昨年は、食品偽装、原材料や原油の高騰など外食産業を取り巻く環境は非常に厳しいものがあった。その中でも少子高齢化、人手不足、人材不足など人事に関わる状況は悪化しつつある。
しかし、サービスが重要な要素である外食産業にとっては、「人がいないからサービスの低下は仕方がない」では済まされない。
そこで、外食ドットビズでは、人材教育が解決策の一つであると考え、他の産業では一般化しつつある ITを活用した教育・研修システムである“e-ラーニング”にスポットをあてる事とした。今回は、外食企業向け e-ラーニングの仕組を持つ株式会社プラネット社の協力のもと、外食企業における e-ラーニングのあり方を検証していきたい。
外食業に携わっている方なら誰でも、人を育てる大切さは身にしみて知っていると思います。飲食業繁盛の2大要素は 人と商品 であるといっても過言ではないでしょう。今回は e-ラーニングという教育ツールを少し離れて、現在の外食企業における教育の現状と重要性についてまとめてみたいと思います。
今日、外食の大企業といわれているところは、そのスタートの時点から教育訓練に重点をおいて経営を進めてきました。アメリカのマクドナルド、日本のすかいらーくなどが業界最大手になった決め手は、この教育に重点をおいた施策をとったという事実です。日本のマクドナルドなどは店ができる前にハンバーガー大学というトレーニングセンターを作ったというのは有名な話です。
外食産業というのはフードサービスと言われるように、生身の人間のサービスがすべての決め手となります。おいしい商品、おいしい料理を作るにはいくつかの要素がありますが、人の技量や心の状態によるところが大ですし、ホールや売り場に立って接客をするという仕事はそれに携わる人の人間性を含め、その人自身の仕事振りがサービスの良し悪しを100パーセント決めるといってよいでしょう。外食企業においては、人による広い意味でのサービスが店の業績と会社の収益を決定付ける要因であり、人の育成の重要性については誰もが理解していることだと思います。
しかしながら、教えた経験のある方なら判ることなのですが、教育訓練は非常に負担のかかる 力仕事 です。飲食業の仕事を人に教えるということは、手取り足取り何回も同じことを繰り返して教えなければなりませんし、知識や技術だけでなく、サービスを提供するときの気持ちや感情の良い状態、望ましい状態までも教えて行かねばなりません。一人一人の個性を見極め、プロセスに合わせながら、全員の調和の中でチームワークの良い仕事ができるように訓練するのは、大変骨の折れる仕事です。
日本マクドナルドの起業者である故藤田田氏は生前いろいろな場所で、自分の最も信頼の置ける有能な人間を教育担当にあてねばならない、といっておられたことは卓見といえるでありましょう。
しかし、それほど重要であるにも関わらず、力仕事であり、教える人の力量も要求される人材育成は、特に OJT の現場で効果的に実施されていないことが多々あるようです。
現場の仕事が忙しくて教育が途切れる、プロセスに従って教えられない。
同じ業務なのに教える人によって内容が違っている。教え忘れがある。
何故やらなくてはいけないか、どうすれば喜んで貰えるのか、教えられる側のモチベーションを向上させるための意義まで教えられていない。
理解度や習熟度について、個人的なカウンセリングが充分に出来ていない。
さらには現場だけではなく、教育をしたら翌日からすぐに業績が目に見えてよくなるわけではないことが、経営層にも二の足を踏ませる要因になっていることがあるようです。業績が悪くなるとまず広告費と教育費をカットするというのがその例ではないでしょうか。
「 やる気があれば自分で勉強するんだからことさら教育だ訓練だといったことに金は使いたくない 」 と仰る方にたまにお目にかかることがあります。しかし、現在の世の中でそのようなやる気のある人ばかりが外食業に集まってくるでしょうか。現実は、人手を集めることすら大変という状況ではないでしょうか。
人を採用し、教育訓練でこの仕事に興味を持って貰い、やる気を出してもらう。さらに知識や経験、技術を積み、働く仲間とこの仕事を一緒にやる喜びを見つけてもらう。企業に愛着を持ち、自身の職務遂行の能力をあげて貰う。そのことにより、結果として企業の業績も信用もあがっていくという手堅い方法が、持続的に業績向上していくための唯一の方法ではないかと思います。教育は外食企業の基礎をなす 根幹的経営要素であり息の長い積み上げの施策 であるといってもよいでしょう。これから自社の業績を益々発展させようと考えておられる経営者の方々に再度この教育問題を考えていただけたらと思います。部下は教えてもらいたいと思っているのです。せっかく教えてもすぐ辞めるから、教育の設備や教材がない、教育する金や余裕はない、どこから教育を始めたらよいか判らない、このような諸問題は経営層が教育の 重要性と必要性とその効果 を真に理解し 実行を覚悟 することに比べればそれほどたいしたハードルではないでしょう。
株式会社プラネット
1984年設立。POSシステムを中心に一貫して流通業へのソリューション提供を手掛ける。
システム開発からデーターセンターとしての情報処理サービス、さらには稼動後のヘルプサポートまでワンストップで提供する。
今年より外食企業向けe-ラーニング・システムScoMの販売を開始する。
記事提供 : 株式会社プラネット