飲食店経営に重要な役割を果たすPOSシステム。大手チェーンを中心に導入されてきたPOSは、高機能ながらも高額だったため、小規模店舗や個店にとっては “高嶺の花” 的な存在であった。近年、iPadなどの市販のタブレット端末をPOSとして活用することで安価に導入できる新サービス「タブレットPOS」が登場してきた。厳しい経営環境が続く飲食業界だからこそ、自店の状況を分析し、今後の戦略・戦術に活かす必要があると考える。今回は、POSの大手企業であるNECの協力のもと、「タブレットPOS」のあるべき姿をひもといていきたい。
個人消費の足踏みや節約志向、急激な円安に伴う食材価格の高騰、水道光熱費の上昇、更には、人手不足による人件費の上昇など、飲食店経営にとって厳しい状況が続いている。この様な環境下で、健全な店舗経営を行っていくためには、自店の状況を客観的に確認すると共に、分析して次の一手に繋げることが重要となるであろう。その有用となるツールの一つがPOSシステム(以下、POS)なのである。
70万店以上あると言われる国内の飲食店。この内POSを導入している店舗が約30%で、残りの70%の店舗は、電子レジスターなどのキャッシュレジスターを使用していたり、レジ自体使用していないと想定される。
キャッシュレジスター(以下、レジ)とは、会計と売上集計が主要な機能の機器のため、細かい商品登録や売上分析には向かず、基本的にオンラインに未対応なので、複数のレジのデータ共有や管理は手動で行う必要がある。但し、単機能ゆえに数万円程度と比較的に安価で購入できる。
POSとは、レジでは対応ができない細かな商品登録や、時間別、商品別などといった各種売上分析が可能となるシステムで、個別のカスタマイズにも柔軟に対応できる。しかも、一般的にはオンラインに対応しているため、複数店舗のデータ共有や一元管理が可能となっている。また、オーダーエントリーシステム(以下、OES)との連携ができる機種もあり、店舗オペレーションの省力化にも役立つ。一方で、価格が数十万~数百万円と高額な導入費用が必要となる。
タブレットPOSとは、レシートプリンタ、キャッシュドロアなどの機器と連携し、POS機能をiPadなどのタブレット端末上で実現するサービスで、市販の端末を使用するため、一般的なPOSと同等レベルの機能を安価に導入できるメリットがある。
タブレットPOSの導入が伸長している理由は、低コストということだけではない。まずは、iPadをイメージすれば明確であるが、そのスタイリッシュさと省スペース性にある。お客様からの見栄えの良さと共に、小さなレジカウンターでも設置できるのである。また、持ち運びができるという利点もある。これにより、テーブルチェックはもちろんのこと、夏のビヤガーデンや期間限定の催事など店舗外にも持ち出すことが可能となる。更に、iPodやiPhoneなどの携帯端末をオーダリング端末として使用することで安価にOESとの連携もできるというメリットも享受できる。
一方、課題としては、保守体制の不備が上げられる。従来のPOSは、大手ベンダーの全国に広がる保守網に、24時間サポートという至れり尽くせりの保守サービスを享受できたが、「タブレットPOS」の場合には新規ベンダーの参入が多いため、保守という面での弱さは否めない。大手チェーンにおいても、コスト削減の観点や次世代型(コンセプト)店舗での活用など、タブレット型のPOS導入を検討する企業が増えてきているが、新しい仕組みであるという点と、前述の保守(サポート)の弱さが不安材料として残るため、今一つ導入に踏み切れていないのが現状のようだ。そのため、今一つ認知度が上がりきらないという事実がある。そのような中、大手POSベンダーのNECが、このタブレットPOS市場に参入した。同社は長年の実績により、飲食業界が抱える店舗ITの課題と解決方法を熟知している。次章では、これらの課題を乗り越えるべく登場したNECのタブレットPOS、「NECモバイルPOS」についてみていきたい。
「タブレットPOS」の課題として、保守体制の不備と認知度不足が上げられると述べたが、大手POSベンダーのNECの参入により、その課題の解決も可能となった。
