以上の様に、外食企業のアーリーステージでは、今後の成長に影響を及ぼす課題が山積みになっている。従って、システム導入のターゲットは、これらの課題を顕在化させ、店舗と本部が一体となって改善の方向付けが出来る様な、マネジメントサイクルの仕組みが優先となる。
システム導入を本格的に検討し始めると、「会計処理」「給与」「店舗システム(POSやOES)」「食材発注」「従業員の勤怠管理」といった個別の業務システムの検討から入りがちになる。勿論これらのシステムは企業経営にとって重要なものであるが、位置付けとしては、経営システム(マネジメントサイクルの実践用)の「サブシステム」として考えたい。個別システムから着手すると、システムに求める機能や必要情報が不明確な状態で進めることになり、やがて根幹の経営の仕組みから離れたものになっていく。さらに、経営システムを後付けで検討すると、サブシステムに対する新たな要求が加わり、企業経営全体の最適化が遅れてくる。当然、サブシステムに対するメンテナンスコストも膨大なものになってしまう。
経営システムは、市販のソフトを買ってくればすぐ出来るというレベルのものではない。実験と検証を繰り返しやり続ける事で出来上がっていく。最低限必要なものは、店舗で発生する数値確定の為の「POS」と、簡単な会計パッケージぐらいだろう。業績指標や当初の管理会計用の仕組みは「EXCEL」で充分機能する。また、個別業務システムについては、ASP( Application Service Provider )事業者の活用も検討したい。ASPのメリットは、規模に見合った業務システムの活用が可能であると同時に、情報システムの運用に関わるリスク回避と、システムコストの平準化、ASP事業者からのノウハウの享受にある。
この段階の経営者は、“まだまだ我々のレベルでは…”と考えがちであるが、早ければ早い程構築し易いのは明解である。
■マンスリーマネジメント
■ウィークリーマネジメント
構築手段としては、まずマンスリーマネジメントの仕組みを固め、管理会計を主体としたマネジメントサイクルを定着させる事。マネジメントサイクルの基盤が出来ると、企業としての未整備の部分や、課題が浮き彫りになる。これらの課題を着実に解決していく事で、次への成長のステップとなっていく。
坂尻 高志
外資系コンピューター会社勤務後、すかいらーく入社。店長~事業部運営スタッフ~本部営業部門を担当した後、情報システム部で、店舗系システムの開発に着手。1995年情報システム部長。以降主にすかいらーく本部の業務システムの開発と、業務改善を実施。1999年独立。外食企業のIT化、経営政策の立案、業態開発、スタッフ教育等に従事。