外食企業に於ける情報システム構築の着眼点 ~外食ドットビズ論説主幹 坂尻高志~

外食企業に於ける情報システム構築の着眼点 外食ドットビズ論説主幹 坂尻高志

第3回 企業に於ける情報システム化の目的

テレビコマーシャルではないが、情報技術に対して、日本では「IT」( Information Technology )という用語が使われているが、国際社会では「ICT」が一般的である。「IT」にコミュニケーション(C)を加えたもので、文字通り「情報」は蓄え、整理し、人に伝える事によって始めて意味を持つ。情報システムとは「情報」の「伝達」の仕組みであり、それによって「次への行動を促す」事である。
一般的には、システム化が遅れている典型的な産業として認知されていた外食産業も、漸くITインフラ構築の時代から、“情報活用”“顧客獲得”のステージに突入してきた。

情報システム導入の目的は、一言で言えば、「多くのお客様に圧倒的に支持される企業造り=企業の健全な成長を実現させる」事である。
情報システムは、人間の身体に例えると、必要な臓器に充分な栄養分と酸素を供給する「血管」であり、頭で考えた事を手足に伝えたり、目の前の変化に素早く対応したりする「神経系」の役目を果たす。この機能が不充分だと健康体を維持できないばかりか、危険を察知できなくなり、大きな事故を引き起こす。企業も同様で、「血管」と「神経」が働かないと健全な成長は果たし得ない。店舗の店長や従業員、本部の各部門(機能)が、それぞれ自分の果たすべき役割に向かって素早く行動を起こせる為に、情報システムの導入がある。そのポイントは次の通り。

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■強固なマネジメントの基盤を構築する事

企業経営の骨格である「マネジメントサイクル」の仕組みをまず築く事が重要(後述)。企業システムでは最も重要な仕組み。

■マーケットの変化が迅速に把握出来る事

市場の変化や商圏の変化が経営判断にフィードバック出来る仕組みを築く事。お客様や店舗、もしくはそれに近いところでのIT化。

■素早い意思決定が出来る事

スピード経営の実現。知識やノウハウの共有も含む。フラットな組織造りと「権限」「責任」の明確化がポイント。

■「小さな本部」と「強い」スタッフを造り上げる事

ポイントはIT教育。トップ含め全員のITスキルを高めていく事。情報システム部門の重要な機能。本部費は売上対比5%以下が目標。強いスタッフ造りが決め手。

よく“情報システムを入れたけど効果が見えない”とか“情報システムは売上に貢献しない”という意見を耳にする。これは単純に突き詰め方が不充分で、トップ自らがシステム構築に関与していない事に起因している。「経営」と「システム構築」を全く別物と判断しているとこう言う事になる。システム導入は「IT機器の導入」では無い。“システムは苦手”と言って、ITの得意な担当者に全てを委ねると、まったく視点の異なるものが出来上がってしまう結果にもなる。システム構築とその可否の判断は、トップの重要な命題だと言う事を再確認すべきである。



 	坂尻 高志

坂尻 高志

外資系コンピューター会社勤務後、すかいらーく入社。店長~事業部運営スタッフ~本部営業部門を担当した後、情報システム部で、店舗系システムの開発に着手。1995年情報システム部長。以降主にすかいらーく本部の業務システムの開発と、業務改善を実施。1999年独立。外食企業のIT化、経営政策の立案、業態開発、スタッフ教育等に従事。

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