OFSC、法人化を果たして活動開始~2009年度全体会で一般社団法人化を決議

OFSC、法人化を果たして活動開始 2009年度全体会で一般社団法人化を決議

OFSCは、これまで任意団体としてITをキーワードに外食産業の活性化を目指してきたが、去る3月19日に開催された2009年度全体会で法人化を決議、4月28日に一般社団法人化を果たした。OFSCは、ITの重要性を啓蒙するとともに、費用対効果の高い仕組みを外食企業が採用できるよう日々活動してきたが、今後は責任ある一般社団法人として生まれ変わり、活動をより活性化させる構えだ。今回は、 その全体会の内容を紹介するとともに、特別講師として招かれた、すかいらーく創業者の一人である横川竟(きわむ)氏の貴重な講演の内容をお伝えする。

第2回 特別講演「外食産業のトレンドを読む」株式会社きわむ元気塾 代表取締役会長 兼 社長 横川竟氏

議題4. 特別講演「外食産業のトレンドを読む」 株式会社きわむ元気塾 代表取締役会長 兼 社長 横川竟氏

特別講演「外食産業のトレンドを読む」 株式会社きわむ元気塾 代表取締役会長 兼 社長 横川竟氏昭和45年にファミリーレストランが日本に生まれたのですが、それまでの日本のレストラン産業は駅前立地と百貨店内だけだったんです。そこに新しい価値として、消費者側に立って物を考えるレストランが登場したわけです。それまでは消費者側ではなく、自分たちの価値観で店を作ってきた時代でした。消費者側に立ち、駅前から住宅地型に変更していった。それがファミリーレストランが成功した理由です。また、アメリカの料理を売らずに、日本人が食べている料理を売ったことも成功の理由だと思います。「 おいしい 」 とはどういうことでしょうか? そこに住んでいる人たちが、食べたいものなければ 「 おいしい 」 とはならないわけです。アメリカの仕組みを使って、日本の料理を出したからこそ成功したのです。海外の成功例をストレートにもってくるのではなく、考え方を導入するという方向性でやっていかないとうまくいかないと学びました。

特別講演「外食産業のトレンドを読む」 株式会社きわむ元気塾 代表取締役会長 兼 社長 横川竟氏さて、現在の外食産業がどうなっているか簡単に申し上げると、ナショナルチェーン(全国展開型チェーン)、ローカルチェーン、オーナーシェフ型という店舗形態の中で、特にローカルチェーンに元気がないように思います。業界全体に元気がないのは周知のことですが、データ的に申し上げますと、前年対比で増収増益している外食企業は10社程度しかないんですね。業界がそうとう弱ってきている。もっと厳しい数字では、いろいろあってもこれまで店舗数は増え続けていましたが、昨年は実質的に出店よりも閉店の方が増えました。具体的なデータは取れませんが、昼食を外食にするという人が激減したように思います。それがBSE以降なのか、バブル崩壊から始まっているのかはわかりませんが、安全性と栄養面という2つの問題が背景にあるでしょう。弁当組が圧倒的に増えてきています。スーパーで高品質の弁当を200円台で売られてしまうと、収入が減っている時代には魅力が大きいわけです。しかも、家から弁当をもってくると、もっと低価格で安全です。

特別講演「外食産業のトレンドを読む」 株式会社きわむ元気塾 代表取締役会長 兼 社長 横川竟氏安い弁当が売れているといっても、これからの外食産業に関しては、低価格だけで売っているビジネスモデルは苦しくなるだろうと思います。なぜかというと、家庭料理に負けてしまうからです。おそらく3~5年後には、家庭用調理器具がICチップを搭載して、ボタンを押すだけでファミレスレベルの商品が数分でできてしまうようになるでしょう。料理というのは出来上がりから逆算して調理をするものです。この流れに沿うように加熱すればいいように食材をスタンバイするというのは、それほど難しい技術ではありません。ICチップに電気の時間や熱をインプットしておくと、機械が自分で動いてできあがる。こまかい現実的な問題はこれから解決することになるでしょうが、そう遠くない未来に実現するでしょう。そうすると何が起きるでしょうか。食品メーカーがつくった物を主婦が買って帰り、レンジでチンすると服を着替えている間に外食店並みの料理ができてしまうんです。いままで仕事が忙しくて料理をつくれなかった人、つくる技術がなかった人、つくる気のなかった人、つめたい物を我慢して食べていた人、いろいろ含めて “ チン ” で料理ができるようになってしまうんです。進化した家庭用調理器具のボタンを一回押せばファミレスレベルの商品が家庭でできる。そういう時代がもうすぐ来るんです。このことを外食産業の人たちは、もっと意識しなければなりません。それが価格競争に特化していたら危ないと私が主張する根拠です。

