未曾有の地震と津波が東北・太平洋沿岸を襲った東日本大震災から4ヶ月が経とうとしている。甚大な被害を受けた被災地の多くの方々の生活はまだ平時に戻ったとはいえない現状である。そのような中、不撓不屈の精神で事業の継続のため一丸となって取組んできた企業も決して少なくはない。このような企業の取り組みは、今後の防災体制の確立とともに、震災の影響だけではなく、デフレなどの厳しい環境下に置かれている飲食企業経営者の参考になるであろう。そこでサッポロビールの協力のもと、同社仙台工場長の仲本滋哉氏にお話を伺った。
-人命尊重・安全第一への具体的な取り組みについてお教え下さい。
防災訓練では、所定の避難場所に集合して終わりなんです。避難場所に集合した後の動きまでは想定していなかったのです。まず決めたのが、災害対策本部の設置です。それとともに工場長、部長といった工場メンバーで話し合った上で今後は行動して行こうと決めました。
最初に決めたのは、ミーティングの徹底です。始業時、10時、お昼の前後、3時と終業時の1日6回のミーティングを設定しました。ミーティングといっても最初は安全確認の要素が強かったので、全員が集合して、進捗確認をして、持ち場に帰るといったものでした。
地震直後は電気・ガス・水道といったインフラが全てストップしていました。そのような中でできることは、被災状況の確認、設備の応急手当や片付けなど限られていました。限られた行動でも天井パネルが落ちたり、壁が崩れたり、設備がずれたりと危険な場所も少なくはありませんでした。活動するに当たっての決めごとも周知徹底しました。
という3点についてはきっちりと守るようにと再三再四ミーティングの都度口が酸っぱくなるくらい言っていました。
昼間の作業といっても、停電で灯りが点かない工場内では、ヘルメットを被って、懐中電灯で入っていく状態でした。そのような中で、火が出ていないか、ガスが漏れていないか、液が漏れていないかと被災状況を確認していきました。活動に当たっては、4人1組でチームを組んでもらいました。4人にしたのは、パッと見て人数がすぐ数字として認識でき、万が一1人が怪我をしたとしても2人が支えて、もう1人が連絡係として走れる。そういったことを踏まえて4人にしました。ミーティングごとに点呼は取っていましたが、チーム活動ごとでも、30分したら所定の場所に全員が一旦集合し、点呼をとって、状況確認をするといった二次災害を防ぐための " 現場チェック " を行いながら作業を進めていきました。
作業を進めていったと言葉では簡単に聞こえますが、現実は余震が多く、大きな揺れも何度も来たりして、非常に危険な状況でした。確かに事業の維持・継続のためには一日も早い復旧が望まれますが、無理すると人命に関わることになりますので、不眠不休での活動ではなく、「 立ち入り禁止地区には入らない 」 「 単独行動は絶対にしない 」 「 決して無理はしない 」 を合言葉にできる範囲で最大限の行動してもらいました。