同社は、1970年代に誕生した外食チェーンがまさに成長期であった80年代に、POSとOESを核とした店舗ソリューションの提供を開始した、豊富な導入実績を持つ老舗POSベンダーである。飲食企業のニーズを熟知する同社では、24時間365日対応のコールセンターを核に、日本国内に400ヶ所以上の保守拠点を網羅した保守体制を構築している。
本章では、同社が提供するタブレットPOS「NECモバイルPOS」についてみていきたい。
「NECモバイルPOS」は、Wi-Fi環境があれば、iPad上でPOS機能を使うことができるサービスのことである。同社から店舗へは、iPadの他、レシートプリンタ、キャッシュドロアなどPOSの部品となるハードウェアを提供。店舗では、アップルストアからiPadに専用アプリをダウンロードし、商品データを登録するだけでPOSとして使えるようになる。
「NECモバイルPOS」の大きな特徴は、「クラウドサービス」「多様な決済手段に対応」「飲食店向け機能の充実」「手厚いサポートサービス」の4点にある。
売上データや商品マスタは全てNECのデータセンターに保管される。これにより、POSが壊れても、機器を入れ替えるだけですぐに使えるようになる。また、売上分析などの管理機能もデータセンターにあるので、初期費用を半分以下に抑え、スピーディーに導入できると共に、オーナーや店長は出先でも、スマートフォンやPCなどでリアルタイムに売上情報などを確認できる。
現金や金券のみならず、専用端末を接続することで、クレジットや電子マネー決済にも対応ができる。
OES機能も有しているため、オーダリング端末としてiPodやiPhoneとキッチンプリンタを導入するだけで、容易にOES連携ができる。更に、予約台帳管理システムとの連携により予約や顧客データの管理ができたり、電子レシートシステムとの連携によりお客様のスマートフォンに会計レシートデータを送りつつ様々なプロモーションを行うこともできるのである。
導入時支援や導入後のアフターサポートまで、店舗を全面的にバックアップする豊富なサポートメニューを用意。保守サービスでは、24時間365日対応するコールセンター、全国400ヶ所の保守拠点という保守体制で安心の運用をサポートする。
「NECモバイルPOS」は、同社としては、まだ、新しい飲食店向けのソリューションサービスであるが、既に、居酒屋業態を中心に導入が進みつつある。ここでは、その一部ではあるが、「NECモバイルPOS」の利用店舗を紹介させて頂く。
■居酒屋業態
店舗:阿吽亭
運営:株式会社AUN
店舗:炭火とワイン 京橋店
運営:株式会社大地
店舗:月とすっぽん 蒲田西口店
運営:株式会社フロンティアフード
店舗:和食 錦繍楼
運営:シダックスレストランマネジメント株式会社
■ディナーレストラン業態(フレンチレストラン)
店舗:アルカナ東京KARATO
運営:株式会社 PATINA
「NECモバイルPOS」は、既存POSの簡易版という位置付けの商品ではない。安価で簡便に導入できるという面では、個店や小規模店舗での導入が進んでいくと思われるが、機能の拡張性や、今後も、更に増やしていくというソリューションパートナーとの連携などを考えると、大手チェーン店舗にも充分対応できるサービスであろう。既に、まずはレジ混雑解消の支援用として導入検討を始めた大手企業もあるようだ。
※Apple、Apple ロゴ、iPhone、iPad、iPod touch、AppStore は米国および他の国々で登録されたApple Inc. の商標です。
NEC
http://jpn.nec.com/mobile-pos/
本社 東京都港区芝五丁目7番1号
創立 1899年(明治32年)7月17日
代表取締役 執行役員社長 遠藤信博
グループ主要事業ITソリューション、キャリアネットワーク、社会インフラ、パーソナルソリューション
関連サイト:NECモバイルPOSソリューション
http://jpn.nec.com/mobile-pos
取材協力 グローバルリテールソリューション事業部 マネージャー 黒田正治氏 渥美惟成氏