飲食業を取り巻く環境は、いまなお厳しい。飲食店経営者には、“ おもてなし ” を中心としたホスピタリティの向上と低価格メニューの充実という一見、相反することを求められている。これらを両立させるための施策の一つにオペレーションの簡素化があげられる。調理場オペレーション簡素化のために冷凍食品が寄与するのではないかという仮説のもと、一般社団法人日本冷凍めん協会の協力のもと冷凍麺の現状についてみて行きたいと思う。
ここまでは、冷凍めんの利点を述べてきたが、実際に店舗で利用するには、弱点も知っておく必要がある。
【 杉谷氏 】 まず、最初にあげられるのがコスト高ということですよね。倉庫にしても輸送にしても冷凍庫を使うとなると常温や冷蔵に比べてやはり高くついてしまいます。輸送コストに直結するのですが、かさばってしまうというのもありますよね。例えば、1箱に生めんが10Kg入るとします。冷凍めんは8Kgくらいしか入らないんです。
【 杉谷氏 】 でも一番の問題はイメージじゃないかなと思っています。家庭で冷凍食品というと“手抜き料理”と思われてしまいますよね。それに美味しくないというイメージもあります。最近では、核家族化や女性の社会進出が進んで、家庭で冷凍食品がかなり使われるようになって来たと思いますが、それでもわざわざ冷凍食品を外で食べる・・・。と思われている方はまだまだ多いと思います。
冷凍食品が世の中に出てきた時は、確かに簡便性だけを追求して、味は二の次だったのであまりおいしくなかったというのは事実だと思います。それにご家庭では、食卓に残った物をそのまま冷凍して翌日解凍して食べるというやり方ですから美味しいと感じるわけはありません。
今の冷凍技術と言うのは相当進歩していて、解凍したらちょうどいい具合のところで急速冷凍でき ます。ですから味も食感も “ うちたて、茹でたて ” を実現できます。
今のお客様は、冷凍食品が昔の安かろう不味かろうという時代ではなくて、美味しくなって来たということをわかってきていると思いますから、外食の方も自信をもって冷凍食品を使っていただいても良いと思いますね。もしかしたら、自分で作るものより美味しいものができるかもしれませんよ(笑)。
【 杉谷氏 】 もう一つあるのが日本人の “ 手作り信仰 ” みたいなものですね。目の前で、職人さんが打って、延ばして、切ってというのを見ると美味しいと感じられますよね。でも実は、温度と湿度が的確で捏ね時間と熟成時間さえきちんとすれば手で打とうが、機械で作ろうが同じものができるんですよね。工場で作るほうが最適な温度と湿度を保てますから同じ品質の物を作り出すことができるのです。ただ工場の場合、作っている状況がわからないので、どの様な原料を使って、どの様に作っているかをきっちりと説明していく必要はあると思います。
一般社団法人 日本冷凍めん協会
冷凍めん業界の発展をはかるため、冷凍めんの製造、流通、販売の各分野から参加する会員の円滑な事業の推進を支援するとともに、生麺類の業界の発展に寄与することを目的として、昭和58年11月10日に設立された。
〒135-0004 東京都江東区森下3-14-3 全麺連会館内
TEL:03-3634-2275 FAX:03-3634-1930
取材協力 日本冷凍めん協会 専務理事 杉谷香氏
昭和20年4月28日生まれ
昭和39年4月 日清フーズ株式会社入社
昭和40年4月 日清飼料株式会社(現日清丸紅飼料株式会社)
平成元年4月 フレッシュフードサービス株式会社:主に冷凍麺を使用したうどん店の 「 どんど 」 の展開に従事
平成11年 株式会社日清製粉・関東営業部
平成12年 フレッシュフードサービス株式会社
平成18年 一般社団法人 日本冷凍めん協会 専務理事に就任 現在に至る