今回の視察の舞台は、ネバダ州南部に位置する世界のオアシス、ラスベガスである。
今回は、集中連載記事にも連載中の「 FS/TEC The NAFEM Show2007 」視察の前に、店舗視察が行われた。
展示会視察の前工程で、店舗視察行程が組まれるのは異例である。
今回視察では、ホスピタリティという視点での観光地の外食店舗を視察するという目的と、国内未到来のファーストフード(米国では Quick Service=QS )店舗をピックアップするのが目的である。
まずは、ホテル施設内のバフェとしては雰囲気、品質ともに日本でも有名を成す、 パリス・ル・ビレッジバフェ( Paris Le Village Buffet ) からお届けする。
また言い訳から始まるが、観光案内ではないので、かいつまんで。
20世紀初頭、ゴールドラッシュと鉄道勃興の時代に、給水地点として駅が出来たのがきっかけで街が出来たそうで、現在のようなエンターテインメントとカジノの町としての拡大が始まったのは、第二次世界大戦後だそうである。
空港より15分で市街地へ。「砂漠」というものを実感させる荒々しい車窓である。
州法によるカジノの合法化は早い段階(1930年代?)で行われていたが、その観光地としての成長を加速させたのはやはり1950年以降急激に増えた観光ホテルの建設が牽引しているだろう。
ご存知エンターテインメント&カジノの街として、あまり健全では無いイメージが定着しているが、90年代以降、ニューファミリーを対象にした路線で、テーマパークの要素を持つホテルが急増した。
現在では70あまりの中・大規模ホテルが密集しており、その収容キャパは客室数13万室を越えるという。
ほんの半世紀で、主要都市に160万人強の人口を抱え、いまも米国のリタイア候補地として上位に食い入り、人口の増加曲線は衰えていないようだ。
ネバダ州全体の人口が、190万人弱だったか。当然、ネバダ州第一で、最大の都市である。
アメリカにかぎらず「ホテル」という建造物、または「場所」は、遠く離れた場所からの来訪者を迎える施設という認識がある。
われわれが泊まったホテルは、パリス・ラスベガス( Paris Las Vegas )で、かのシーザースパレスを保有するハラスグループ( Harrah's Entertainment )の所有となっている。
元はヒルトングループでの展開予定だったとか。カジノを有するホテルは、ギャンブルタウンの時代から投機の対象で、経緯は詳しく述べないが、このホテルも何回かの買収劇を経て、現在の運営体制となっている。
さすがに後に泊まったアトランタやシカゴのホテルとは違い、完全に観光向けのつくりだが、入っていきなりの印象がすごい。
いきなりカジノなんです。「XX番台スタートしましたぁ~」などという場内アナウンスは無い。
あたりまえのように、ラスベガスのどのホテルでもカジノが運営されており、24時間、観光客向けに営業している。眠らない遊戯場である。
そういえば後で気づいたが、客室にも飲み物やミニバーが無く、ルームサービスは外の食べ物に比べると少々値段が高い。
どうも積極的にカジノで遊びなさいよという雰囲気が作られている。
・・・・いきなりの誘惑に負けないように、チェックインまでのあいだ、早速目的のバフェへ向かうことになった。
ホテル1Fはちょっとしたショッピングモールになっていて、その通路は不思議な光彩に驚かされるが、天井は夕焼け雲を配した青とピンクでペイントされ、ほのかなライティングがなされている。
シーザースパレス付近の フォーラムショップスと同様、 夕暮れを演出した見事な青と薄いピンクに電球の自然光をあてて夕暮れの景色と同じ陰影を実現している。
構造物(柱)が無ければ気づかないほど、夕暮れの質感がただよう。幻想的だ。
編集長が自信を持って「ここだよ」と言ったお店がぜんぜん違う店だったという手違いもあったが、無事目的の店にたどり着いた。この後に編集長による数々の手違いが・・・。今思うとこの時がその序章だったのか?
