創刊1周年記念特集 よみがえれ外食産業!誰も言わない外食産業の問題点を語る ~業界の活性化には力を持った“人”を育てることが急務~

創刊1周年記念特集 よみがえれ外食産業!誰も言わない外食産業の問題点を語る 業界の活性化には力を持った人を育てることが急務 松尾本気塾 塾長 松尾満治氏 外食ドットビズ

松尾満治 登場!『夢の3者対談セミナー』開催
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外食ドットビズの創刊1周年記念と致しまして、「ステーキ&カレー ふらんす亭」の創業者である松尾満治氏にご登場いただきます。松尾氏は、1978年(昭和53年)に東京・下北沢で起業し、その後30年間にわたり外食業界の最前線で活躍されました。その経験をもとに、現在の業界にある問題点を指摘していただくとともに、活性化へのヒントについてお話をいただきました。
また、今年の6月から外食独立希望者と現役店長向けにこれまでになかった実践的な塾 (2講座×10日)を開く予定で、現在受講希望者を受付ています。『松尾本気塾』の詳しい内容はこちら

第5回 人材の育成について

第5回 人材の育成について

松尾本気塾 塾長 松尾満治氏さて次は人の力をどう上げていくかです。この問題はスポーツ界に置き換えれば俄かに方法は見えてきます。例えば水泳界で言うと、今から30年位前は世界レベルの選手が日本にはほとんどいませんでした。その頃「日本人は体格にハンデがある以上この分野での活躍は期待できない」という専門家のコメントをよく聞きました。しかし嬉しい事に今はオリンピックでメダルを狙える選手が続出しています。この成果は各選手の努力の賜物だと思いますが、その選手達を育成するスイミングスクール等の教育インフラの充実が最大の要因だと考えられます。昔は才能のある選手と優れた指導者が運良く組み合わさったときだけ一流選手が誕生していたのが、今はスイミングスクール等で広く一般の子供達が、優秀なコーチの指導を受けるチャンスができ、更にそのスイミングスクール同士が育成力を競うことで、どんどん選手の層が厚くなっていったのです。

松尾本気塾 塾長 松尾満治氏今日の外食業界における育成システムは、どの程度でしょうか。まじめにそのお店の仕事を日々やっていくだけで、今日の多様化した外食業界で成功者になる力が養えるでしょうか。たとえ技術が身に付いたとしても、指導力、計画性、交渉力、計数管理、リーダー学、金融知識等、事業者としてまたは経営幹部として不可欠な勉強はどこで学べるのでしょうか。昔の水泳界みたいに、たまたまやる気と才能に満ちた若者が、これらのことを全て満たす研修システムを備えた企業(めったにありませんが)や指導者と巡り合わない限り、本当に強い外食人は育たないのではないでしょうか。しかし現実にはそれぞれの指導者には得意不得意があるので、ほとんどの場合必要なことを学びきれないまま独立をしたり、年功序列で部下を持ち、未成熟のまま今度は指導をする立場になったりします。この様な事が繰り返されていけば、この業界の体質が弱くなるのは当然ではないでしょうか。強い産業界に共通していえることは、人材育成の実戦的で業務に直結した教育インフラが充実していて、それらを日常的に活用していることです。話は簡単です。我々が強くなるには、何を身に付けるべきかを謙虚になって客観的に見直し、足りない部分を補えばいいだけなのです。親や学校のクラブの先生任せでは、一流の水泳選手が育ちきれなかったのをスイミングスクールが補ったように、師匠や所属会社で不足する部分を、外部の教育システムを活用して補えばいいのです。ただし数多くの研修を外部依頼してきた私の経験から言えば、現場経験の少ない講師による理論や抽象論に終始する教育では、実戦ではほとんど役に立ちません。講師の説明を聞くだけではなく責任者が教育現場を実査するなどして、その選択は慎重に行うべきです。

外食産業という言葉が生まれてまだ30年位しかたっていません。他の業界に比べれば歴史の浅い業界です。従ってあらゆる困難を乗り越えて生き残ってきた他の産業に比べれば未熟な業界です。「食は人間には必要不可欠だから強い」という神話を根拠に、数年前までは右肩上がりの成長を続けてきて、今やっと構造的不振の時期を迎えたのです。

松尾本気塾 塾長 松尾満治氏強いといわれる自動車業界も常に地球規模の難問を抱えながらここまで成長してきましたし、不動産、金融、流通、造船、ホテル業界…とどの分野も地球規模の原料危機、戦争、外資の攻撃、過激な為替の逆風といったその時々の大きな障害を乗り越えてきました。だから彼らは強いのです。他の産業がそうであったように、我々も今の不振を乗り越えてこそやっと一人前の産業になれるのではないでしょうか。今日の不振は、業界が真の産業となり、第二の成長期を迎えるために新たな力を養う絶好のチャンスなのです。中食や、コンビニというライバルの出現ぐらいの障害を、いつまでも乗り越えられなくて本当の産業にはなれません。要は中食やコンビニにはできない、お客様にとっての価値を拡大させ、その価値をしっかりお客様に提供できるようにすればいいのです。もっと言えば今までコンビニや中食しか利用しなかった人たちを研究し、その人たちが外食にシフトするアイディアを、外食人全員で研究すれば楽しいアイディアがどんどん出てくるのではないでしょうか。閉塞感なんてとんでもありません。取り組むべきこと、突破口は明確なのです。

利害の絡まない情報を広く正しく捕らえ、おろそかにしていた経営資源を活用し、場合によっては法改正にも挑み、知恵を絞って、絞って、そして一番大切な人材の育成を、口だけではなく本気で取り組めば、チャンスに満ちた夢が溢れる外食業界が必ず復活し、真の産業として再び成長を始めるはずです。



松尾 満治

松尾 満治

九州・佐世保の高級レストラン「ふらんす亭」にて 1年間見習いを経験した後、26歳のときに東京・下北沢のビル地下1階に10坪の「ふらんす亭」を創業。20年後の平成12年にフランチャイズ化して、「ふらんす亭」の他に居酒屋、イタリアン、ラーメン、カフェなどの業態で直営店75店舗・FC100店舗を展開(2006年8月時点)。外食に従事して30年を期に「ふらんす亭」を譲渡、外食で夢を追う人を対象とした「松尾本気塾」を今年6月から開催する。また、「ふらんす亭」を運営する株式会社フードデザインの顧問として、社員研修に携わっている。

◎松尾本気塾 準備室 03-5378-2480

※松尾氏には、4時間にも及ぶロングインタビューにご対応いただき、起業を志した少年時代、修業時代、1号店の初期など数多くの貴重なお話もいただきました。その内容は、後日、起業のすゝめの中で、改めて紹介をさせていただく予定です。

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