消費者に魅力を提供できなくなり、低迷期にあるといわれる現代の外食業界。業態としての限界、人材・サービス・モラルの低下など数々の問題が指摘されますが、その本質にある解決すべき課題とはどのようなものでしょうか。今回は、業界に深く関わる3人の覆面座談会により、その課題を洗い出して、どうすれば市場規模の低下を打破できるのか探ってみたいと思います。各種のデータをもとに業界を分析するT氏、外食チェーン内部から現場を見続けるR氏、外食企業の問題解決に尽力するコンサルタントのC氏の赤裸々な意見や考えを聞き出してみます。司会進行は、外食ドットビス編集長・齋藤栄紀が担当します。
【司会】 他にも、外食産業の問題点として考えていることはありますか?
【T氏】 問題提起したいのは、「ファミリーレストランは必要か?」ということです。
【C氏】 僕はもう使命は終ったと思います。今までと同じ形のファミリーレストランだったらいらないですよね。
【司会】 消費者の意見として、大手チェーンのファミレスには何も求めていないかもしれません。特別な味やサービス、感動を求めに行くならチェーン店を外して探していますから。
【T氏】 そうすると、やはり、非日常的な外食には行きたいというニーズはあるわけですよね。しかし、非日常だったのが、日常になってしまったので感動を得られないのは当たり前のことです。それをもう一度復活させるために、何をすべきかというのが課題なのです。
【司会】 ファミリーレストランは高いというイメージを持っている人もいます。例えば、80~90万円のトヨタ車をある個人が作って売ったら、数百倍になるはずです。個人レストランで1000円だったら、大手ファミレスは300円で出すといった効率化を徹底すればニーズがあるように思います。
【T氏】 それが、消費者に否定されつつあるのかもしれません。ファミレスに安さだけを求めるのではない。TPOで外食店を使い分けるのが、より顕著になっているのかもしれません。
【C氏】 ファミレスのレシートには、一組あたりの人数というのが入っていますが、全盛期はそれが平均3人以上でした。今は2人を割っています。もう、ファミリーのためのレストランではなくなっているんです。
【司会】 ファミレスがなくなると、家族でどこに食事に行けばいいんですか?
【C氏】 そんなに頻繁に家族で食事に行ってますか?
【司会】 はい、行きますね。
【C氏】 それは、まだ家族崩壊していない証拠ですね(笑)。
【T氏】 超核家族化が進んでいるわけです。子供がいない夫婦が、「ファミリーレストランでステーキでも食べよう」なんてことは、今の時代には絶対にないですよね。昔はありましたけど。そういう社会になっているのだから、少なくとも昭和45年の考え方を続けているファミリーレストランは不要ですよね。
【司会】 ロイヤルホストなどはシルバー層に向けた実験をしています。そういう生き残り方もあるのではないでしょうか?
【T氏】 国の補助事業で「共食」という実験しています。おっしゃるように、高齢化社会になった時にファミレスが生きてくる可能性はあります。ただ、それを産業として利益を出す方法を考えなければいけないでしょう。
【司会】 そうなると、どうあっても外食企業には利益追及が必要で、今の大手外食企業の方向性は間違っていないと思えるのですが…。
【T氏】 食というアイテムを使っていること、直接消費者と会っていることが問題になってくるわけです。直接消費者と会うというのは、小売店も同じでビジネスモデルが確立しています。昔の外食産業は、その小売理論から引用する面が多かったのです。ところが、それだけでは成り立たなくなってきているので、漠然とした言い方ですが、新たなビジネスモデルを作って、産業化の発展を図らなければいけないのです。
【司会】 問題点がいくつかありましたが、最後に、どうすれば外食産業の未来が明るくなるかお話しをいただきたいと思います。
【C氏】「食」を機軸として、その範囲が広がっていくのでしょうね。中食との融合、病院食や介護食、さらにT氏が話された「共食 」、話題の「食育」といった分野、さらに海外での展開も視野に入るでしょう。感動を創出できるフォーマットの誕生によって、今の外食マーケットがどんどん再構築されていくのだと思います。
【T氏】 これからの大きな課題は、やはり少子高齢化社会への対応になってくるでしょう。そのビジネスモデルを早めに考えなければいけないと思います。一般的な製造業は、人が減っても生産性が出ればいい。しかし、外食産業の企業は、すでに相当に生産性を上げています。その中でどのようなビジネスモデルを構築するかにかかってくるでしょう。
【司会】 それは、今行われているビジネスの延長線上にあるものですか?
【T氏】 延長線上にもあるし、まったく別個ともいえるでしょうね。ワタミのように、食を考えながら介護事業を行うのもひとつのモデルかもしれません。ただ、外食率はまだまだ若い人の方が高いです。そこをメインのターゲットにしながら、高齢者も対象にしていくとなると、外食企業単独では難しいのではないかと考えます。スーパー銭湯とコラボをするなど、異業種との協力が不可欠になってくるのではないでしょうか。