キッチンイノベーションかな・・。
引き続きキッチンイノベーションである。
いろいろな意味で興味深かったので取り上げるものがひとつ。
Sani-Floor LLC のSelf Washing Floor System である。
その名の通り厨房の床に排水溝を仕掛け、床を衛生的に保つというどちらかといえば設備分野のソリューション商品だ。
しかしながら、内部の構造は別にして、私は日本のどこかのお店の厨房でこの形状の床を見た記憶がある。どちらかといえば当たり前の設備だと思っていた。
構造の概略は、
厨房の床に40インチ幅の谷型の傾斜をつけた溝を切り、排水路を確保して金属製のフィルタートレー、および規格化された約30インチ×約40インチの床板を溝にはめる。
床板はグラスファイバー製で、格子型になっており、滑り止め加工が施されている。
溝の傾斜面には一定の間隔で水が高圧で噴霧され、金属製のフィルタへ落ちる。
廃水はフィルタを通して最終的な排水路に流れ、最終的にグリーストラップ
金属フィルタに残った廃材はトレイをはずして掃除できるようになっている。
床の汚れは不潔であるだけでなく、2次的に労働環境を悪化させる。油が沈着するため、滑りやすくなるのである。
この製品はその点にも着目し、床板にすべり止め加工を施している。
ラバーマットは敷いてませんて
しかし・・・説明員のキャッチフレーズは「ラバーマットよさらば!」である。
それだけではないのであろうが、私はこの製品がなんでキッチンイノベーションアワードなのかよくわからない。
日本ではあらゆる分野において公害に対して敏感で、外食チェーンの廃水も例外なく汚染の要因として問題になることがある。汚水公害は製造業だけの問題ではない。
私が見たことがあるというのも、仕組み自体は違うのであろうが、かなり早くから似たような仕組みを使っているはずである。(製品の詳細情報などは帰国してから再度調べてみることにする。)
製品自体がたいしたことないとかそういう事ではない。日本では当たり前と思ったことが、米国では革新的である。という印象を受けたのである。
「米国に外食産業が起こってこのかた80年ラバーマットが手放せなかったけどこれで安心だよ」と私たちに対して力説しいていた説明員があまりにものを知らないだけかもしれないが、それがいまさらキッチンイノベーションですといわれても違和感がある。
キッチンイノベーションアワードを受賞した製品は、どれもすばらしかったが、衛生・労働環境についての意識や技術革新については、日本のほうが意識が高い気がした。
一回このおじさんに日本の外食企業の厨房を見せてあげたい。
「これを日本に持ってって売れば大金持ちになれるぞ!」と言われた・・。そうかな・・。
繰り返すが単にこのおじさんのインパクトとそれは違うんじゃないかという違和感があって、このような書き方をしたのであるが、どれも「変化」に対応すべく開発された革新的な製品であった。
日本と米国、それぞれの環境・マーケットで、視点がかなり違うのである。さらに言えば日本の外食産業はよく鍛えられていると思う。ただし、強みが生かせてないような気がする。
以下は書ききれなかったものも含め Kitchen Innovations Award 受賞全企業。いずれも、外食産業と大手メーカーやベンチャー企業が一体となって問題解決、変革に挑んだ結果である。
(1)A.J. Antunes & Co.
浄化水槽
(2)Carrier Commercial Refrigeration, Inc.
冷蔵・冷凍庫
(3)Cleveland Range
2種類のパンが同時に焼けるスチーマーオーブン
(4)Cooper Atkins Corporation
HACCP導入に役立つ機器がいろいろ
(5)Electrolux 社
スチーム・コンベクション・マイクロウェーブの組み合わせでスピード調理が可能なオーブン
(6)Electrolyzer Corp.社
電解水により生鮮素材の鮮度を保つ。ちょっと怪しい・・。
(7)Fri-Jado
グリル調理器・全自動洗浄と高速調理が売り。
(8)Green-Line Products Inc.
容器包装の機器。狙っている市場はドライブスルーとか。
(9)H&K International
トップダウン冷却方式の保冷棚。
(10)Lincoln Foodservice Products, Inc.
コンベアトースター・・・何が革新かわからなかった。
(11)MooBella LLC
本稿で速報したが、アイスクリームの会社。やる気十分。
(12)Nu-Vu Foodservice Equipment Corp.
残念ながら時間切れで取材できず。
(13)Perfect Fry Company Ltd.
残念ながら時間切れで取材できず。
(14)RATIONAL USA
残念ながら時間切れで取材できず。
(15)Sani-Floor, LLC
本稿。説明員は味があってよし。
(16)Structural Concepts Corporation
保冷庫のカートリッジ式クーラー。自動洗浄機能付き。
(17)TEC Infrared
グリルバーナー。エネルギー効率面での特許を使用。
これで2日目の行程を終えた。
速報としては自分のテーマに沿って出来る限り感じたままをレポートしたつもりであるが、とても全体を伝えきれていないとは思う。
思ったとおりNRAの情報量はすごいものがある。前述したが、もし見に行く機会があれば、3日は最低必要であろう。(自身のテーマに絞っても、3日ではきついかもしれないが)
それと痛感したのは、英語力。私はまったくだめで、通訳の石田さんに頼りきっていた。比較的国際展開が容易に行われている世界なので、英語は身につけておいたほうが良い・・・・。と思った。石田さんがいなかったら何しにきたのかわかんなくなっただろうな・・。
NRA取材を通して私が気をつけたかったのは、得られる情報を元に米国外食産業を礼賛するのではなく、「違い」を浮き彫りにすることを意識した。ここまでで、日本にあるもの・無いものを少しは書けたと思う。
実はこの原稿はすでに会期を終えて書いている。次回は帰国後になってしまうが、簡単な総括と、滞在中に書ききれなかったことをなるべく抽出して書いてみようと思う。
それではまた。
福本 龍太郎
国内コンピュータ販社にて流通小売業界向けSI事業部門を担当し、外食店舗店舗システムにも関わる。
現在は有限会社ノーデックス代表取締役。
ネットビジネス黎明期より各種サービスプロバイダを経験し、業務システムへのネット技術の応用・普及につとめる。