米国外食店舗視察 ~シカゴ・ニューヨーク発 アメリカの非日常・楽しませるという回答~

米国外食店舗視察 シカゴ・ニューヨーク発 アメリカの非日常・楽しませるという回答

第5回 生き方を選択するということ Panera Bread

改めて痛感したのは、ファストカジュアルというフォーマットについて、マーケットの視点に立って我々が語ることは簡単ではないということである。

定義(そのようにみうけられる)そのものは見たまま理解できるが、世代を意識したマーケティングの結果として、表現されたスタイルであり、現在も定義そのものが進化の過程にあるといえよう。業態分類モデルとしてそのままを捉えることは危険ではないかと感じるようになってきている。

アメリカで次世代の巨大マーケットとして浮上している人口構成として話題になるのは、「ジェネレーションY」とよばれる世代である。私も今回の取材を機に、すこし意識して調べてみたのであるが、マーケター側から見ると同様の現象は日本にも当てはまる項目があるだろう。

おおまかにしか触れられないが、1974年以降(77年以降とか、諸説あり)に生まれた、両親がともに戦後生まれで、その前のベビーブーマー、ジェネレーションXと呼ばれる世代と比べて、世代間の不公平さに頓着せず、生活意識の中で暗い背景が少なく、総じてポジティブな論調が目立つという特徴をみせる。

「個性」「自分らしさ」というものを大事にし、よく言われるのはPC・デジタル機器を当然の道具として使いこなし、情報において格差が少なく、むしろ必要な情報はネットや口コミなど、自らが興味を持つ分野への「参加」によって得られ、アメリカではi-podをはじめ、この世代をかなり意識したマーケティング、製品ブランディングが行われていて、成功例を多く持つ。

(・・・といっても自分がXなのかYなのかなどと、サービスを受ける人たちにとってはどうでもよく、いずれにしろ高い位置から見た世代構成の分析だろう。)

この論が正しいか正しくないかはまったく別の議論として捉えていただきたいが、アメリカの外食産業が、この世代の提唱(世代的にはあまり「提唱」しない世代らしいが。)を受け、「生き方」をデザインする役割も担っていると考えるのは拙速だろうか。

Boston Marketで胃袋的にはほぼとどめを刺されたせいもあり、ややおおざっぱなレポートとなっているが、シカゴ中心地に戻ってファストカジュアルを代表するお店に「顔を出そう」というなんとも消極的な決意でレポートする。


まず私たちが向かったのは、低炭水化物のパン、ベーグルを取り揃えるPanera Bread(パネラブレッド) である。
生き方を選択するということ Panera Bread

オーダーはショーケースに並んだパン・ベーグルの類を指差して選ぶが、今回はサンドイッチ等の調理メニューはオーダーしなかった。

生き方を選択するということ Panera Bread
残念なことに、ここでは撮影が禁じられたため、ショーケース前からの様子のみ。

ちなみに耳にタコができたかと思いますがここのコーヒーマシーンの味に衝撃を受けてスターバックスも同じものを採用しているらしい。確かにコーヒーは美味。

生き方を選択するということ Panera Bread
お店に入ると焼きたてのパンのなんともいえない良いにおい。奥にオーブンが見える。ここで焼いてます。

奥のカウンターにはセルフサービスでオーブンレンジが置いてあり、あっためて食すことも可能である。改めて思ったがパンはセミセルフという要件がマッチしやすい商材なのかもしれない。

店内は商品の特性もあるだろうが、清潔に保たれている。外観や内装は、高級感があり、統一されたトーンで装飾されており、座って新聞を読んでいるだけでステータスが保てそうである。

私の目では、世代を正確に見抜くことはできなかったが、客層はやはり若い人が中心で、ときおりノートパソコンを広げて栄養補給をしながら仕事をしているビジネスマンがいたり、場所がら学生が多い気がした。感覚で書いてしまって申し訳ないが、Boston Marketで感じた客層とは、なんというか品が違う気がする。

店内はそのような客層のせいもあるが、騒がしくなく、一人で立ち寄ってゆったりとした時間をすごせる。

この店で気がついたのは、空間へのこだわりである。素材にこだわった手作りのパンを置き、清潔でゆったりとした空間で自由に食せるということ、おいしいコーヒー。逆に言うと「サービス」のトレードオフが徹底的に行われており、それ以外は何も提供していないのである。


