緊急企画:晴れのち薄曇り?~外食産業市場規模を考察する~ 外食総研 堀田宗徳氏 独占インタビュー

外食総研 堀田宗徳氏 独占インタビュー 外食ドットビズ

今年も4月27日に≪外食産業総合調査研究センター(外食総研)≫が平成18年度の外食産業市場規模推計値(外食市場規模)を公表した。当サイトでも5月1日に掲載した通り、9年連続前年実績を下回り外食市場規模は24兆3,592億円となった。このまま外食産業は縮小の一途をたどるのか?それとも今後V字回復が期待できるのか?
今回外食ドットビズでは、緊急企画として外食総研の堀田宗徳主任研究員に、外食市場規模のトレンドから見える現状と将来について独占インタビューを行った。

第2回 後編:家計調査の「一般外食」は昨年の11月よりプラスに転じています

後編 家計調査の「一般外食」は昨年の11月よりプラスに転じています

今後の外食業界のトレンドについてのお考えをお教え下さい

まず、海外との関係からお話します。

過去多くの米国外食企業が、日本の企業と手を組んだりして進出してきていました。その結果、「ハンバーガーのマクドナルド、フライドチキンのケンタッキーフライドチキン、ドーナツのミスタードーナツ」等が、それぞれの業態でガリバー的な位置を占めています。この観点から見ますと、海外の外食企業にとってガリバー的な存在になれるチャンスがあるわけですから、“美味しい”マーケットと映っているのではないでしょうか。

ただ、昔なら非日常的という理由だけでも受け入れられて来たと思うのですが、現在ではどうでしょうかね?一つの鍵は、「日本の消費者は“食”にうるさい人たちが増えてきた」事にあると思っています。

今後の外食業界のトレンドについてのお考えをお教え下さい例えば、昨年末に「クリスピー・クリーム・ドーナツ」が新宿サザンテラスにオープンしました。ドーナツを買うために2時間も並ぶと言う盛況振りです。これは長時間並んでドーナツを食べると言うような非日常性が受けていると思うのです。これに対してミスタードーナツは今や日常的なお店と私は受け取っています。だけど美味しい。だから私はミスタードーナツが根強く支持されていると思うのです。また、クリスピー・クリーム・ドーナツが多店舗展開できるのか?どの様な形で出店していくのか非常に興味があるところです。

日本にとって海外、特に欧米系の外食店の魅力はなくならないと思いますが、日本の“食”にうるさい消費者がどう見るか、受け手側の日本企業の展開方法はどうかなど見極めが必要だと思っています。

一方、最近の日本の外食企業の目は、東南アジア方面に向いているように感じます。この地域への出店も益々増えていくのではないでしょうか。これは、1970年代当時、日本に米国型チェーン理論が入ってきましたが、今度は米国型チェーン理論に日本の考え方を入れたチェーン理論で広げようと言う考えが背景にあると思われます。当センターでも東南アジアの「状況」「マーケット」「条件・規制」等を知りたいと考えておりますが、カテゴリーの違い、調査コストの問題などでなかなか進んでいないのが現状です。

また、近頃感じるのは、業種・業態で区分する時代は終わったのではないかと言う事です。

今後の外食業界のトレンドについてのお考えをお教え下さい例えばファミリーレストラン(FR)ですが、近年ランチは取れるが、ディナーが取れなくなって来ました。これは家族での来店が減り、少人数での利用が増えてきたからです。これに呼応するように、農水省とロイヤルやジョナサン等の外食企業が協力して、「共食」と言うキーワード で新しい試みが始まっています。一人暮らしのお年寄りなど、一人で食事をする機会が多い人達が、店舗の中で、皆でワイワイがやがやと楽しく食事を取れるような環境を提供するプロジェクトです。これは、和・洋・中と幅広いメニューを取り揃えているFRの強みも活かせます。

