業界人覆面座談会「外食産業の今を切る!」 ~現状を打破する外食企業の方向性とは?~

業界人覆面座談会「外食産業の今を切る!」現状を打破する外食企業の方向性とは?

消費者に魅力を提供できなくなり、低迷期にあるといわれる現代の外食業界。業態としての限界、人材・サービス・モラルの低下など数々の問題が指摘されますが、その本質にある解決すべき課題とはどのようなものでしょうか。今回は、業界に深く関わる3人の覆面座談会により、その課題を洗い出して、どうすれば市場規模の低下を打破できるのか探ってみたいと思います。各種のデータをもとに業界を分析するT氏、外食チェーン内部から現場を見続けるR氏、外食企業の問題解決に尽力するコンサルタントのC氏の赤裸々な意見や考えを聞き出してみます。司会進行は、外食ドットビス編集長・齋藤栄紀が担当します。

第4回 外食産業は40歳定年制を採用すべき!?

第4回 外食産業は40歳定年制を採用すべき!?

【司会】 ここまでのお話しだと、外食業界は、産業化を目指してはいけないようにも思えてきますが…?

外食産業は40歳定年制を採用すべき!?【C氏】 さらに強い産業として成長すべきです。産業化してくれたお陰で、IT関係をはじめ、今まで外食産業とは無縁と思われた他業界の人が参入してきて、手を差し伸べてくれるわけですから。そこから、新たなビジネスチャンスも生まれてくるのです。

【T氏】 それに、外食業界が産業化したからこそ、労働集約的産業として労働市場を創造してきました。景気が良くなり他の選択肢が増えて、今は人手不足になっていますが、昔は働く場所が少なかった。外食の産業化によって、チェーン理論で店舗が増えて働く場を創造してきたのは、大きな功績です。

【C氏】 社会的な人手不足の時代に、FR御三家(すかいらーく・ロイヤル・デニーズ)が次々と上場したおかげで、優秀な人材が確保できたということもありましたが、そこから外食企業が変わったようにも思います。外食で働きたいという人の原点というか、ベーシックなところには、将来的に独立したい、自分の店を持ちたいという願いがあるはずです。それまでは独立希望者が多かったのですが、あの時代から、学生の志望動機が 「安定しているから」が目立つようになりましたね。採用する方からすれば、驚くような変化だったでしょう。

外食産業は40歳定年制を採用すべき!?【T氏】 他の業界で産業化が進む場合、そこにいる会社では、日本特有の終身雇用制が一般的です。ところが、外食の場合は終身雇用だと困るんです。店舗数が増えると社員を増やさなければいけないのですが、ある程度の規模になると、出世が店長止まりになってしまうのです。店舗が少ない時代の店長は、ステータスがありましたが、いまは2~3年で店長になれますからね。人事構成上、他の手段を考えなければならず、発案されたのがFC制でオーナーになってもらう方法。ところが、株式公開している企業の社員は安定性を求めているので、困ってしまうわけです。給与面でいくと、他業界の大企業は50歳くらいでピークを迎える。しかし、外食は40歳でピーク。しかも低い低いピークです。企業側としては、「40歳位で独立して!」と言いたいでしょうね。

【司会】 お客さんに夢を云々という以前に、社員に対して夢を与えられなくなっているのですね。

【T氏】 だから、ES(EmployeeSatisfaction、従業員満足)をしっかりしなさいと、コンサルタントをはじめとする誰もが指摘しています。それによって初めて、CS(customer satisfaction、顧客満足)が向上するんです。

【司会】 そうすると、Rさんは今が給料のピークという感じですか?

【R氏】 そうかもしれないですね(笑)。外食企業にいると、店長のステータスは非常に低いと感じますね。

【T氏】 昔は5~6年掛けて、やっとなるものだったから、もう少しステータスがあった。今は、本当にすぐに店長になってしまいますからね。

【司会】 だから、深夜に×××してしまうような輩が出てきてしまうわけですね…。外食業界に進む人は、一旗上げようという人が多いように思うのですが。

【T氏】 昔は、確かにそうでした。現在、外食の大手企業に行こうという人は安定性を求めているでしょうね。

外食産業は40歳定年制を採用すべき!?【C氏】 根底には、飲食業がおもしろそうだと思っていたり、接客に興味を持っているのかもしれないですが、個人店で修行するといったような苦労はしたくないという考え方かもしれないです。

【T氏】 一部上場に入ったんだから、それでいいじゃん!という感じでしょうね。昔は、そば屋に丁稚奉公に行ったら給料なんかなかったですからね。大みそかなどに帰省する際に、小遣いをもらえる程度。その代わり、暖簾分けをする時には、親方の地位が保証されて、充分な準備金を出してもらえる。だから、自分の才覚でやっていこうという気概になる。いまは、そんな情熱を持った人は飲食業界に来ないのかもしれないですね。



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