携帯電話の普及、高機能化に伴いこれを使用した販売促進策、いわゆるケータイ販促が多くのベンダーから提案されている。レストラン・オーダーエントリーシステム(OES)の老舗 セイコーインスツル株式会社(SII)の100%出資会社「エスアイアイ・データサービス(SDS)」も今冬、ケータイ販促にサービスインすることになった。この新たな取り組みをレポートする。
「 Scute × しゃとるん 」 を導入したのは、株式会社どんが運営する新鮮な魚介類を中心とした “ どんぶり専門店 ” 『 ザ・どん 』。株式会社どん は、1991年5月にレストランやファーストフード経営のノウハウを持つ株式会社ダスキンと新鮮な魚介類を豊富に提供できる管理・流通システムを持つ日本水産株式会社が提携、共同開発事業として設立された 。『 ザ・どん 』 は1991年12月に大阪・江坂に1号店をオープンし、現在では関西圏を中心に49店舗(2011年5月現在)を展開する。本年5月に創業20周年を迎えた。
今回は同社代表取締役社長の田川正司氏に 「 Scute × しゃとるん 」 の実状について忌憚の無いお話をお伺いした。
- ケータイ販促とオーダリングシステム(OES)導入までの課題をお聞かせ下さい。
もともとは、ケータイ販促とオーダリング(OES)は別々に検討していました。
ケータイ販促は、各社からご提案を受けていたのですが、どうしても一方通行の販促にしかならない。当社から情報をメールで送って、お客様にそれを見ていただき、お店にお越しいただく。ここまでは良いのですが、結局そのお客様が何時来られて、何を食べられたのかまではわからない。一般的に私どもの業態では、広告費はその2.5倍の粗利を得ることができなければやる価値がないと言われています。つまり10000円の広告費をかけたら25000円以上の粗利を得られるかがやる、やらないの一つの判断基準となります。今までのケータイ販促の仕組みだとその判断ができませんでしたし、価値も見出せませんでした。
一方、OESに関しましては、店舗オペレーション改善のためにずっと必要性を感じていました。お客様が丼屋に求めるニーズの一つがスピーディーさです。普通の定食屋さんであれば10分待ってイライラするところが、丼屋では5分待ったらもうイライラされる。お客様が期待される速度というものが物凄く早いのです。いくら店舗側に 「 早く出せ、早く出せ 」 といっても限界があります。お客様の期待にお応えするためには、色々な動きを短くしなければなりません。その解決策の一つがOESではないかと考えたわけです。ただ、OESは我々の業態には少々高額であるという悩みはありました(笑)。
- Scute × しゃとるんを導入された経緯をお聞かせ下さい。
最初にお話をいただいたのが、Scuteの方だったのです。今のPOSの仕組みにOESをアドオンできるとSDS代理店の ジャストプランニングさんからお聞きしました。しかも我々の業態に見合う安価で導入ができ、更にはケータイ販促もくっ付いて来るよと(笑)。それは一石二鳥だとすぐに検討に入りました。
Scuteはシンプルなところがいいですね。今の機械は色々な機能が付いていても結局使いこなせない。例えばDVDなどの録画機能なんてそうですよね。Scuteは不必要な機能を外すことでコストが抑えられているところが良いですね。付いている機能で我々の業務は充分賄えられますので、費用とできることのバランスが良いと言えますね。
しゃとるんは購買情報が取れるところが素晴らしい。購買情報が取れることになりますと、お客様が何時、何を食べられたのかがわかりますので、画一的ではなく、メニューごと、お客様ごとの販促ができることになります。現在は16日の 「 とろの日 」、27日の 「 ツナの日 」 と限定商品の時だけにやっているのですが、今後の可能性は大きいと思います。
株式会社どん
1991年5月 株式会社ダスキン(※1) と日本水産株式会社(※2) が共同開発事業として設立
1991年12月1号店「ザ・どん 江坂店」オープン
2011年5月現在、関西圏を中心に49店舗展開
※1 本社:大阪府吹田市 現社長:山村輝治氏
※2 本社:東京都千代田区 現社長:垣添直也氏
代表取締役 田川正司氏
1989年 株式会社ダスキン入社。
主にレストラン事業に従事、店舗での責任者、経理の業務を経て
2008年 株式会社どんに出向 現職
エスアイアイ・データサービス株式会社
http://www.siidataservice.co.jp/
本社:千葉市美浜区中瀬1-8
代表者:小林良夫
設立:1998年10月
事業内容:オーダーエントリシステム、決済端末の開発・製造・販売、情報処理センターの開発・運営、保守サービス全般
取材協力:
セイコーインスツル株式会社 企画部 マーケティングコミュニケーション課長 加納千穂氏
エスアイアイ・データサービス株式会社 企画部 センター・サービス企画SE課長 石崎進一氏
営業部 次長 坪内淳一氏
文: 齋藤栄紀