世界各地で米国産ポテトの需要を拡大させるために、外食店向けのメニュー提案をはじめとするさまざまな販促やマーケティングを展開している米国ポテト協会。少子高齢化、健康志向が進む中でのメニュー開発、永遠の課題であるFLコストの削減など飲食店に求められる課題解決の一助となりうるか、同協会が日本市場で展開している支援策を検証してみる。
株式会社紀文本店は、2011年に首都圏を中心とするデパートにて、米国産ノンフライポテトを原料とするポテトスキンを使ったオリジナル惣菜店 「 POTATO FACTORY USA 」 を期間限定で催事出店した。日本ではあまり馴染みがなく、アメリカの食文化を感じさせるポテトスキンそのものや 「 リッチな惣菜 」 としてのめずらしさが評判となり、多くのリピーターを獲得するほど人気を博した。
ポテトスキンは、半分に割ったポテトの中身をくりぬいた “ ポテトの皮 ” のことで、アメリカでは、チーズや野菜などをトッピングしてオーブンで焼いて食べるのが一般的。レストランのアペタイザー、パーティーでのフィンガーフードとして人気で、トッピングを変えると朝食・おやつとしても楽しまれている。「 POTATO FACTORY USA 」 で同社は、原料のポテトスキンにヘルシーで高品質な米国産ノンフライポテトを採用した。
「 POTATO FACTORY USA 」 では、表面を特製オイルでじっくり焼いて旨みを染み込ませた米国産ポテトスキンにさまざまな具や料理をトッピング。当初は、チーズとカリカリベーコンをトッピングした 「 オリジナルポテトスキン 」 、特製ソースに玉ねぎ・きのこ・ベーコンを加えた 「 ポテトスキンキッシュ 」 、ズッキーニ・パプリカ・ナス等をトマトで煮込んだ 「 ポテトスキンラタトゥイユ 」 、ドライトマトにアンチョビとオリーブを加えた 「 ポテトスキンアンチョビ & オリーブ 」 の4種類を販売したが、回を重ねるごとに少しずつメニューも変えたそうだ。
元々は紀文本店の直営レストラン 「 キャボロカフェ 」 で提供していたポテトスキンを、試行錯誤を繰り返して催事用メニューにを開発したという。その結果、ポテトスキンの両面に特製オイルを塗って、一度焼き上げるという下処理を採用。店舗ブースでは、トッピング以降の作業を行い、二度焼きするという手間がかけられている。レストランの本格的な味わいと、皮はカリッと中はしっとりという独特の食感が受け、震災直後の自粛ムードの中、連日500個以上を完売するほど盛況だったそうだ。
紀文本店がポテトスキンに注目したのは、代表取締役社長の新井博史氏がアメリカ勤務時代に出合っていたことがきっかけ。社長に就任した際に、「 新しい素材で新しいプランを考えていると、印象に残っていたポテトスキンが頭に浮かんできた 」(新井社長)という。
日本ではあまり馴染みがないメニューで、購入者のほとんどがポテトスキンの存在すら知らなかったという。ブースで焼き立てを試食し、美味しさを確認して買うという人が多かったそうだ。「 油で揚げていないヘルシーさも受けたようで、幅広い層のお客様からご支持をいただきました 」(新井社長)。
一番人気は 「 オリジナルポテトスキン 」 だが、試食では 「 キッシュ 」 への支持がよかった。化粧箱に入れた 「 4個セット 」 も好評であった。再度温めても焼き立てのような味わいになるよう工夫されているため、販売時は温め方のリーフレットを配布した。
紀文本店は、デパートの催事場を中心に 「 POTATO FACTORY USA 」 を展開したが、いずれは常設店を検討する可能性もあるとのこと。
常設レストランでのポテトスキン提供事例としては 「 ハードロックカフェ 」 があげられる。同店では、単品の 「 POTATO SKINS 」 と前菜盛り合わせの 「 JUMBO COMBO 」 で使用している。「 POTATO SKINS 」 は、皮付きのポテトスライスに2種類のチーズ、カリカリベーコンを乗せてオーブンでグリルしたもの。アツアツ、とろとろ、ホクホクという多彩な食感が特長である。また、「 JUMBO COMBO 」 は、ポテトスキン、サンタフェスプリングロール(アメリカ風春巻き)、トゥペロチキンテンダース、チキンウイングス、オニオンリングの前菜5種が一皿で楽しめる盛り合わせである。
今回紹介したポテトスキンや、外食産業にお馴染のベイクドポテトなど利便性の高い米国産ノンフライポテト製品を導入することで、メニューの幅を手軽に広げることができる。ベイクドポテトは、丸ごと使うとそのボリューム感でインパクトのあるメニューをつくり出すことができるので、他店との差別化も図れる。ポテトスキンやベイクドポテトは、テイクアウトメニューとしても簡単に活用でき、使い方次第では市場創出の可能性もあるかもしれない。
ポテトは、日本人の多くが好むポピュラー食材であるとともに、健康志向にも合致している。メインメニューとして、サブメニューとして、米国産ノンフライポテト製品の価値を体感してみてはいかがだろうか。
POTATO FACTORY USA
(株式会社紀文本店)
【 ブランド紹介 】 ポテトの中身をくり抜き、好みのトッピングをしてオーブンで焼いて食べる 「 ポテトスキン 」。POTATO FACTORY USAは、この本場の味を活かしながら、表面に特製オイルを塗って二度焼きするなどの工夫を加えて、独特の食感と味わいを作り出している。基本的には、デパートの催事場を中心に期間限定で展開、常設店の可能性も探っている。
【 取材協力 】 株式会社紀文本店 代表取締役社長 新井博史氏
米国ポテト協会
事業概要 全米4000のポテト生産者を代表する非営利団体で、「 ポテトは太りやすい 」 というマイナスイメージを払拭する目的で設立された(本部:コロラド州デンバー)。現在では、日本・韓国・中国・タイ・フィリピン・インドネシア・シンガポール・メキシコなど12の国と地域に代表事務所を置き、世界各国で米国産ポテトの普及、販促に努めている。
飲食店・ホテルはもとより、卸・小売、食品メーカーなど外食産業の各業態に応じたサポート・プログラムも提供。メニューやレシピの開発、技術的サポート、店内デモンストレーションの実施、POPツールの制作、企業協賛などを行っている。
取材協力 米国ポテト協会 日本代表事務所 プログラムマネージャー 友田理絵氏