飲食店に求められることは、売上高を増やすことはもちろんのこと、無駄な出費を減らしコストダウンを行うことである。特に個店の経営に際して、スケールメリットを享受してコストダウンを行うことは難しい。飲食店商店街は、個店を連合体としてスケールメリットを出し、コストダウンを実現することを目指している。今回は、飲食店商店街を運営する有限会社勝馬の代表取締役 宮川壮介氏に飲食店商店街の取組みを中心に話を伺った。
会社設立の翌年の平成13(2003)年3月、東京・市ヶ谷に1号店となる 「 花びし 」 をオープンしました。この時、自己資金はほぼゼロでした。「 花びし 」 の前は、もともと、私の知人が飲食店を運営していて、5,000万円ほど借金が残っていたのです。要は、「 借金が付いてくるが、ここでやってみないか」という話だったのです。“ 親戚からいくらか援助を受けて小さな店を持つ ” か “ スタートから借金を背負ってでも大箱で勝負する ” かという選択に、私は迷わず後者を選んだのです。まあ、若気の至りですよね。今では絶対にやりませんが、当時は、5,000万円の借金なんてなんでもないと、根拠の無い自信があったんです(笑)。
「 花びし 」 は、居酒屋と割烹の中間をイメージしてつくった和食業態の店です。料理は、四季に応じて旬の食材を使った季節感のある料理を提供するために、年4回のグランドメニュー改定を行い、各季節の旬の魚と、春には山菜、夏にはすっぽん、秋にはきのこ類、冬にはすっぽん鍋などを中心とした料理を提供しています。内装は、和の雰囲気を醸し出すために、壁には全て漆喰を用いるなどとこだわり、掘り炬燵のある広めのスペースを設けて宴会需要を取り込むなどの工夫を凝らしました。
正直、最初の3年間は、非常に厳しい状況でした。内装のみならず、外装にもこだわり過ぎて、「 高そう 」 とか、「 とにかく入りづらい 」 と言う話を良く聞きました。そこで、とりあえずお店に入って頂こうと考え、ランチ営業を始めたのです。会社員の方々はもちろんのこと、立地が市ヶ谷駅と靖国神社の間にあることも功を奏し、3月下旬から4月上旬のお花見の季節にはどっと来店して頂くこともでき、爆発的に売上を伸ばすことができるようになりました。ランチにお越しいただいたお客様がディナーでもご利用頂けるようになったことも要因です。そこでだいぶ息を吹き返しましたね。借金返済もあと一歩というところまで来ました(笑)。その後、平成23(2011)年に 「 麺匠大宮/はなび 」 という、昼はうどん店で夜が居酒屋の店を神保町にオープンしました。
自分で店舗を構えると、色々なことがわかって来ます。ライバル店となる居酒屋同士では、なかなか横の繋がりというものが無いのですが、ある時、何店舗か展開している目の前の居酒屋さんが、当店と同じ問屋さんと取引をしていることを偶然知り、そこの社長と顔を合わせた時に聞いてみると、見事なくらい納品価格に大きな差があることがわかりました。もちろん当店の方が高く仕入れていました(笑)。多店舗展開の店より、オープンしたての1店舗の方が不利だということは、数々の修行の現場でも目の当たりにしていましたのでわかっていました。わかっていながらも、同じ番地にありながらあまりの価格の違いに愕然としました。
愕然としながらも、これは何とかしなければならない。そのためには多店舗化する必要がある。しかし自分でやるには資金も時間もかかる。じゃあ、同じような境遇の個店を集めることでスケールメリットを出せるのではないだろうか、と考えたのが 「 飲食店商店街 」 を始めるきっかけだったのです。
飲食店商店街
http://www.katsuma-support.com/
運営企業有限会社勝馬
本社東京都千代田区九段北4-2-11 第2星光ビル102
代表者代表取締役 宮川 壮介氏
事業内容コストダウン支援事業並びに飲食店の経営