フードサービスのエキスパートを最高学府から輩出する Vol.2 “食”の未来を拓くスペシャリストを養成 -日本唯一の食産業学部を擁する公立大学法人宮城大学

フードサービスのエキスパートを最高学府から輩出する Vol.2 “食”の未来を拓くスペシャリストを養成 日本唯一の食産業学部を擁する公立大学法人宮城大学

宮城大学は、食材の生産から消費、さらには循環・リサイクルを含む一連の産業を「食産業」と捉え、そのフィールドで活躍すべくスペシャリストの養成を目指し、食産業学部を設置している。生産段階を学ぶ「ファームビジネス学科」、食材の加工・流通・消費を学ぶ「フードビジネス学科」、エコロジーやリサイクルを学ぶ「環境システム学科」。同学部の特徴は、文理融合教育。いわゆる文系科目と理系科目を垣根なく学べるカリキュラムにある。飲食ビジネスの将来を担う人材を養成する同校の取組を食産業学部副学部長の富樫千之教授に話を伺った。

第1回 技術、マーケットともに理解できる人材育成を目指す

第1回 技術、マーケットともに理解できる人材育成を目指す

宮城大学 太白キャンパス宮城大学は、1997(平成9)年に開学した比較的新しい大学です。当初は、観光地・東北の中心地でもある仙台という特長を活かして観光大学をつくりたかったとのことですが、当時は 「 観光 」 と名のつく大学も学部も無く、学問体系ができあがっていないとの判断から 「 事業構想学部 」 を中心とした県立宮城大学としてスタートしました。

「 事業構想学部 」 は、厳しい環境下に置かれているこれからの時代を生き抜くことができる事業構想の知識とスキルを兼ね備えた、技術のわかる事業者、事業のわかる技術者の養成を目指しています。「 起業家の育成 」 というキーワードはありますが、企業に就職して事業を構想できる人材輩出も行っています。

食産業学部 副学部長富樫千之教授「 食産業学部 」 は、1952(昭和27)年に設立した宮城県立の農業短期大学を母体に2005(平成17)年に設置しました。公立の短期大学は全国各地にありましたが、少子化が進んだこともあり短期大学の存在意義を問われていた時代でもありました。宮城農業短期大学も発展的解消の方向性が示され、県立宮城大学への編入が決まりました。その際に農学部ではなく食産業学部として再出発することになりました。当時の農林水産業のいわゆる第一次産業の生産額は8~9兆円でしたが、これに加工・流通などの第二次産業が加わると約90兆円、100兆円規模の産業となります。そこで100兆円規模の産業に根ざした人材を供給して行こうと、より二次産業にウエイトをおいた学部を創り、宮城農短の教員に一次産業を中心に、外部から教員・スタッフを招聘して二次産業側の科目を受け持ってもらうことにしました。

「 食産業学部 」 の教育体系の特徴は、『 文理融合 』 『 川上から川下 』 と言ったいわゆるクロス教育にあります。

文理融合は、文系と理系を隔てなく、同じ学部、学科で学べるということです。例えば、飲料企業で新商品を開発するにあたって、開発サイドは技術力にこだわり、自社製品は良いに決まっているからつくれば売れると思い。販売サイドは、自社の技術は無視して、マーケットが望むものはこれだからとりあえずつくれば売れると思う。この様に相互の垣根が存在して上手く行かないことがあると聞きます。当校では、マーケットを理解して、技術力を発揮できる技術者、技術を理解して、市場を見ることができるマーケターを育成したいと考え、一般教養のみならず専門基礎の課程でも文系科目、理系科目を相互に学べるようなカリキュラムを準備しています。

食産業学部の教育領域川上から川下は、“ 食 ” 産業における川上の生産、つまり農業を学ぶファームビジネス学科。川中の加工・流通から川下のマーケットを学ぶフードビジネス学科。それらを串刺しにして、生産基盤や食物残渣などのエコロジーやリサイクルを学ぶ環境システム学科と 「 食産業 」 を一気通貫で学ぶ環境にあります。例えば、将来農業を目指す学生は、効率的な生産方法のみならず、消費者がどのような野菜を望んでいるのか、飲食店がどのような牛肉を望んでいるのかを学び、生産に活かせるようになります。また、飲食店で働くことを目指す学生も、生産やリサイクルの仕組みを学ぶことで仕事に活かせる知識の習得ができるのです。



公立大学法人 宮城大学 食産業学部

公立大学法人 宮城大学 食産業学部

http://www.myu-syoku.jp/

太白キャンパス 宮城県仙台市太白区旗立二丁目2番1号

1997(平成9)年4月 県立宮城大学開校
2005(平成17)年4月 食産業学部設置
2009(平成21)年4月 公立大学法人宮城大学設立、法人化

食産業学部概要 『環境の時代21世紀に、”食” と ”農” の未来を開拓するスペシャリストを養成』健康や暮らしに直結し、生活の基盤である“食”に関する内容を幅広く学習。具体的にはバイオのような先進技術とフードビジネスの融合、“食”に関する付加価値の創造、地域に密着した新産業創造、などの能力に長けた人材の育成を目指す。

公立大学法人 宮城大学 食産業学部

文:齋藤栄紀
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