創刊1周年記念特集 よみがえれ外食産業!誰も言わない外食産業の問題点を語る ~業界の活性化には力を持った“人”を育てることが急務~

創刊1周年記念特集 よみがえれ外食産業!誰も言わない外食産業の問題点を語る 業界の活性化には力を持った人を育てることが急務 松尾本気塾 塾長 松尾満治氏 外食ドットビズ

松尾満治 登場!『夢の3者対談セミナー』開催
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外食ドットビズの創刊1周年記念と致しまして、「ステーキ&カレー ふらんす亭」の創業者である松尾満治氏にご登場いただきます。松尾氏は、1978年(昭和53年)に東京・下北沢で起業し、その後30年間にわたり外食業界の最前線で活躍されました。その経験をもとに、現在の業界にある問題点を指摘していただくとともに、活性化へのヒントについてお話をいただきました。
また、今年の6月から外食独立希望者と現役店長向けにこれまでになかった実践的な塾 (2講座×10日)を開く予定で、現在受講希望者を受付ています。『松尾本気塾』の詳しい内容はこちら

第3回 業界の実態を教えないことが外食不振の根底にある

第3回 外食不振の原因は、業界自らの体質にある

今も次々と新しいタイプの店舗が登場し、そのたびに業態は進化を続け、業界全体としては設備投資が盛んであり、若い人たちが大多数を占め、しかも女性の社会進出を背景に、「食事を作れない」「作りたくない」という傾向は、マーケットの拡大を示唆しています。しかし、業界不振が言われてもう何年になるでしょうか。不振店が相次ぎ、夢半ばで閉店していく店が後を絶ちません。「その原因は?」と尋ねると、たいていの場合、中食やコンビニの台頭と少子化そして不景気を皆さん口にします。

松尾本気塾 塾長 松尾満治氏この状況は私が不振店から相談を受けたときに出てくる話とよく似ています。つまり「売上が減り続けているので、設備投資をして改装し、新商品を色々出したけど一時的に効果があっただけで状況は変わらない。」「その原因は?」と尋ねると「人通りが少なくなったみたいだ、近所に競合店が出来た、雨だから、給料前で…」と色々でてきます 。

しかし、同じ町にはしっかり繁盛店があり、その繁盛店にも当然雨が降り、同じように給料前のお客様が店の前を歩いています。それでもちゃんと繁盛しています。つまり不振の原因は、その不振店自身にある場合がほとんどです。例え今までに対策を打っていたとしても、それが問題点の本質をついたものではないのです。不振の原因を外的なものと考えているうちは、その店の蘇生は当分期待できません。

外食界全体も同じです。社会背景により潜在ニーズは膨らんでいて、資金もどんどん投入されています。実は我々の業界は、構造不振で衰退している他の業界から見れば、よだれが出てきそうな羨ましい環境なのです。しかし、不振の原因を相変わらず外的なものとし、業界自らの体質にあると考えている人が少ないのです。

松尾本気塾 塾長 松尾満治氏体質の問題点は、二つあります。

一つ目は、低い参入障壁を越えるためのインフラは充実してきたのに、高い成功障壁(勝手に私が作った言葉ですが)を超えるための効果的な情報と教育インフラが整っていないことです。

もっと言えば、成功障壁の存在すら本気で自覚していない場合があります。参入障壁が低いというと違和感がある人もいるでしょうが、他の業界みたいに人脈取得困難な許認可や資格、仕入先、知名度、特殊技術、営業力といったものは絶対条件ではありません。職人的技術がなくても私のように店は出せますし、物件も人手も資金さえあれば、一応手に入ります。

最近は、資金がなくても物件は手に入ったりもします。やはり、他に比べ参入しやすいと言えます。参入障壁が低いから、資金力のある企業から脱サラを目指す個人までどんどん参入してきます。勿論、この事は、業界の活性化の意味で大変有難いことですし、多くの人たちにとってチャンスが広がるのは素晴らしいことです。

