ペン型オーダー端末やタッチパネル式券売機など、外食産業向けに新たなシステムを提案している株式会社寺岡精工。フードサービスソリューションの企業としては後発参入となるが、独自の視点と切口によって誕生した商品やシステムは斬新なもので、飲食店の新サービスになるという声も多く聞かれている。
今回は、代表取締役社長・寺岡和治氏へのインタビューを通して、外食産業の活性化に貢献する“ホスピタリティ・ソリューション”を考察してみる。
― “ しゃべるペン ” と呼ばれる、ペン型のセルフオーダリングターミナル 「DeliTouch」 の開発経緯を教えてください。
【 寺岡氏 】 従来型のタッチパネル式のセルフオーダーシステムに問題点があると思ったからです。我々もスーパーのセルフPOSでタッチパネル式をつかっているので分かるのですが、結論からいえば、あまり使い勝手が良くないという問題があるのです。たとえば、カラオケ店で歌を選ぶ時は、自分が唄いたい曲が決まっていて、それをいかにして簡単にサーチするかということが大事になります。曲の頭文字やカテゴリーから検索できるようにすればいいわけです。そういうものには、階層化された検索画面というものが適しているのですが、飲食店の場合は 「食べたいものが決まってない」 わけです。決まってないものを検索できるはずはありません。だから、飲食店の場合は紙のメニューが最適だというのが根底にあります。
お客さんは、紙のメニューを見ながら食べたいものを探していくのです。食べたいものがあって、それがメニューのどこに載っているかを探しているわけじゃないのです。そこに気がついて、紙のメニューを活かしたまま注文できる仕組みをと考えたのです。結果的には、紙のなかに見えないバーコードを刷り込んでおいて、ペンでタッチするという発想になりました。
声を出してしゃべるようにしたのは確認のためです。ペンで触ったメニューが自分のほしいものだと耳で確かめられます。これを目で確認してもらうとなると、表示するための端末を置かなければいけないわけです。客として居酒屋にいくと分かりますが、小さいテーブルの上にいろいろなものがあると、皿が置けなくなってしまいますよね。飲食店のテーブルに余計なものを置くスペースはないはずです。無理に置いてしまったら、飲み物をこぼす障害にしかなりません。声で確認できるなら、テーブルに置くのはペン立てだけで済むのです。
――タッチパネルを採用した券売機はどこから発想したのですか?
【 寺岡氏 】 飲食ではメニューブックに勝るものはありませんから、券売機のスペースをメニュー代わりにすべきだと思っていました。ですから、タッチパネルを採用しようというものではなく、従来型のボタン式券売機を画面化してメニューにしようと発想したのです。ボタンではいくら頑張ってもメニューにはなりません。ボタン式券売機の代替としてタッチパネルにしたのではなく、メニューにするという発想が我々の根幹にあります。
サイズが19インチもありますから、階層化する必要はありません。それに、券売機を使うお店は、朝昼晩で時間限定メニューというものが結構あるのです。僕も最近知ったのですが、ラーメンチェーンでモーニングサービスをやっているところがあるのです。パンのモーニングセットがあって、11時頃になると昼のメニューになり、3時過ぎると夕方のメニューになる。餃子をつまみにビールというニーズにも対応しているわけです。時間限定メニューをボタン式券売機で対応しよういうのは不可能なことです。
―次世代タッチパネル券売機「Saleup(セラップ)」というネーミングですが、客単価を上げるという意味もこめられているわけですか?
【 寺岡氏 】 実際にそういう効果が出ていて、導入いただいたラーメンチェーン店ではトッピングの注文が増えています。それまでにも一定の比率でトッピングを頼む固定客がいたそうですが、その比率がどの店でも上がっているのです。玉子やのり、コーン、もやしなどの売上は倍増していたはずです。店舗としては、どうしても売りたいメニューは数百円もするラーメンですから、ボタン券売機では100円程度のトッピングのボタンは下の方に行かざるをえません。仕方がないから、店内でも注文できるというシステムにしていますが、お客さんの立場にしてみたら、店内で注文はしにくいものです。券売機で買っておけばよかったと思ってしまいます。だとすれば、券売機でラーメンを選んだときに、画面がポンと変わってトッピングメニューになれば注文してもらえますよね。店舗側にしてみれば、コーンなどの食材をスプーンですくって入れるだけの作業ですが、粗利率はとても高いですよ(笑)。
株式会社寺岡精工
会社概要 1934年11月(昭和9年)に、「はかり」メーカーとして創業、一貫して先進技術を追求する姿勢で、計量機器から情報機器へとはかりを進化させ、業界のリーディングカンパニーとなる。80年代からはスーパーなど流通業界向けのPOS事業を展開、90年代には高度情報化時代に対応すべく、POSや計量包装機、電子棚札などすべての製品をインターネットでつなぐシステムを開発するなど画期的な製品を市場に投入してきた。近年になって外食産業に参入、ASP型フードサービス統合システム「Delious(デリオス)」やペン型オーダー端末など最新技術を駆使した商品やソリューションを提案している。
代表者 代表取締役社長 寺岡和治
経営理念 経営革新と新技術により、世界市場における新しい価値の創造を企業活動の基本理念とし、もって顧客、取引先、社員ともども真の繁栄を期する。
取材協力 ホスピタリティソリューション事業部 ソリューション営業部 次長 鹿野浩二氏