厳しい経営環境にある外食店で、求められているものは何であろうか。メニューの差別化、コスト面を含めた合理化、そして、ホスピタリティーの充実といったことが考えられるが、これらの要素を踏まえた上で日本の外食産業に向けて、新たなメニュー提案を実践しているのが米国ポテト協会である。米国ポテト協会は、レストランや企業などに対してアメリカ産ポテトに関する知識や情報を提供する非営利団体。「ジャガイモ」という普遍的な食材にいかなる新しい魅力を提供しようとしているのか。そのマーケティング施策とアメリカ産ポテトの真価に迫ってみる。
米国ポテト協会は、輸入・流通業者、外食企業、小売・ベーカリー、食品メーカーといった業態別のサポートプログラムを用意しているが、この記事では、外食産業に向けたプロモーション活動に注目してみたい。
米国ポテト協会 日本代表事務所は、展示会への参加やメニュー提案セミナーといったイベントを実施するほか、ニュースレター 「 ポテトダイジェスト 」、ホームページの制作や雑誌とのタイアップなどを使って情報を発信し、アメリカノンフライ産ポテトの認知度向上を図っている。その他にも、製パンや居酒屋などターゲットを絞って、アメリカ産ノンフライポテトを使ったメニューのレシピブックも制作している。さらに、アメリカ産ノンフライポテト商品を使用したメニューやフェアに対して、販促ツールの制作協力やメニュー協賛、タイアップ広告などのプロモーション支援を行っている。
また、開発担当者を招いて、アメリカ産ノンフライポテトを使ったメニューを試食してもらうという個別企業に向けたメニュー提案も実施するなどきめ細かなプログラムを用意している。「 メニュー提案する際は、店舗ごと業態ごとに十分な配慮をしています。アメリカ産ノンフライポテトの美味しさをお伝えしたいので、最初の時点ではソースなどから手づくりしたメニューをご提案しますが、“ 時間も手間もかけられない ” という要望があれば、どの工程で市販のソースを使うと手間が省けるかを相互協力して考えるようにしています。アメリカ産ノンフライポテトを使用するメリットをお伝えしながら、業態ごとのニーズにあったメニューを提案するよう心掛けています 」(日本代表事務所 プログラムコーディネーター 友田理絵氏)
メニュー提案には、新しいアイデアを盛り込んだレシピの提案も行っている。たとえば、プレーンのマッシュポテトにいろいろな食材を混ぜ、色も味もバラエティに富んだ 「 ベジマッシュ 」 を外食店向けに提案し普及している。マッシュポテトは、アメリカで “ コンフォートフード ” と呼ばれているが、これは日本語で言えば “ おふくろの味 ” といった意味。それほどまでに親しまれている食事を日本で普及させるには、ただ伝統をアピールするだけではなく、話題性を付加した新しいメニューを提案するという工夫をしている。
プロモーションの具体例としては、ファミリーレストランで展開した消費者キャンペーンがある。これは、ベイクドポテトを付け合わせにした2品を含んだ3000円以上のレシートをはがきに貼って応募すると、温泉旅行宿泊券が当たるという内容で、協会初のノンフライポテトに関する消費者対象キャンペーンとなった。また、 オーブンで焼き上げたポテトの一品メニューを採用した別のファミリーレストランでは、家族連れの多い店舗を対象に、小さなポテトの形をした消しゴムとアメリカ産ポテトのプロフィールをセットにした 「 ポテト消しゴム 」 を配布してアメリカ産ポテトの認知を図った。これは、アメリカ産ポテトメニューを注文した子供が対象で、3日間で用意した42,000個がすべてなくなってしまうほど好評だったそうだ。さらに、6オンス(約170g)のベイクドポテトを採用したデリバリーピザチェーンでは、「 アメリカ産ポテトを食べて新型プレイステーション・ポータブルを当てよう 」 というキャンペーンも協賛した。アメリカ産ノンフライポテトを使ったメニューを採用した企業を集めて交通広告を出稿したこともある。単なるプログラムの提供だけではなく、日本の市場性を理解した上で、企業ごと業態ごとのメリットを最大化へ導こうとするのが、同協会のプロモーション施策といえるだろう。
米国ポテト協会はあくまで生産者の団体であり、販売行為に関係しない立場からポテトのプロモーションを行っている。もちろん、日本代表事務所も同様の立場を取っているため、製品を売り込もうというのではなく、製品の魅力を広く正しく伝えることに重きを置いて活動しているのである。非営利的ともいえる立場から外食産業を応援してくれる姿勢は、この厳しい経営環境にあって、有益かつ有意義なビジネスパートナーと捉えてみるべきではないだろうか。
文: 貝田知明
米国ポテト協会
●団体概要 生産者の目線でアメリカ産ポテトのグローバルな発展を
コロラド州デンバーに本部を置く米国ポテト協会は、全米のポテト生産者を代表する非営利団体である。1971年の設立当初、「ポテトは太りやすい」といったマイナスイメージがアメリカ国内にあり、消費者に栄養価などに関する情報を提供することでそのマイナスイメージを払拭する目的で米国ポテト協会は設立された。その後、活動範囲を広げ、現在は、日本、韓国、中国、香港、タイ、フィリピン、インドネシア、マレーシア、シンガポール、ベトナム、メキシコ、コスタリカの12の国と地域に代表事務所をおき、アメリカ国内だけでなく世界各国でアメリカ産ポテトについての教育プログラムを展開している。
●米国ポテト協会のサポート・プログラム 米国ポテト協会は、サンプルの提供、メニューやレシピの開発、メニュー提案セミナーの開催や技術的サポート、店内デモンストレーションの実施、POPツールの制作、企業協賛、PR活動など、輸入および卸売、小売、食品メーカー、外食産業の各業態に応じたサポート・プログラムを提供しています。
●取材協力 米国ポテト協会 日本代表事務所 プログラムコーディネーター 友田理絵氏