今年、創業51周年を迎えた 元気寿司 は、全国展開する大手回転寿司チェーンの中でも最古参の老舗回転寿司企業だ。そのような企業が、今なお存続しえるのは、過去を活かし、しかし過去にとらわれず、常に新しい考えを取り入れ進化し続けているからである。今回は、同社営業企画部長の相沢敏之氏に、キャッシュレスと販売促進を実現するプリペイド&ポイントカード「SushiCa」の導入について伺った。
ワンフローズンのサーモンといった高品質にこだわった素材の採用、オールオーダー方式の積極的導入、そして、コンセプトの異なる多ブランド展開など、競争の激しい回転寿司業界の中で、新しい取り組みを順次取り入れてきた元気寿司だが、キャッシュレスという面では若干他社の遅れをとっていた。そこで、創業50周年を迎える2018年の年初頃からキャッシュレスに対する具体的検討を開始した。
キャッシュレスに対し、同業他社の多くはクレジットカードを採用していた。そこで同社は、他社との差別化を図ることからも、プリペイド方式のハウスカードの導入を検討することとした。このプリペイド方式のハウスカード検討の理由はもう一つあった。それは、年会費不要で容易に利用でき、ポイントが貯まり、しかもチャージした金額が少しでも残っていれば、必ずや再来店してもらえるであろうと、リピーターの囲い込みにも繋がると考えたのである。
検討を進めていくにあたり、同社は、パートナー企業として㈱バリューデザインを選定した。選定の大きな理由は、他の外食チェーンへの導入実績であった。また、提案時のレスポンスの速さと、洗練されたカードデザインという面も大きかった。そして、春先にはサービス設計に入り、創業50周年記念日にあたる2018年12月12日に、「SushiCa(スシカ)」と命名し、サービスを開始した。なお、「SushiCa」は、チャージすることで繰り返し会計に利用でき、また、支払いに利用したり、一定額以上チャージするとポイントが貯まり、貯まったポイントは会計に使えるというプリペイド&ポイントカードである。
サービス開始に先立ち、10月に、50周年の記念品として特別仕様のチャージ済み「SushiCa」が全従業員に配布され、同時に、オペレーションの練習を兼ねて利用できるようにした。結果的に、従業員自ら利用できたことが、後の「SushiCa」利用者増に大きく役立つことになった。
12月に入り、「SushiCa」開始の告知のため、2回にわたり約150万部の折込チラシを配布したが、反応は良くなかった。同月は繁忙月で、通常月の1.5倍ほどの集客をし、売上も順調に推移していたが、「SushiCa」は想定を大幅に下回る1万枚ほどしか出なかった。そこで、年が明けた2019年1月に賞金をつけてブロック対抗での社内コンテストを実施した。ここで、サービス開始前に自らユーザーとなっていたことが役立った。使い勝手の良さを理解していたことが活き、来店客に積極的に勧めることができたので、右肩上がりに利用者が増え、3月の社内コンテスト終了時には3万枚を超え、その後も、ユーザー向けのポイントアップ企画など計3回のキャンペーンを実施した結果、2019年11月の段階では12万枚強が使われるまでに拡大したのだ。
導入効果も顕著に表れ、10月の台風上陸などの事由がある月を除き、順調に客数も前年度超えが続き、リピーターも確実に獲得できていた。特に、女性は、ポイントなどに敏感なのか、利用者が男性に比べ圧倒的に増えていた。また、様々な販促と連携できる面も大きなメリットであった。
一方で、課題もいくつか出てきた。例えば、金額をチャージできるところが各店舗のレジだけなので、使い勝手の悪さは否めない。そこで来春を目途にスマホのアプリと連携させることで、アプリからチャージをできるようにするなど課題解決に向けた手も極力早く打つようにしている。
今後は、ロイヤリティの高いユーザーには、よりお得な特典を付与するなど、リピーターの拡大に向けた取り組みを中心に、販促の大きな武器として利用していきたいとしている。