1919年、ベルギーのブリュセルで設立されたピュラトス。数多くの高品質なベーカリー、コンフェクショナリー関連製品を市場投入してきた同社は、今では世界100カ国以上に及ぶネットワークを構築している。
この8月に行われた2度の講習会の模様を通じてピュラトスの知られざる魅力を探って行きたい。
8月5日(水)と8月12日(水)の2週に渡ってピュラトスジャパンの講習会が開催された。5日(水)は、『 American Magic 』 と題された講習会は、ドーナツ、ベーグルなどアメリカを代表する人気アイテムのレシピ提案がおこなわれ、12日(水)には、イタリア各地のパンのレシピ提案の 『 Viva Italia !』 と題された講習会がおこなわれた。
両日とも真夏の炎天下に負けないほどの熱気の中で開催され、飲食店のメニューとしてのパン類の人気を肌で感じることができた。
まずは、5日に行われたAmerican Magicの模様をレポートする。
ドーナツの原型はオリークックというオランダ菓子といわれている。17世紀初頭に、その製造法をマスターした清教徒が米国に渡り、現在のドーナツの原型が生まれたといわれている。ちなみに名前の由来は、「 生地 」 という意味のDough(ドウ)と 「 木の実 」 という意味のNut(ナッツ)が合体したものといわれているそうである。
日本のドーナツ専門店といえば、真っ先に頭に浮かぶのはミスタードーナツであろう。国内に1,324店舗(2009年3月末時点)を数える。その牙城に風穴を開けるべく登場したのが、2006年12月、東京・渋谷区に第1号店を出店したクリスピー・クリーム・ドーナツ(KKD)である。KKDは現在国内で10店舗(2009年8月末時点)を有している。最近では、ポルトガル生まれで、ハワイで爆発的な人気になったマラサダという懐かしい揚げパンのようなドーナツを販売するカフェ・フラハワイといった店も登場している。
一方、海外に眼を向けると、やはり大規模チェーン展開をしているのは米国である。1948年に登場したダンキンドーナッツがその代表格であろう。現在世界29カ国で約6,000店舗を有するこの業界で最大の企業である。ちなみにミスタードーナツは1956年に創業者の義妹の夫が創業した会社で、1990年にダンキンドーナツが吸収合併し、米国内でミスタードーナツブランドを展開するのは数店舗になっている。
KKDは1937年に創業され、現在11カ国で約400店舗を有している。米国以外ではカナダのティムホートンズがある。1964年にカナダで創業されてからカナダと米国で約3,000店舗を有している。ちなみにカナダのファーストフードの全売上の22.6%も占めているそうである。
米国では朝食に食べられるなど非常にポピュラーな食べ物であるが、日本においても更に市場規模を大きくすべく、この秋ピュラトスジャパンから新製品が発売された。
ドーナツ専門店以外の、コーヒーショップ、ベーカリーショップやコンビニで販売されているドーナツの多くは、工場で製造されたドーナツを冷蔵で配送されたり、生地まで製造した物を冷凍輸送して店舗で商品に仕上げたりするのが一般的であろう。
同社では、フライ後冷凍に対応したイースト・ドーナツミックスのシルキー・ドーナツを発売した。ピュラトスの独自技術によるこのミックスパウダーで作るドーナツ生地は、フライ後にアイシングを塗布してからの冷凍が可能な製品である。
説明の後は、実演がおこなわれた。(レシピは最後に掲載)
実演では、発酵した生地をシーターでのばすところから始まった。
シルキー・ドーナツは、ピュラトスの技術を結集し、冷凍耐性と機械耐性に優れたものになっているという。
講習会後に試食会があったが、確かに繊細で柔らかで、口の中でとろけるような食感であった。更に解凍後の物でも揚げたてと変らない柔らかな食感であった。
フライ後冷凍に対応したドーナツであれば、セントラルキッチンや店舗のアイドルタイムなど時間がある時に一度に沢山作って冷凍保存し、日々必要な量だけを店頭に並べることができるので、計画的な生産や食材のロスをなくす施策になるのではないだろうか。
シルキー・ドーナツのレシピ
ピュラトスジャパン株式会社
会社概要 ベルギーに本社を持つピュラトスが親会社 。
世界のベーカリー、コンフェクショナリー、チョコレートのプロフェッショナルに原材料を提供するリーディングカンパニー。
社歴 1985年8月 ピュラトスジャパン設立
1998年3月 本社所在地を東京・蒲田より北青山に移転 同時にイノベーションセンターを併設
2002年5月 事務所のみを現事務所所在地に移
本社所在地 東京都港区北青山2-11-9 イノベーションセンター内
代表者 代表取締役社長 ジャン・ピエール ベルナルディノ
文: 斎藤栄紀