新技術により、世界市場における新しい価値の創造を企業活動の基本理念とし、もって顧客、取引先、社員ともども真の繁栄を期する。
取材協力 ホスピタリティソリューション事業部 ソリューション営業部 次長 鹿野浩二氏