消費者に魅力を提供できなくなり、低迷期にあるといわれる現代の外食業界。業態としての限界、人材・サービス・モラルの低下など数々の問題が指摘されますが、その本質にある解決すべき課題とはどのようなものでしょうか。今回は、業界に深く関わる3人の覆面座談会により、その課題を洗い出して、どうすれば市場規模の低下を打破できるのか探ってみたいと思います。各種のデータをもとに業界を分析するT氏、外食チェーン内部から現場を見続けるR氏、外食企業の問題解決に尽力するコンサルタントのC氏の赤裸々な意見や考えを聞き出してみます。司会進行は、外食ドットビス編集長・齋藤栄紀が担当します。
【司会】 産業化の過渡期では、どういう問題が起こっているのでしょうか?
【T氏】 ファンダメンタルがしっかりしていれば、マネジメントができる人なら誰でもいいということは、いま実証されているます。大手外食企業のチェーン理論がしっかりしているからです。ところが、一端その会社が傾き始めると、その人たちが建て直せるかというと疑問ですね。現場から育ってきた人が上に立った場合は、カリスマ的なものがあって、建て直せるかもしれません。一例としては、幸楽苑がそうですね。代替わりしてガタガタになった時にその人々では建て直せず、オーナーが社長に戻って建て直している。現場の苦労を知らない人が上に立って、いざという時に何もできないとなると、本当に産業化だけで良いのか?という疑問が生じるのです。
【司会】 外食企業は、大きくなることを求めるべきではないのですか?
【T氏】 今の大手外食企業は、オーナー社長が爪に火をともしながら産業化に向けて頑張ってきました。その一方で、数店舗だけで利益を出している人もいます。大きな企業にして産業化を目指す人がいれば、中小でいいという人もいる。それは、社長の志の違いであって、どちらがいい悪いの話ではありません。企業の体がでかくなってくると、そう簡単には動かせない状況になるのも確かです。それが産業化ということですけれど、食に関して言うと、大企業にするばかりでいいのかという問題になる。いまの外食は、チェーン理論が否定されつつあるかもしれません。規模のメリットはあるでしょうが、画一的なメニューで、どこにいっても同じ味ということに対して、消費者が嫌気を差し始めている。それを打破しようと、大手が中堅・中小のやり方に戻っています。チェーン店も店舗ひとつひとつは、中小と何ら変わりません。お客さんが減った、今この時代にどうすべきが問われている気がします。私は、外食のマーケットというのは、人口は減る一方ですから、今後それほどは伸びないと思っています。段々と業界再編が行われていくでしょうが、ドラマチックに変わるのではなく、まず、多過ぎる店舗が淘汰される。そして、適性規模の店舗数になった時から、再び外食産業の変化や進化が始まるのではないかという気がしています。
【司会】 どういった変化や進化が起こるとお考えですか?
【T氏】 高齢化社会へのサービスということも関係してくるでしょうし、ますます、企業間格差が広がるように思います。産業が発展するには、過去の店舗が失敗したり、成功したりしてきたことを活かさなければいけません。そうしないと、一からまたやり直すことになります。現在は、どこかでそれを踏み違えたのかなと感じることもあります。すかいらーくの MBO ( 自社買収 ) だって、「株主の顔色ばかり見ていてはダメ」という戒めも目的のひとつかもしれません。いまの外食の最先端というのは、目まぐるしく変わっています。しかし、株式を公開していると、利益確保が大前提になって一つの失敗も許されない。現状を打破するために、株式を非公開にする企業はこれから多くなってくるでしょうね。