「ここですかー」と間抜けに撮影する私。お隣のル・カフェセントルイスでした。
時間にもよると思うのだが、すでに空席待ちの行列ができていた。約15分待ち。
ホテル内通路と同じ光彩。なんといえばいいか「オープンエア」ではないのだが、まるで外にいる気分である。
バフェはフランスの田舎町を模したつくりで、前述の光彩もあいまって、昼間なのにビールでも頼んでしまいそうなけだるさをかもし出している。
はー疲れた。ビール頼もうよ・・・と、いまにも誰かが口に出しそう…。と、となりのテーブルを見ると、もう一組はビールを飲んでるじゃありませんか!こっちのテーブルは編集長が勝手にコーラを頼んでしまったのに…。
市場の雰囲気を持ったスペースに、多種多様な食べ物、メインから副菜、デザートまで並んでいる。本当にその種類は豊富だ。
よく働く料理人が、笑顔で手際よくケースに盛り付ける。「アメリカの人はよく働く」という言葉が後になって効いてくるが・・。
このとき一行は長旅の疲れでだれもが「座りたい」と思っていたので、とりもなおさず手近なものを適当に皿に乗せて、とりあえず「食べよう」と。
私は、ラビオリと、パンと、「シチューのようなもの」をとりあえず食す。
パンは適当に取ったが、硬かった。
ローストビーフやチキンなどは有人のブースで、目の前で調理してもらえる。
バフェなので皿を撮ってもしょうがないなと思ったが一応。パンは種類豊富だが硬い。
フランスの郊外がテーマですが、ひそかに風景の中にとけこむレディコールのパネル。実は"KENO"という日本の”ナンバーズ"のようなゲームのパネル。ラスベガスのホテルでは、レストランにいながらにしてカジノに参加できるのだ。
ここでも編集長はデザートを執拗に3回ほどおかわりして「ここのプリンは最高だよ~」と、みんなにサゼッションしていた。
デザートも豊富である。プリンは本当に絶品。「うまいっすね」と私。みなさん苦笑い。
バフェなので、料理やサービスについては(もともと批評が苦手なのだが)多くを語れないのが残念であるが、料理そのものよりも感心したのが、遠いところから「やっと着いたね」という旅人を癒すためのもてなしとして、贅沢すぎる「雰囲気」である。
よくできたホテルマンはサービスを超越して、「 Ambience 」を大事にするという。「環境づくり」、「雰囲気づくり」などと訳されるか。
ホテル経営者は、自身の施設の中に、「食」をとりいれるとき、客室に対するそれよりも神経を使うらしい。
「全館の雰囲気作りの要素の6割を占める」という。
バフェはその位置づけにしてホテルの顔である。この夕暮れの雰囲気に応じた店がここにほしいと、だれかが立案し、設計したはずである。その試みは、 Paris Las Vegas においては、成功していると思う。
自身の稿の中で「気分」とか、「雰囲気」という言葉を多く使ってしまうので反省している向きもあるが、 Paris Le Village Buffet は、 「気持ちのいいもの」を体現し、かつ十分な気配りで提供する装置であった。
Paris Las Vegas全景。その名の通り、パリがテーマ。エッフェル塔のオブジェは実物の2分の1らしい・・・。ここまでやるか!!・・というのが彼ら流の「Ambience」なのか。
ここでは、つねにもてなす対象は「外」からやってくる。
ちなみに Las Vegas とは、「草原」という意味だそうである。意外と、どの語源にも「オアシス」という意味合いは含まれない。
一歩外に踏み出せば、砂漠である。
次回以降、ラスベガスファーストフード店舗視察を数回あいだにはさむ。実に6店舗を3時間弱で食べ歩き、あまりにも状況が悲惨すぎて思い出したくなく、レポートにならないかもしれないが、強行掲載する。
ブログ・バー ≪ バックヤードルームから ≫にも編集長の仔細なレポートが掲載されているので、併せて読んでいただければ幸いである。
福本 龍太郎
国内コンピュータ販社にて流通小売業界向けSI事業部門を担当し、外食店舗店舗システムにも関わる。
現在は有限会社ノーデックス代表取締役。
ネットビジネス黎明期より各種サービスプロバイダを経験し、業務システムへのネット技術の応用・普及につとめる。
有限会社ノーデックス 代表取締役
福本龍太郎の速報!FS/TEC・The NAFEM SHOW2007