飲食業を取り巻く環境は、いまなお厳しい。飲食店経営者には、“ おもてなし ” を中心としたホスピタリティの向上と低価格メニューの充実という一見、相反することを求められている。これらを両立させるための施策の一つにオペレーションの簡素化があげられる。調理場オペレーション簡素化のために冷凍食品が寄与するのではないかという仮説のもと、一般社団法人日本冷凍めん協会の協力のもと冷凍麺の現状についてみて行きたいと思う。
日本冷凍めん協会によると、冷凍めんには、「 冷凍茹でめん 」 「 冷凍生めん 」 「 冷凍調理めん 」 「 冷凍セットめん 」 といったカテゴリーがある。
昭和30年代には、単に生めんを冷凍する方式で市場に出て来たが、現在の主流である 「 冷凍茹でめん 」 の登場は、日清製粉株式会社(以下、日清製粉)が1973年(昭和48年)に出願した「冷凍めん製造法」の特許申請(特許第1111099号:特許登録1982年8月31日)が発端となったようである。
日清製粉が考案した 「 茹でめん冷凍 」 の技術は、自社に留めることなく幅広く公開され、その結果著しい技術進歩がなされた。
1974年(昭和49年)には、冷凍食品大手の株式会社加ト吉が市場に参入。
1978年(昭和53年)には、近畿冷熱株式会社(現株式会社キンレイ)が、冷凍鍋焼きうどんをコンビニ向けとして発売した。この冷凍鍋焼きうどんは、アルミ箔の鍋の中にめんだけではなく具材も載せて、火にかけるだけという簡便さに加えコンビニの成長にも乗り、ロングセラー商品になった。さらに同年、日清製粉グループのフレッシュ・フード・サービスが冷凍茹でめんを使用した鉢うどん割烹店 「 どんど 」 を日比谷に出店し、業務用冷凍茹でめんの試金石となった。
1979年(昭和54年)には、生めん業界大手の株式会社島田屋(現シマダヤ株式会社)が、外食産業向けの業務用冷凍茹でめんで市場に参入した。その後、1980年(昭和55年)に東洋水産、1986年(昭和60年)には日清食品と明星食品といった即席めん業界の大手企業が相次いで市場に参入した。
次に、冷凍めんの市場規模をみて行きたい。右のグラフは、平成元年から20年までの冷凍茹でめんと冷凍生めんの生産食数のグラフである。
ここで明確にわかるのは、生めんがこの20年間で減少しているのに対し、茹でめんはほぼ10倍の規模になっていることである。
平成元年には、生めんの2,700万食に対して、茹でめんは2億7,179万食とほぼ10倍の規模であったが、平成20年には生めんが1,710万食と1,000万食減少しているのに対し、茹でめんは25億8,970万食と平成元年に比べ約10倍の規模になっているとともに、生めんに比べて実に150倍以上もの規模になっている。次に、冷凍茹で麺の品目ごとの占有率を比較して見ると、平成元年には、うどん(45%)、そば(4%)、ラーメン(24%)、スパゲッティが(27%)であった。これが、平成20年には、うどん(49%)、そば(4%)、ラーメン(19%)、スパゲッティが(28%)と、うどんとスパゲッティが占有率を伸ばしているのがわかる。特にうどんが全体の半数、スパゲッティが3割弱を占めていることよりこの2つの品目が冷凍めんを牽引していることがわかる。
一般社団法人 日本冷凍めん協会
冷凍めん業界の発展をはかるため、冷凍めんの製造、流通、販売の各分野から参加する会員の円滑な事業の推進を支援するとともに、生麺類の業界の発展に寄与することを目的として、昭和58年11月10日に設立された。
〒135-0004 東京都江東区森下3-14-3 全麺連会館内
TEL:03-3634-2275 FAX:03-3634-1930
取材協力 日本冷凍めん協会 専務理事 杉谷香氏
昭和20年4月28日生まれ
昭和39年4月 日清フーズ株式会社入社
昭和40年4月 日清飼料株式会社(現日清丸紅飼料株式会社)
平成元年4月 フレッシュフードサービス株式会社:主に冷凍麺を使用したうどん店の 「 どんど 」 の展開に従事
平成11年 株式会社日清製粉・関東営業部
平成12年 フレッシュフードサービス株式会社
平成18年 一般社団法人 日本冷凍めん協会 専務理事に就任 現在に至る