業務用のビール類で高いシェアを持つサッポロビールが、業界に先駆けて発売した新ジャンル(いわゆる“第3のビール”)の樽詰「麦とホップ」。家庭用ユーザーから高い支持を得た品質と価格は、業務用というステージにおいていかなる効果をもたらしてくれるのであろうか。今回は、同製品のブランドマネジメントを担当するサッポロビール株式会社 サッポロブランド戦略部 商品ブランドグループ マネージャーの吉田直樹氏のお話を通じて、「麦とホップ」開発秘話や業務用樽詰の可能性といった同製品のベネフィットを改めて検証する。
− 新ジャンルに対するニーズが、ビールらしい味わいに変わって来たというお話がありましたが、それはユーザー層の変化としても現れているのですか?
【 吉田氏 】 新ジャンルの主なユーザーは、30代から40代前半の男女であり、多くの方々は子育てや住宅のことで大きな負担を抱えていらっしゃいます。これに対して、ビールのユーザーは50~60代のどちらかというと余裕がある世代と言われていました。ところが、ある時期からビールを飲まれていた方が発泡酒や新ジャンルに変わっていく流れが顕著になりました。「 麦とホップ 」 は40~50代男性をメインのターゲットにして、高い好評をいただいているようです。
− 「 麦とホップ 」 のブランドをさらに広げていくために、どのような施策をお考えですか?
【 吉田氏 】 新ジャンルというのは、どうしても家庭用が主戦場となります。業務用樽詰が飲食店で売れていくためには、やはり広く名前を知ってもらうこと、話題に上ることが重要なことだと考えています。“ この商品が売れている ” という話題喚起も大切でしょう。最近ではハイボールのブームがありましたが、これも広告やプロモーションが話題になり、いろいろなメディアで取り上げられるから流行したと考えています。それと同じで、「 麦とホップ 」 が売れていくためには、取扱っている飲食店だけでなく、缶製品を販売する小売店でも話題になっていくことが重要なのです。特に、新ジャンルというのは、ビールと違って歴史も浅く、新しい商品がどんどん出てきています。各社が販促に力を入れ、お客様の移り変わりも激しい。話題喚起、販促を継続的に行っていくことが必要だと思っています。
− 飲食店独自のプロモーションというのは?
【 吉田氏 】 飲食店という場所では、訪れたお客様が既に 「 麦とホップ 」 の存在を知っていて、しかも美味しいと分かってくれていないとオーダーしていただけません。この商品は、発売以来、田村正和さんをキーにしてプロモーションをずっと展開しています。お陰様で大変好評ですので、これを飲食店向けにも活用します。“ 田村正和がビールと間違えたやつだ ” と飲食店でも認識してもらえればいいかなと思います。広告と店頭が連動して存在感が高まれば、弊社にとっても飲食店にとってもいいことだと考えています。
- 商品認知という面で手応えは?
【 吉田氏 】 弊社の調査では、「 麦とホップ 」 の認知度は90%を超えているので、ほぼすべての方に商品名を覚えていただいてます。さらに、これが安い商品であることも分かってもらえています。飲食店でも飲めることが知れ渡れば、自然に売上は伸びていくだろうと思っています。飲食店関係者様へのPRという面では、まだまだ不十分です。しかし、飲んでいただくと味や泡持ちについて非常に高く評価していただけるので、非常に楽しみです。
− 業務用樽詰の認知度促進が2010年の目標というわけですか?
【 吉田氏 】 なるべく安い値段で外食を楽しんでもらうことが、外食業界に求められている要素であるという前提で樽詰を発売をしているわけですから、店頭でちゃんと頼んでもらえないと意味がありません。単価が下がってもビールと同じ満足度を感じてもらって、リピートしてもらうのがお店側の狙いです。我々ももっともっとPRして、お客様から指名していただける状況を作らないと樽詰にした意味がありません。そのフォローを徹底したいと考えています。まだ発売したばかりですから、“ お店でもビールと間違えるほどのうまさが楽しめる ” ことを伝えるのを2010年の目標にしたいですね。
サッポロビール株式会社
1876年(明治9年)設立の開拓使麦酒醸造所で醸造された、北極星をマークとする冷製 「札幌ビール」 が社名の由来とされる。
1949年に大日本麦酒が分割された日本麦酒としてスタート。
1964年からは会社名もサッポロビール株式会社に変更。
2003年の持株会社制導入に伴い、新たにサッポロビール株式会社として設立。
代表者 代表取締役社長 福永勝
文: 貝田知明