問題は、「新規開店をする人たちが正確な成功障壁を認識するための正確な情報」と「それをサポートする仕組みがない」事です。それどころか、成功障壁が高くなる方に誘導する話しが氾濫しています。それは、「必要以上のハイスペックの重装備」「商品単価に見合わない立派過ぎる内装」「話題先行で異常に高い物件」「メディア誘導型の商品トレンド」です。これらは確かに食文化発展には寄与しますが、盲目的に取り入れたら大怪我をします。いわば、ハイスペックのパソコンと同じです。いやパソコンどころかスーパーコンピューターともいえます。このようなハイスペックの物は、入手するだけでパフォーマンスが上がるわけではなく、それを使いこなす力が必要です。その力がないと高くなってしまった固定費が災いし、経営を圧迫していくのです。でも、「あなたの力では、使いこなせないからこの計画は、中止してください」とか「もっと安いのにした方が良いですよ」と言ってくれる人はまずいない。つまり、関係者の利害と情報で成功障壁はどんどん高くなっていく場合が多いのです。実力 ( 人と運転資金と改善能力 ) と イニシャルコスト のバランスをもっと強く意識していくべきです。

外食人は、自らの強みと弱みを分析し、自分の店で表現するために最低必要なハードレベルを守りつつ、全てのイニシャルコストを毎月の固定費に置き換え、それを支える実力がこの店にあるのかを自らに問いながら計画を進めていくべきなのです。

その力とは、単独店の場合店長 ( 個人経営者 ) の実力であり、チェーン店の場合には組織力も必要ですが、最後の切り札はやはり店長の実力です。長く続く繁盛の決め手は、あくまでもハードではなくソフトとそれを支える人だからです。

松尾本気塾 塾長 松尾満治氏「不振店脱出の決め手は、ハードをいじる前に、まず人の力を上げるのが効果的である」と、懸命な飲食店経営者は誰もが口にします。であれば、業界自体も不振から脱出するには、何より先に、外食業界全体に力を持った人材を一人でも多育成するべきなのです。

『 日本人は物には金を使うが、目に見えないものには金を払わない 』 といわれています。

ちょっとしたデザインの違いで、百万 二百万余分にかけてしまうのに、店長育成のための五万 十万の金を出さない。売上、利益に直結するのはどちらかと考えれば、その価値は比較にならないことなのに、モノが伴わないとついつい惜しんでしまう。恥ずかしながら私もこの失敗はよくやっていました。

しかし、これだけお金を掛けて、すごいハードを投入してきても、相変わらず「不振」といわれているのですから、そろそろ新しい社会背景における教育インフラの整備、という目には見えずらいモノへシフトすべきではないでしょうか。

外食業界が不振脱出するための一つ目のポイントは、

『 外食人が自らの実力を的確に診断する方法と、短絡的な周辺情報に左右されない判断力を身に付ける事が出来ように学び、更に実力のある外食人を育成する本物の教育インフラを整備すること 』

です。

二つ目のポイントは、第4回で・・・



松尾 満治

松尾 満治

九州・佐世保の高級レストラン「ふらんす亭」にて 1年間見習いを経験した後、26歳のときに東京・下北沢のビル地下1階に10坪の「ふらんす亭」を創業。20年後の平成12年にフランチャイズ化して、「ふらんす亭」の他に居酒屋、イタリアン、ラーメン、カフェなどの業態で直営店75店舗・FC100店舗を展開(2006年8月時点)。外食に従事して30年を期に「ふらんす亭」を譲渡、外食で夢を追う人を対象とした「松尾本気塾」を今年6月から開催する。また、「ふらんす亭」を運営する株式会社フードデザインの顧問として、社員研修に携わっている。

◎松尾本気塾 準備室 03-5378-2480

※松尾氏には、4時間にも及ぶロングインタビューにご対応いただき、起業を志した少年時代、修業時代、1号店の初期など数多くの貴重なお話もいただきました。その内容は、後日、起業のすゝめの中で、改めて紹介をさせていただく予定です。

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