飲食業界で独立・開業を目指す起業家に授業と演習・ロールプレイングによって「経営の追体験」を提供ししている「テナントプラス・アカデミー」。ここでは、リアルな課題に立ち向かう知識とノウハウを教授し、独立開業を成功へ導く羅針盤となる実践講座を実施している。飲食店起業家を成功に導きたいとの想いを「テナントプラス・アカデミー」事務局長の高野賢一氏に伺った。
-まず飲食業に携わった経緯についてお教え下さい。
大学を卒業後、アパレル関連の会社を経て、マーケティングの会社に勤めました。そこでは、特にサービスマーケティングを専門として、日本航空、ミサワホーム、シャープ、JR東日本、ルミネ、KDDI、近畿日本ツーリスト、ワコールなど様々な業種の企業に対し、サービスマーケティングの視点から経営顧問として助言・支援をしていました。そのような中、サービスのブランド化、いわゆるブランディングに興味を覚えたんです。そこで、サービスマーケティング&ブランディングを業務したいと考え転職を決意しました。
様々な候補から決めたのが「ひらまつ」でした。飲食業に興味を持っていたのです。なぜなら、大切な人とともに過ごす時間の大切さ、楽しさを感じることができる最高のステージがレストランやホテルだと考えていたからです。私自身もそういう場所で楽しいひと時を過ごしていました。そこで繰り広げられる人的サービスの素晴らしさ、おもてなしの心、気遣いや気配りの行き渡った快適な環境、何より、そう言ったサービスを受けた際の居心地の良さに惹かれたのです。
実は、「ひらまつ」が生まれて初めて本格的なフランス料理を食べた店だったのです。その時の記憶が鮮明で、飲食業に勤めるならここだと思ったのです。とはいっても私が希望する職種の募集を行っていたわけではありませんでした。そこで、旧知のギャルソンに頼んで就職希望を打診することにしました。
その方法というのが、「 事業の成長戦略 」 と 「 ブランディング戦略 」 を企画書に纏め上げ、平松宏之社長宛に提案をしたのです。そして、面接に至ったのですが、その時社長から 「 こんなもの読んでいないよ 」と一蹴。こっちは相当気合を入れて作ったのに(笑)。ですが、「 面白い奴だから入れてやる 」 と入社が決まりました。
入社にあたって、自分で心に誓ったことが、1年で絶対に役員になってやるということでした。より高い次元の仕事をするために経営陣になろうと考えたのです。家族に対して、「 これから1年間は無休で働く。そして1年後には役員になる。 」 と宣言しました。残念ながら1年半かかってしまいましたが(笑)。
-飲食企業で学んだことや課題に思ったことをお教え下さい。
多くのことを学びましたね。まず、「レストランは生きている」ということです。日々違ったことが起き、一日たりと同じではない状況かに置かれるのです。また、文化そのものを商材としているということです。例えばフランス料理の背景にはフランスそのものの文化が詰まっています。これを料理としてお客様に提供、提案するという仕事なのです。いわば「文化を広める仕事」といっても過言ではありません。そして、飲食業は 「 人材育成業 」 だということです。これほど人に依存している仕事は無いんじゃないでしょうか。調理もサービスも全て人に依存しています。ですから常に人材を育てていかなくてはならない。そこに差別化を求めていく必要があると学びました。
一方で課題についても多くのことを感じました。指示待ち族が多すぎる。調理場を中心としたまるで相撲部屋のような徒弟制度。人を喜ばせる仕事なのに、楽しげに働いている人が少なかったり喜びを見出せない人が多い。社会的地位が低いと自ら蔑む人も多い、またそれを会社のミッションにしている企業にも疑問を感じます。そして何より報酬水準の低さ、本当に多くの課題を感じました。
私自身が飲食企業に身を置いて、学んだこと、課題として感じたことを解決したい。そのためにはこれから飲食業で起業する方々や起業後のアーリーステージの段階で試行錯誤している方々に対し、伝えていきたいと考えて、「 テナントプラス・アカデミー 」 を立ち上げることにしたのです。
高野賢一氏
1964年 長野県松本市生まれ
1986年 信州大学経済学部卒
1986年 株式会社ワイズフォーメン ヤマモト入社
1990年 株式会社ジャパンライフデザインシステムズ入社
1997年 株式会社ひらまつ入社
1998年 同社マーケティング担当取締役に就任
2008年 株式会社コンプリートコネクション創業
2010年 飲食店のビジネススクール「プラウディッシュ」開講
2012年 起業家育成講座「テナントプラス・アカデミー」開講