特別講演「外食産業のトレンドを読む」 株式会社きわむ元気塾 代表取締役会長 兼 社長 横川竟氏これからの外食業界で本当に必要なのは、マーチャンダイジングシステムを使った商品づくりだと思っています。産地から消費者に届くまでの食材、原料のつくり方から保管、輸送、加工、調理までを含めた一貫した管理システムのことです。もっと広くいえば、土壌改良と品種改良から始まり、食べてから4時間半経って、お腹が痛くならないところまで責任をもった商品づくりが求められます。それをきちんとシステム化して、管理をして、オペレーションをしていくことがマーチャンダイジングシステムだと思ってください。日本の市場は、産地、流通、メーカー、問屋、小売り、消費者と多くの人々が関係していて、それぞれに利益を落としています。こんな複雑なシステムは世界に他にありません。一番シンプルなのは農家が消費者に直接売ること。それがうまくつながらないのであれば、誰か一人が間に入ればいい。これをどこがやるか? 私は外食の大手企業がやるべき仕事ではないかと常に申し上げてきました。品種改良や土壌改良をどうするのか? 安定的に確保するためにはどう収穫して保管するのか? これらを管理するのは大ベテランであってもとても難しい問題です。ベテランじゃなくてもできるようにするためには、相当規模のシステム化とIT化をしなければいけません。私は、外食産業ならできると思っています。土壌改良剤や殺虫剤が使われているのか、添加物は使用されているのか、生産から流通の間には、皆さんが知らないことを含めていっぱい課題があります。いままでは、これらをすべてクローズして物を売ってきたのです。そのために、いま消費者からの信頼がなくなっているわけです。消費者の信頼を勝ち取るブランドは何か。これからは、製造ブランドではなく、販売ブランドができていく時代になると思います。

>特別講演「外食産業のトレンドを読む」 株式会社きわむ元気塾 代表取締役会長 兼 社長 横川竟氏外食の現場では、セントラルキッチンの役割が大きくなると思います。産地からどうやって運んでくるか、どうやっておいしく安く必要量だけつくるか。セントラルキッチンがマーチャンダイジングセンターとなるわけです。おいしく、安くつくることがセントラルキッチンの役目ですから、セントラルキッチンを持っていないと、そうはできないのです。では、セントラルキッチンを持たないオーナーシェフの店や7店舗以内の支店型はどうすればいいのか。こういうお店はそれぞれにシェフがいて、自分でおいしくすることができます。安く提供することはできなくても、おいしさで勝負ができる。これが小規模チェーンの戦い方です。こういった違いが大手と中小の顧客の違いになるわけです。

外食企業のブランドを支えるのは 「 正しい情報 」 に尽きます。それをITを使ってどのように扱っていくか? これからの外食業界が消費者の信頼をどうやって勝ち取るか、そのために会社は何をするのか、人と時間と金と仕組みとどう使えば良いのか。これを満たさない限り、IT化は成功しないのではないでしょうか。それを考える時代が来たんだと理解して、OFSCの皆さんにも活動していただきたいと思います。

編集後記

横川氏の特別講演は、外食業界の問題点を学ぶ上でためになるお話でした。編集の都合上、大幅に割愛し要約させていただきましたが、業界の問題点と対応策に関する横川氏のお考えが少しでもお伝えできれば幸いに思います。

講演中には、「 ここには記者さんがいらっしゃるようですが、これは書かないでくださいね… 」 という前置きで始まる興味深い(ディープでダークな?)お話もいくつか聞かれました。現場にいたOFSC会員さんだけの特典ですから、全面カットしていることをご理解・ご容赦ください。



OFSC

OFSC

http://www.ofsc.jp/

OFSCは、外食産業のIT活用を更に促進するために活動している団体であり、外食企業並びに外食企業を支えるIT企業が、共に健全な成長をしていくことを目指している。

そのための理念として下記の2点を掲げている。

1.「 外食産業を支えるインフラとしてのITシステムの将来像 」 をつくりあげる
2.外食企業が直面する 「 日々の課題 」 に対しての解決策を検討・実行する

日々の活動は、課題ごとに分科会を設け、それに関連する会員が参画し検討・実行を行い、年3回行われる全体会議にてその成果を発表している。

■現在活動中の分科会
店舗システム分科会 企業システム分科会 仮想店舗分科会 マルチベンダー保守分科会 厨房システム分科会

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