ペン型オーダー端末やタッチパネル式券売機など、外食産業向けに新たなシステムを提案している株式会社寺岡精工。フードサービスソリューションの企業としては後発参入となるが、独自の視点と切口によって誕生した商品やシステムは斬新なもので、飲食店の新サービスになるという声も多く聞かれている。
今回は、代表取締役社長・寺岡和治氏へのインタビューを通して、外食産業の活性化に貢献する“ホスピタリティ・ソリューション”を考察してみる。
―スーパーなど流通業界向けから、どういう経緯で外食産業へソリューションを提供することになったのですか?
【 寺岡氏 】 いまの外食産業向けのシステムは、いわゆるオーダーリングシステムで、いかにお客さんからスピーディーに効率よくオーダーを取って、いかに早く厨房へ伝達するかという視点で組み立てられています。外食産業に本格進出してから3年しか経っていない我々のような新参者が出る幕がないほど、先人達によって優れたシステムが提供されています。しかし、効率性以外に、まだまだ足りていない部分があるだろうと見ていたわけです。飲食事業というのは、競争が非常に激しく、どうやってホスピタリティのレベルを上げるかが業界としての大きな課題となっています。そこに、旧来のサプライヤーがまだ提供してない部分があったというのがきっかけになっています。要するに、お店のホスピタリティレベルを上げるためのソリューションという切口です。
もうひとつは、そこにくるお客様にとっての快適さや、新しいダイニングエクスピアリアンスを感じてもらうという領域もあると思いました。それから、このビジネスは、チェーン店が次から次へとお店を出したり、スクラップ&ビルドを繰り返したりということが多いですから、柔軟に対応できる情報システムという領域でも勝負できると思いました。
(1) お店がホスピタリティレベルを上げるためにやれることがある
(2) ゲストが楽しくなるために貢献できることがある
(3) 情報システムの柔軟性が求められている
という3点に集約されます。これら3つの点は、まだ満たされていないし、これからの店舗にとって非常に重要になってくると思い参入したのです。
レストランというのは、お客様に対して、いかに美味しいものを心地よく楽しく食べていただけるかを追求するビジネスのはずです。ですから、情報システムというのは、飲食店にとってみれば面倒くさい話で、もっと言ってしまえば “ 必要悪 ” かもしれません。やらなくてすむのであればやりたくない、仕方なくやっているというケースがたくさんあると思います。我々は、飲食店の皆さんにとってのコアとなる 「 美味しいものを快適に食べていただくこと 」 に集中してもらえるようにお手伝いをしたいのです。情報システムの部分は、すべて我々が黒子として裏で担っていきます。
我々の顧客は、40 ~ 50年前は 「 はかり 」 をご使用になる肉屋、魚屋、八百屋など、スーパーマーケットができる前の食品小売店が中心でした。その顧客の方々が時代の流れとともに、スーパーマーケットに変わっていき、我々の事業もスーパー向けのソリューションになっていったのです。事業がそのように切り替わってきたものですから、ホスピタリティ業に対して新しい機能や価値を提供するテクノロジー、それらをサポートするサービスのインフラといったビジネスの下地は持っていたともいえます。スーパーマーケットも飲食店同様に厳しい状況でしたから、顧客の皆さんから鍛えられ、いじめられて強くなりました(笑)。そのなかで築き上げたテクノロジーとサービスインフラは、一朝一夕にできるものではありません。そこから、我々の企業価値が出せるのではないかと判断したのです。
株式会社寺岡精工
会社概要 1934年11月(昭和9年)に、「はかり」メーカーとして創業、一貫して先進技術を追求する姿勢で、計量機器から情報機器へとはかりを進化させ、業界のリーディングカンパニーとなる。80年代からはスーパーなど流通業界向けのPOS事業を展開、90年代には高度情報化時代に対応すべく、POSや計量包装機、電子棚札などすべての製品をインターネットでつなぐシステムを開発するなど画期的な製品を市場に投入してきた。近年になって外食産業に参入、ASP型フードサービス統合システム「Delious(デリオス)」やペン型オーダー端末など最新技術を駆使した商品やソリューションを提案している。
代表者 代表取締役社長 寺岡和治
経営理念 経営革新と新技術により、世界市場における新しい価値の創造を企業活動の基本理念とし、もって顧客、取引先、社員ともども真の繁栄を期する。
取材協力 ホスピタリティソリューション事業部 ソリューション営業部 次長 鹿野浩二氏