すっかりおまけになってしまうが、パネラブレッド以外にもファーストカジュアルに属する店舗に立ち寄った。

ただ、胃袋の容積をとうに超えた私たちはほぼ呆然と眺めるだけで終わってしまい、ろくに視察と呼べる滞在にならなかった。

 

Chipotle(チポートル)

メキシカンフードのブリトーを、複数のフレーバーを自分でカスタマイズできるChipotle(チポートル)
数種類の辛さと具を選択し、食べやすいようにアルミホイルにくるんで提供する。

席を取ってさあ何を食べますかといったところで編集長斎藤氏から、時間の都合(あと、胃袋の都合もあって)ですぐに次の店に行くという指示が。

がーん。このあとすぐに店を出ました。
生き方を選択するということ Panera Bread
テーブル等はすべて金属をベースとした調度。クレンリネスの設計と関係があるのかも。

座って3秒で店をでてしまい。結局雰囲気を見ることしかできなかった・・。無念。

席についてすぐに出て行ってしまったが、WEBサイトが秀逸。調理やスタンバイの様子を動画(スナップショット)で公開していて、情報量が多い。

ああ・・・。最初にここに来たかった。

しぶしぶ店を後にし、日本への上陸を強く祈る。

 

Baja Flesh(バハフレッシュ)

海外特集第2弾において、「そんなに早く料理は出てきません」というメッセージが印象的だったが、ここもタコスを好みのフレーバーで食せる。

生き方を選択するということ Panera Bread
電子レンジは使いませんとのこと。

もうわかった。こんなものはレポートでは無いといわれても、「がんばって行ってきたんだよ(半泣き)」と伝えたいがために書いていますが、ここでは味の薄いセブンアップしか飲めませんでした。

生き方を選択するということ Panera Bread
店内は明るく清潔。旧来のFFなどに比べると本当にその違いは大きい。

この2つのお店については、メキシカンフードの商材を徹底的にしぼりこんでカスタマイズ可能な商品として提供しており、両者ともFF(マクドナルド・ウェンディーズ)からの参入である。

生き方を選択するということ Panera Bread
外観はChipotleのほうがややおちついた雰囲気

生き方を選択するということ Panera Bread
すぐ近くにちょっとデザインの違うお店もあった。なにかコンセプトで分けているのであろうか。

NRAショーのレポートでも触れたが、両者に代表されるようなメキシカンフードの活況についてはほとんど何も知識を得ることが出来なかった。反省しつつ今後の状況を見守りたい。


これは思い込みだが、ファストカジュアルはすでにいろいろな世代を通して、確実に受け入れられていると見てよいだろう。FF(QS)がこのフォーマットの創出・適応についていち早く対応できた要因として、一説にはクレンリネスの技術ではないかと言われており、私も同感である。商品の絞込みと品質の良さを追求し、品質を上げる代わりに提供時間を犠牲にするという簡単なことでは要素を満たせない。

たとえばオープンキッチンで「行程を見せる」ということの本質はどういうことであろうか。Eatzisで私が強く感じたのは、安心感というより「料理」を食べているのだなという感覚を持ったことである。

定義のみを真に受けてオープンキッチンを導入し、よけいに不衛生な印象を与えてしまう失敗例も多いと聞く。よほどきれいに見せる措置が必要だということである。

ちなみにファストカジュアルでのテイクアウト率が高いというのは、後から知った情報であるが、「自分らしさ」などのキーワードに当てはめて考えると、「料理」とそれ以外の「サービス」をむしろ積極的にトレードオフしているのは、実は彼ら(彼女ら)消費者であることに気づく。


以上で、「非公式」寄り道視察は終了。次回、テーマレストラン「NINJA NEW YORK」の稿をもってレポートの締めくくりにしたいと思う。



福本龍太郎

福本 龍太郎

http://www.nodex.co.jp/

国内コンピュータ販社にて流通小売業界向けSI事業部門を担当し、外食店舗店舗システムにも関わる。
現在は有限会社ノーデックス代表取締役。
ネットビジネス黎明期より各種サービスプロバイダを経験し、業務システムへのネット技術の応用・普及につとめる。

ページのトップへ戻る