外食企業に於ける情報システム構築の着眼点 ~外食ドットビズ論説主幹 坂尻高志~

外食企業に於ける情報システム構築の着眼点 外食ドットビズ論説主幹 坂尻高志

第4回 システム構築初期段階での成長の壁とシステム化の課題

外食企業が成長していく段階では、その規模毎に様々な障壁が立ち塞がる。よく言われるのは、「10店舗」「30店舗」「100店舗」「300店舗」の壁である。外食産業の発祥年である1970年以降、外食産業の成長をリードしてきた企業達は、血の滲む想いでこの障壁を克服してきた。特に成長初期段階での課題と問題解決をおろそかにすると、必ずその後にしっぺ返しが来る。規模が大きくなるにつれ、やり残した課題は分厚い壁となってくるであろう。外食企業の成長段階での経営課題として次の3点に着目したい。

(1)ローカルチェーンからリージョナルチェーンへ

ローカルチェーン化での重要課題は自社の成功フォーマット造りにある。それにはFLコスト(原価+人件費)、出店ポイント、建設投資、QSC等の「判断基準」を明確にする事が重要である。ある程度の規模になっても、この判断基準が不明確な企業が意外と多い。この段階では、経営判断をする時の「曖昧さ」を排除する事が重要となる。ローカルチェーン化が達成できたら、今までとは異なる商勢圏に挑む事になる。

(2)アウトプットマネジメントが実践出来る仕組み作り

アウトプットマネジメントとは、数値を見て問題発見する「技術・能力」の事である。店舗数が2桁を越えてくる段階では必須のマネジメントであり、それには2.で述べた「基準作り」が前提となる。数値を見て問題と改善の方向を発見し、作業改善を繰り返し、その結果、数値が変化したか、目標に達したかを検証し、また新たな課題に取り組むと言ったマネジメントサイクルは、この段階で築き上げたい。

(3)報告と連絡の「躾」

3.のマネジメントサイクルの仕組みが出来ていなかったり、不充分であったりすると、経営判断や状況判断の重要数値の信憑性が薄くなってくる。システム化の大きなメリットはここにある。“POSは導入したが、そこから得られる情報の活用の仕方が分からない”と言ったスタンスでは無く、“欲しい情報があるからPOSを導入する、ITの力を借りる”という意識がほしい。
これに加えて大切なのは、数値のやり取りだけでなく、店舗と本部間での報告と連絡のコミュニケーションを円滑にさせる企業風土作りだろう。店舗で発生したお客様クレーム、異常数値の発生、改善報告、問い合わせ等については、速やかに報告させ、またそれに対して素早く行動を起こすといった、店舗・本部相互間の「躾」作りが重要となる。
“ウチの店長は何も報告してこない”という嘆きもたまに聞く。これは店長が悪いのではなく、過去色々と報告された事に対して、本部が答えていなかったからだろう。この状態が続くと、「本部は店を疑い、店は本部を信用しなくなる」といった悪循環を芽生えさせてしまう。



 	坂尻 高志

坂尻 高志

外資系コンピューター会社勤務後、すかいらーく入社。店長~事業部運営スタッフ~本部営業部門を担当した後、情報システム部で、店舗系システムの開発に着手。1995年情報システム部長。以降主にすかいらーく本部の業務システムの開発と、業務改善を実施。1999年独立。外食企業のIT化、経営政策の立案、業態開発、スタッフ教育等に従事。

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