宮城大学は、食材の生産から消費、さらには循環・リサイクルを含む一連の産業を「食産業」と捉え、そのフィールドで活躍すべくスペシャリストの養成を目指し、食産業学部を設置している。生産段階を学ぶ「ファームビジネス学科」、食材の加工・流通・消費を学ぶ「フードビジネス学科」、エコロジーやリサイクルを学ぶ「環境システム学科」。同学部の特徴は、文理融合教育。いわゆる文系科目と理系科目を垣根なく学べるカリキュラムにある。飲食ビジネスの将来を担う人材を養成する同校の取組を食産業学部副学部長の富樫千之教授に話を伺った。
宮城大学は、就職に強い大学でもあります。本校は1年生から 「 キャリア形成プログラム 」 として各学部の特性に沿った進路支援を行っております。
「 食産業学部 」 では、1・2年次で 「 キャリアセミナー 」 により体系的に学習をして、3年次には必修科目としてインターンシップがあります。インターンシップは、提携企業で実際の企業活動の一部を体験する 「 産業実習 」 です。これにより自分の適性にあった進路や職業のイメージを持つことができ、それに会わせたスキルを訓練する 「 キャリア開発 」 につながります。「 キャリア開発 」 では、専任進路指導員による面接・ビジネスマナートレーニング、エントリーシートの書き方などを個別に行うとともに、企業から講師を招いての講義やセミナーを行っています。この一連のプログラムは、就職率アップにつながるだけでなく、就職後にアンマッチによる離職を避けるのにも役立ちます。これにより、「 食産業学部 」 の今年度卒業生は、東日本大震災の影響がありながらも正規社員としての就職率100%を達成することができました(就職率の算定方法は、就職者/就職希望者=大学院進学者などは除く)
当校では、今後の取組としてグローバルな人材の育成にも力を入れて行きたいと考えています。
外食企業は国内の市場が飽和状態になり、中国や東南アジアを中心に海外に出店することで活路を見出そうとされています。また、メーカーなどの企業も円高の影響などで国内での製造から東南アジアなど低賃金の海外に工場をつくるといった流れが加速しています。それに対して今の若者は海外志向が薄くなかなか転勤をしたがらない。さらにこの厳しい社会情勢の中、企業側もなかなか自前で人材育成のための投資もしづらくなってきているという事実もあります。
そこで望まれているのが大学でのグローバルな人材育成です。文科省からの要請もあり、当校ではこのグローバルな人材育成に力を入れていくことにしました。
現在でも、フィンランドのタンベレ応用科学大学やオーストラリアのロイヤル・メルボルン工科大学などと交流協定を結んで、相互乗り入れで交換留学をしていますが、さらに一歩進めて海外の企業に勤めることにより、海外での職場体験ができるようにするためにグローバルインターンシップ制度を取り入れようと考えております。
具体的には、ベトナムを中心とした東南アジア諸国の大学と企業と提携して、外国企業での職場体験をしながら、大学でも授業を受けることができる。しかも交換留学だと2~3週間の短期留学となりますが、グローバルインターンシップは6ヶ月程度の長期留学にしようと考えています。これにより 「 自ら海外勤務を希望する人材の育成 」 「 即戦力として海外勤務ができる人材の育成 」 「 日本と海外とのバインダーの役割を果たせる人材の育成 」 ができると考えています。
最後に、当校では 「 事業構想学部 」 を中心に起業家の育成も視野に入れています。将来的に飲食店などの起業を目指している 「 食産業学部 」 の学生も少なくないと思います。当校は、今は独立した公立大学法人となっていますが、やはり宮城県立の思いが強いのも事実です。起業をした際には設けることも重要ですが、宮城県の食材、まだまだ埋もれているけれど素晴らしい食材がたくさんありますので、地域資源の食材として宮城県の食材を使ったり、宮城県の文化を伝えたりと、東北の雄としての 「 宮城 」 「 仙台 」 と言うものを発信して行って欲しいですね。
公立大学法人 宮城大学 食産業学部
太白キャンパス 宮城県仙台市太白区旗立二丁目2番1号
1997(平成9)年4月 県立宮城大学開校
2005(平成17)年4月 食産業学部設置
2009(平成21)年4月 公立大学法人宮城大学設立、法人化
食産業学部概要 『環境の時代21世紀に、”食” と ”農” の未来を開拓するスペシャリストを養成』健康や暮らしに直結し、生活の基盤である“食”に関する内容を幅広く学習。具体的にはバイオのような先進技術とフードビジネスの融合、“食”に関する付加価値の創造、地域に密着した新産業創造、などの能力に長けた人材の育成を目指す。