厳しい経営環境にある外食店で、求められているものは何であろうか。メニューの差別化、コスト面を含めた合理化、そして、ホスピタリティーの充実といったことが考えられるが、これらの要素を踏まえた上で日本の外食産業に向けて、新たなメニュー提案を実践しているのが米国ポテト協会である。米国ポテト協会は、レストランや企業などに対してアメリカ産ポテトに関する知識や情報を提供する非営利団体。「ジャガイモ」という普遍的な食材にいかなる新しい魅力を提供しようとしているのか。そのマーケティング施策とアメリカ産ポテトの真価に迫ってみる。
米国ポテト協会が情報提供や技術的サポートを行っているのは、生鮮ポテト、チップス加工用ポテト、フローズンポテト、ディハイ(乾燥)ポテト、種イモの5製品。生鮮ポテトと種イモの輸入ができない日本では、フローズン、ディハイ、チップス加工用ポテトの3製品を扱っている。同協会の日本代表事務所では、特に外食産業に関係が強いフローズンポテトとディハイポテトの2製品を積極的に普及しており、ノンフライポテト製品を軸にアメリカ産ポテトの導入を検討している企業をサポートしている。
日本市場におけるノンフライポテト製品の位置づけや可能性について、日本代表事務所 プログラムコーディネーター 友田理絵氏は次のように捉えている。「 アメリカ産ポテト製品には、ヘルシー志向を求める日本の消費者のニーズに応えられる製品があります。例えば、マッシュポテトやベイクドポテトのようなノンフライポテトに焦点を絞って、日本ではフローズンプログラムを展開しています。アメリカでは、ベイクドポテトやマッシュポテトの付け合わせは当たり前です。統計をみると、アメリカのレストランでは、フライドポテトはランチで、マッシュポテトやベイクドポテトはディナーでより多く消費されています。ベイクドポテトやマッシュポテトは単なる付け合わせではなく、一品料理として提供できる活用範囲の広いメニューですから、多様なニーズが求められる外食産業に向いていると思います。 」
健康志向という点では、ポテトそのものがヘルシーであることも忘れてはならない。ジャガイモ1個(148g)はわずか110kcalで、ごはん1膳の半分のカロリーしかないという。さらに、ビタミンCや炭水化物、食物繊維、カリウムが含まれている。「 ポテトの栄養素にカリウムがあるというイメージはないかもしれませんが、“ カリウムの王様 ” と呼ばれているほど多く含んでいます。栄養面についても積極的に情報を発信して、ポテトの食文化をさらに発展させていきたいと思います。 」 (友田氏)。実際、日本代表事務所は、「 え?ポテトって低カロリーなの? 」 というキャッチコピーを掲げて、「 ポテトは太る 」 といったマイナスイメージを払拭するヘルシーポテトキャンペーンを展開している。
日本市場でポテト製品といえば、フライドポテトやポテトチップなどフライ製法のイメージが強い。しかし、「ポテト=ヘルシー」というイメージを外食店で訴求できれば、消費者にインパクトを与える効果があるのではないだろうか。また、日本代表事務所が、ベイクドポテト、ニンジン&ブロッコリー、ミックスベジタブル、それぞれを付け合わせにしたハンバーグメニューに対するアンケート調査を一般消費者に実施したところ、ベイクドポテトの場合は比較的高価格であっても注文される傾向が多かったそうだ。他の付け合わせと比べて、料理としての価値があると判断されたのであり、ここにヘルシーという価値も付加できれば、店舗にとって利益率の高い食材になる可能性も秘めている。日本では、マッシュポテトやベイクドポテトを食べる習慣が根付いていないからこそ、消費者の興味をそそるユニークなメニューとしての開拓の余地があり、外食店にとってビジネスチャンスが潜んでいると言えるのではないだろうか。
米国ポテト協会
●団体概要 生産者の目線でアメリカ産ポテトのグローバルな発展を
コロラド州デンバーに本部を置く米国ポテト協会は、全米のポテト生産者を代表する非営利団体である。1971年の設立当初、「ポテトは太りやすい」といったマイナスイメージがアメリカ国内にあり、消費者に栄養価などに関する情報を提供することでそのマイナスイメージを払拭する目的で米国ポテト協会は設立された。その後、活動範囲を広げ、現在は、日本、韓国、中国、香港、タイ、フィリピン、インドネシア、マレーシア、シンガポール、ベトナム、メキシコ、コスタリカの12の国と地域に代表事務所をおき、アメリカ国内だけでなく世界各国でアメリカ産ポテトについての教育プログラムを展開している。
●米国ポテト協会のサポート・プログラム 米国ポテト協会は、サンプルの提供、メニューやレシピの開発、メニュー提案セミナーの開催や技術的サポート、店内デモンストレーションの実施、POPツールの制作、企業協賛、PR活動など、輸入および卸売、小売、食品メーカー、外食産業の各業態に応じたサポート・プログラムを提供しています。
●取材協力 米国ポテト協会 日本代表事務所 プログラムコーディネーター 友田理絵氏