反面、今までのFRのメニューの様に、多くの品数を多種多様に揃えて、「お好きなものをどうぞ」という形は一般消費者に支持されなくなってくるのでしょうね。より専門店化されていくのではないでしょうか。

ファーストフード(FF)業界に目を向けてみると、洋食FFではマクドナルド以外は厳しい状況が続くのではないでしょうか。米国で生れたフォーマットのファーストカジュアルも、なかなか定着していません。

一方和食FFでは、牛丼関連は今後よくなっていくだろうと見ています。最近立ち食いそばに女性客が増えているようです。FFではありませんが、回転寿司を含めて女性客をどの様に取り込んでいくかということが重要な要素になりそうです。

居酒屋は競合の激しさが増すでしょうね。ただ、景気が回復してきた事で、個人だけではなく、法人交際費の回復傾向からみると、企業ユースも増えていくのではないでしょうか 。料亭等で接待をしていた企業が、客単価の安い居酒屋を利用し出している傾向も見られます。

 

今後、どの様な外食企業が生き残っていくとお考えですか?

今後伸びる企業、生き残る企業は 「既存店対策をしっかり実行している企業」 でしょう。 外食企業の多くは、売上の確保を新規出店に依存しています。しかし現状では、既存店の落ち込みが激しく、新店の売上も「焼け石に水」の状態です。既存店を如何に活性化させていくかが、生き残り企業の条件でしょう。

今後、どの様な外食企業が生き残っていくとお考えですか?既存店対策はリニューアルもそうですが、積極的なスクラップも大事な要素ですね。リニューアルは単に改装するという事だけでなく、「新しい設備を設置する」といった機能面でのリニューアルが重要です。FF業態に見られるように、「24時間店の増加」や「アイドルタイムの集客化政策」など、時代のニーズに合致した対応が求められます。勿論、営業時間の増加は、人件費等の投資も必要なので、しっかりと投資対効果を見なければなりませんが。

 

最後に今年の外食産業市場規模の見通しについてお考えをお教え下さい

毎年多くの皆さんから「今年はプラスにしてくれ」と言われているのですが・・・(笑)、立場上なかなか明確な事が言えないだけではなく、数字も調整できなくて(笑)、申し訳ございません。

ただ、家計調査の「一般外食」は昨年の 11月よりプラスに転じています。また、全体の市場規模の推計値でも、ここ3年連続して減少率が1%以下で推移していますし、「飲食店」に限ってみれば昨年は1.5%増加しています。これは、消費者に直結した部分で見れば上向き、全般で見ても底を打っていると言ってもよろしいのではないでしょうか。もちろん個人的な見解ですが(笑)。ただ、1点気がかりなのが、6月にも予定されている増税です。この増税が消費者の購買心理にどの様な影響を与えるかが心配です。

今年の外食産業市場規模の見通しについて外食は GDPとの相関関係が強く、景気がよくなったり、可処分所得やこづかいが増えたりすると良くなる傾向があります。

『 このまま行けば良いのですが、増税等不透明感が残る 』ということでまとめさせていただきます。



堀田 宗徳

堀田 宗徳

1957年生まれ。1989年に農林水産省の外郭団体である≪財団法人外食産業総合調査研究センター(外食総研)≫に研究員として入社、99年に主任研究員となる。05年からは、関東学院大学人間環境学部および尚絅学院大学総合人間科学部で非常勤講師(フードサービス論)も務める。専門領域は、個別外食企業の経営戦略の分析、個別外食企業の財務分析、外食産業のセミマクロ的動向分析、外食産業市場規模の推計、外食産業に関する統計整備。フードシステム全集第7巻の「外食産業の担い手育成に対する制度・施策」(共著、日本フードシステム学会刊)、「外食産業の動向」「外食企業の経営指標」(いずれも外食総研刊「季刊 外食産業研究」掲載)など著作も多数あり。

徹底分析・外食産業の現状と未来への展望

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