一昔前に比べ海外旅行は身近な存在になっただろう。とはいえ、現実は時間もないしお金もかかるし……と、なんだかんだで諦めている人は少なくないはずだ。芸術新聞社より今年8月に刊行されたグルメ漫画「東京世界メシ紀行」(いのうえさきこ著)は、まさにそんな人たちに読んでもらいたいガイドブックである。
前回までは、本書を作ることになった経緯から、掲載するお店の選定など制作の裏話を聞いてきました。ラストとなる今回は、世界70カ国の料理を食べてきた著者いのうえさきこさんより、これから「世界メシ」を食べに行く皆さまにメッセージをいただきました。最後までお楽しみください。
そうですね……。例えばカレーが好きな人は、漠然とインドカレーを食べるのではなく、北インドと南インドを選んで食べに行くことから始めてはどうでしょう。インドカレーと一口に言っても北と南は全くの別もので、合わせる主食すら違うという発見があリますよ。そこから出発して、スリランカやネパールなど周辺国のお店を探して食べてみたり。周辺にそういうお店がない時は、スーパーで馴染みのない調味料を買ってみるのもいいと思います。例えばタイの代表的な調味料ナンプラーは、醤油代わりに使うと色んな料理がエスニック風味になって面白いですよ。普通に炒め物に使ってもいいですし、鶏や豚肉の下味につけて焼けば、風味に深みが出てきます。パクチーやレモングラスがあればより完成度は高くなりますが、最初から色々用意しようとするとハードルが高くなるので、まずは調味料一つから始めれば、毎日の食事に新しい風が吹くんじゃないかな、と思います。
強いて言うならフィリピンの”シシグ”という料理です。刻んだ豚耳や豚ホホ肉をニンニクなどで炒めたピリ辛料理なんですけど、ご飯にめちゃくちゃ合いますよ。おそろしい勢いでご飯が進みますから。コリコリしてて歯ごたえもたまりません!ご飯に合うおかずっていうところが、日本人にも馴染みやすいところですよね。
私は毎回苦しくなるほど食べるんですけど、もたれた記憶はないですね。全然重くないんですよ。この本に登場する「世界メシ」って現地の人が食べている日常のご飯なので、「ハレ」ではなく「ケ」の料理なんですね。だから、身体に優しいんだと思います。でも、素朴な料理に見えますが、いざこれを自分で再現するのは難しいと思いますよ。食材や調味料を集めるのも一苦労ですからね。それに、土着の味は奥が深いですし。
そうですね。他の国を沢山知っているわけではありませんが、“日本人は食にうるさい国”だと思います。それに、これだけお店があるってことは食べることが好きな民族ですよね。だから作る方は大変ですよ。でも、食を楽しみ、大事にしている人が多いからこそ、世界中の料理人が日本でお店を開きたいと思って集まるんでしょうね。東京は食の窓口だと思います。
はい。知らない国や食べたことのない料理はまだまだ沢山あります。この先も面白い出合いを求めて、都内を旅します!皆さんも本書をきっかけに、ぜひ美味しい旅にお出かけください。