飲食業経営のためのネット講座“労務管理者”必見!日本の社会保険制度を知る! ~飲食企業に重くのしかかる社会保険 -Vol.1 労災編-

飲食業経営のためのネット講座 労務管理者必見 日本の社会保険制度を知る 飲食企業に重くのしかかる社会保険 Vol.1 労災編

外食ドットビズ2周年記念特集の一環として、飲食業の労務管理に関わる問題を株式会社リーガル・リテラシーの黒部社長のインタビュー記事として掲載させていただいた。飲食に携わる、特に経営者の方にとっては、関心の高い問題のようで多くの反響を頂戴した。
巷でも、年金問題、後期高齢者医療制度(長寿医療制度)など社会保険にかかわる話題に事欠かない。そこで、外食ドットビズでは、再度黒部社長のご協力のもと飲食業における社会保険について講義形式で掲載させていただく。

第1回 社会保険について学びましょう

第1回 社会保険について学びましょう

黒部社長にご登場いただく前に、前段で、まず社会保険総論として、社会保険とは何か?と言うことについて述べてまいります。

まず、社会保険を語る前に、その大元である社会保障について知る事が必要です。

- 社会保障は、憲法で定められている “ 国民の生存権 ” の根拠

社会保障については、日本国憲法の第 25条に記されています。
では、実際に条文を見てみましょう。

日本国憲法
第三章「国民の権利及び義務」
第25条 【生存権、国の社会的使命】

  1. すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
  2. 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

つまり、日本国民が有する権利の一つである“生存権”の根拠となるものが社会保障なのです。

昭和 21年(1946年)に制定された憲法には、社会保障の具体的内容についての記述はなされていませんが、社会保障の制度については、昭和25年(1950年)に、内閣総理大臣の諮問機関である社会保障制度審議会が発表した「社会保障制度に関する勧告」中で以下のような勧告を出しています。

いわゆる社会保障制度とは、疾病、負傷、分娩、廃疾、死亡、老齢、失業、多子その他困窮の原因に対し、保険的方法または直接の公の負担において経済的保障の途を講じ、生活困窮に陥った者に対しては国家扶助によって最低限度の生活を保障するとともに、公衆衛生および社会福祉の向上を図り、もって、すべての国民が文化的社会の成員たるに値する生活を営むことができるようにすることをいう。

- 社会保険は、社会保障制度の一部門

上記の 「 社会保障制度に関する勧告 」 から、社会保険とは、社会保障制度の一部門であることがわかります。具体的には、病気やけが、分娩、傷害、死亡、老齢、失業など、国民が ” 健康で文化的な最低限の生活 ” ができなくなる懼れのある困窮の原因に対して、保険的方法によって、経済的保証の途を講じようとするものということが読み取れます。

飲食企業の為の社会保険講座 Vol.1 労務管理者必見!日本の社会保険制度を知る 飲食企業に重くのしかかる社会保険 労災編この 「 困窮の原因 」 とは、所得の減少や喪失、あるいは多額の出費をもたらすものであり、個人及び世帯の生計が困難に陥る危険をはらんでいます。社会保険は、これらの原因の発生に備えて、保険的な手法で、困難に陥る事を未然に防止しようとするものです。

では、『 保険的方法 』 とはどういう事か説明しましょう。

保険とは、「 偶然に発生する事故(保険事故)によって生じる財産上の損失に備えて、多数のものが金銭(保険料)を出し合い、その金によって事故が発生したものに金銭(保険金)を給付する制度 」 の事を言います。ちなみに保険には国や自治体などの政府が運営する公営保険と民間企業が運営する私営保険があります。

公営保険には、社会政策ないしは社会福祉としての社会保険と経済政策としての産業保険があります。一方民間保険には、人の生死に関わる生命保険と一定の偶然の事故による損害を填補する損害保険があります。

さて、上記に「多数のものが金銭を出し合い」とありますが、誰が金銭を出すのでしょうか?

飲食企業の為の社会保険講座 Vol.1 労務管理者必見 日本の社会保険制度を知る 飲食企業に重くのしかかる社会保険 労災編例えば、社会保険の一つである健康保険の場合、“国民皆保険 ”とされ、生活保護の受給者などの一部を除く日本国内に住所を有する全国民(及び日本に1年以上在留資格のある外国人)が強制的に加入するように定められています。つまり、一部を除く全国民と一部の外国人が、金銭(保険料)を出す事と義務付けられているのです。このことは是非留意していただきたいと思います。

- 社会保険には、「健康保険」「年金」「雇用保険」「労災」「介護保険」の5つがある

では、社会保険にはどの様なものがあるのでしょうか?現在以下の5つに分類されています。

  1. 健康保険
  2. 年金
  3. 雇用保険
  4. 労災
  5. 介護保険

今回は、一般論を述べてきましたので、正直皆様にはとても退屈だったと思います。

次回以降は黒部社長にご登場いただき、具体的にわかりやすく、飲食業に携わられている方全員に役に立つ情報をお届けしてまいります。



黒部 得善

黒部 得善

http://www.ll-inc.co.jp/

株式会社リーガル・リテラシー
代表取締役社長
1974年 愛知県名古屋市生まれ。
1997年 明治学院大学法学部法律学科卒。
同年社会保険労務士試験に合格。
港区橋本定人事務所、目黒区志村幸彦事務所、渋谷区大野実事務所にて会社が抱える多くの労務問題を経験、一旦社労士業界を離れ、(株)日立国際ビジネスにてERPコンサルタントに従事。
黒部労務リスクマネジメントオフィスを経て、現(株)リーガル・リテラシー主宰。
趣味は、フライフィッシング・動物の飼育。

株式会社リーガル・リテラシー 沿革

2002年9月 東京都社会保険労務士会会員 黒部労務リスクマネジメントオフィス設立
同年12月 渋谷区神宮前に株式会社リーガル・リテラシー設立
2003年4月 本社を渋谷区円山町に移転
同年10月 社会保険労務士法人リーガル・リテラシー設立
2005年11月 2,850万円に増資

文: 齋藤栄紀

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