東京電力が2007年9月に開設した業務用電化厨房総合体験施設「Switch! Station Pro. 有明」は、学校や病院、福祉施設、そして外食産業を対象に電化厨房機器を体験させることで、電化厨房のさらなる普及を目指すという施設である。電化厨房は、衛生的な厨房環境がつくれる、ランニングコストが軽減できるなど、多くのメリットがある一方で、イニシャルコストが高いといったイメージで捉えられている傾向もある。食の安全・安心や環境問題に対する消費者心理の高まり、さらには、省エネ法の改正など外食産業界を取り巻く環境は厳しいものに変わりつつある。そのような状況下では、厨房の電化によって解決できる問題もあるだろう。今回は、「Switch! Station Pro. 有明」の施設紹介とともに、最新の厨房機器や導入メリットなど電化厨房の“今”を同施設の館長・津川透子氏に聞いた。
--- 飲食店経営者にとっての電化厨房のメリットについて教えてください。
【 津川館長 】 やはり、コスト削減が大きなメリットだと思います。「 電化厨房は高い 」 とおっしゃる方が多いのですが、私どもは “ 不当に ” 高いと評価されているのではと思っています。確かに高い機器もありますが、従来の製品と同じ価格帯のものもたくさんあります。業務用の厨房には、冷熱機器や流し台などいろいろな設備機器が入っていますので、そういったものとトータルでお考えいただきたいと思います。さらに、空調や換気の設備を抑制することができたり、当然ガスの配管工事もいらなくなります。そういったところまで勘案していただくと、ものすごく高いということはないと思っています。電化厨房はお金がかかるという誤解を解いて、トータルでお考えいただきたいというのがひとつです。
--- 電化によって、ランニングコストの削減は明らかだと思いますが、どの程度になるか目安はあるのでしょうか。
【 津川館長 】 電化厨房をトータルで考えると、ランニングコストで削減できる余地が非常に大きいと言えます。あるファミリーレストランチェーンの経営者の方は、「 2年未満で回収できるという確信を得ているから、電化厨房を展開している 」 とおっしゃっていました。大体それくらいのイニシャル、ランニングのバランスになっているようです。その会社の概算では、オール電化によってイニシャルコストが1から2割弱ほど上がるのですが、ランニングコストは2、3割程度下がるのです。ある店舗の実例では、オール電化にした際、建設費が1400万円から1600万円に上がったのに対して、ランニングコストは1店舗当たり年間で100万円強も安くなったそうです。それが検証できたので、オール電化を推進する経営判断をなされたそうです。
また、ビルのテナントに入る居酒屋のような業態ですと、既存設備によって変わってきますが、建設費は50万円程度しか差がない場合もあるようです。それから、副産物的に人件費の削減という効果も出る例も多いです。電化したことによって、閉店後の清掃が楽になって、30分も早く帰宅できるようになったというのです。これは大きなコストダウンですよね。それから、洗剤の使用量が減ったとか、白衣のクリーニング代が年間で3割も削減できたという例もあります。中華系のお店では、床やダクトの汚れが大幅に減ったという声が多いですね。メンテナンスや修理、消耗品までトータルで考えると、ランニングコストには大きな差が出るのです。
--- 中華料理といえば、電化厨房機器では調理が難しいという印象がありますが、普及は進んでいるのですか?
【 津川館長 】 最近は、中華用のIHレンジも充実してきて、違和感なく調理できるという声が多く聞かれます。また、価格的にも、今年、当社と厨房メーカーとの共同開発で低価格帯のものが発売されたので、今後の普及に期待しています。
--- 最後に、電化厨房機器の普及に関する現状の課題と今後の展開をお聞かせください。
【 津川館長 】 採用いただきやすい価格を実現して、知名度を上げることが課題だと思っています。電気か?ガスか?という選択をしてもらうステージにすら立てていないのが現状ですから。経営者の皆さんにはコストダウンというメリット、厨房で働く皆さんには安全な職場環境を得られるというメリットがあります。しかし、いくら電化のメリットを叫んでも、消費者の皆さんに対して、美味しい料理、快適な空間、食の安心・安全をお約束するものでなければ、ただの独りよがりでしかなりません。お客様目線を大事にすることが普及には欠かせないと思っています。
たしかに、数年前までは電化厨房の機器は種類が少なくて高価でしたが、その環境は大きく変わってきています。価格は下がり、製品ラインナップが増えただけでなく、電化だからこそのスペックやメリットをもった厨房機器が数多く登場しています。一度電化を経験すると、ガスには戻れないという飲食店の方も多くいらっしゃいます。この施設からさまざまな情報を発信して、飲食店関係の皆様に電化厨房へのご理解をさらに深めていただきたいと思っています。「 Switch! Station Pro.有明 」 は、原則的に無料で利用できる施設ですので、気軽にお越しいただいて電化厨房を実際に見て触れてください。ご自分のお店に合うメリットを感じていただけると思います。
電化厨房体験施設
「Switch! Station Pro. 有明」
http://www.tepco-switch.com/biz/ssp/
所在地 東京都江東区有明3-5-7 TOC有明イーストタワー20階
事業主体 東京電力株式会社
施設内容 セミナー・プレゼンテーションルーム、モデル厨房ゾーン、テストコーナー
受付時間 9:00~17:00(完全予約制)
休館日 土・日・祝日
連絡先 03-3527-5911