シリーズ 食の危機を乗越える ~外食産業が進む道を考える~ 食材原価高騰の時代を活きるVol.3 食材高騰に勝つ!大手食材卸の提案~第149回 久世食材セミナーから

シリーズ 食の危機を乗越える 外食産業が進む道を考える

原油の高騰、食料の高騰そして人件費の高騰と外食産業を取り巻く経済環境は日々厳しさを増している。更に乳製品、菓子などの賞味期限切れ食品、牛肉、鶏肉、うなぎなどの生産地偽装食材などといった消費者の期待を裏切る不祥事が社会問題化するなど飲食業従事者に逆風は吹き止まない。
外食産業の活性化のため、外食ドットビズは関係者の方々の考えを中心に、この様な厳しい環境下で飲食業に携わる方々に少しでもお役に立つ情報を発信していく事を目的に『シリーズ 食の危機を乗越える』と題し、不定期に掲載していく。

第2回 食材高騰に勝つ!~食材高騰の対策を探る

第2回 食材高騰に勝つ!~食材高騰の対策を探る~

前回に引続き中島氏の提案について述べて行きたいと思います。

商品開発力は“パクリ”力

次に、(2)の 「 新メニュー、ポーション変更によって原価率を下げる 」 私は “ 目くらまし ” と呼んでいます(笑)。これも個店型や専門店型が採る方法です。

食材原価高騰の時代を活きるVol.3 食材高騰に勝つ!大手食材卸の提案~第149回 久世食材セミナーから「 新メニュー、ポーション変更 」 というのは、格好良く言えば商品開発力、簡単に言えば “ パクリ ” 力ですね(笑)。私の店も個店ですから色々なところでメニューを参考にさせていただいています(笑)。では、パクリのコツをお教えしましょう(笑)。

•  近所のメニューは参考にしない
•  チェーン店のメニューは参考にしない

この 2つです。では、どこのメニューを参考にするのか?私は、大阪のお店からいただいております(笑)。大阪に行くと参考になるメニューが物凄く多いですよ。

チェーン店型はプレゼンテーション力で客単価アップ

最後に 「 売上を上げて、利益額を増やす 」 です。これは、原価率が上がっても、利益額が増えれば良いじゃないかという考えですね。売上を増やすには、“ 客数を増やす ” か ” 客単価を上げる “ かのどちらかです。

チェーン店舗型は、表現力で “ 客単価を上げる ” ですね。

いいサンプルがあります。デニーズです。駐車場入口の看板の下。一番目立つところに 「 22品目値下げ!」 って出しているんですよ。このご時世に値下げですよ。巧いですねヨーカドーグループは。

食材原価高騰の時代を活きるVol.3 食材高騰に勝つ!大手食材卸の提案~第149回 久世食材セミナーから私はよく覚えているんですが、消費税率が 3%から5%に上がった年の12月の新聞を。流通業は年末商戦の真っ只中ですよね。そこでイトーヨーカドーが採ったのが “ 消費税5%還元セール ” でした。これで年末商戦は一人勝ちだったのです。

※注:以下 9月のメニューですので、現在とは若干異なるところがございます。

値下げメニューは、メニューブックに “ 値下げしました ” と書いてあります。

まず、サラダ。コブサラダではなく、「 コブ料理長の賄いサラダ 」。よく見ると変な値下げですよね。コブ料理長って誰よ?見たいなね (笑)。それと、「 かつ丼とかけうどん 」 1,280円。よくよく考えると高いんですよね。かつ丼と素うどんで1,280円ですよ。近所のとんかつ屋のとんかつ定食は980円なんですけれど 「 やっぱ専門店は高いよな 」 と私は思いますから。でも、結局これを頼んじゃったんですね。まわりには “ 値下げしました ” 印がないもので思わず(笑)。それの飲み放題のドリンク280円で、合計1,560円。ランチで1,560円ですよ。600円の弁当が高いといっているこのご時世で(笑)。この ” 値下げしました ” 印が客単価を上げる方向に誘導しているなと思いました。

食材原価高騰の時代を活きるVol.3 食材高騰に勝つ!大手食材卸の提案~第149回 久世食材セミナーからそれとデザートね。「 選べるフレンチブリオ 」 380円。まずアイスクリームかソルベが選べるんですよ、7種類から。それからソース、ブルーベリーソースにチョコソース、6種類から選べるんですね。これとこれでデザートの出来上がり、みたいなね。これは主婦に受けますよね。アイドルタイムにいい商品だよな、と思いましたね。じゃ、主婦にどうやって訴求するのか?コンビニに秘密があるんですよ(笑)。セブンイレブンのレジのところにデニーズのドリンク無料券がおいてあるんです。主婦はコンビニに行きますよね、そこでデニーズの無料券がもらえる、そうしたらデニーズに行っちゃいますよ。

個店、専門店はコミュニケーション力で客単価アップ1「これでご注文のお品は全てお揃いですね」で終わらせない!

個店や専門店はどうするか?例えばラーメン屋さん。「 これでご注文のお品は全てお揃いですね? 」 とラーメンを出すじゃないですか。これはもったいないですね。この言葉でお客様との会話は終わってしまいますよね。そうではなくて 「 お客さん!煮たまごが入っていないんですけれど今日のはめちゃくちゃ美味しくできていますよ。僕が作りましたから! 」 と言ったら何人かのお客様は 「 そう、じゃあもらおうかな 」 と言ってくださいますよ。これが結構馬鹿にならないんですね。どういうことかというと

食材原価高騰の時代を活きるVol.3 食材高騰に勝つ!大手食材卸の提案~第149回 久世食材セミナーから個店で 1日に200食売るラーメン屋さん。オーナー一人でやっているから休みも欲しいですよね、5日位は。25日営業です。煮たまごの売価100円、光熱費や人件費は追加でかかりませんから原材料費は10円です。つまり利益は90円ということです。お客さんにお勧めして5人に1人が煮たまごを買ってくれたら、40年後にどうなるか?

(100円-10円) × 200人 × 1/5人 × 25日 × 12ヶ月 × 40年 = 43,200,000円

40年間で4,300万円だったら公務員の退職金より多いですよ。40年間一生懸命働いたら煮たまごで退職金がまかなえちゃうんですよ(笑)。貯めておけばの話ですけれどもね。その時に使っちゃうからなかなかうまくはいきませんけれどもね(笑)。結局 「 40年間大変だったなぁ 」 ていうことになっちゃうと思いますが(笑)。

個店、専門店はコミュニケーション力で客単価アップ2 ラストオーダーは利益の宝庫

私のお店は個店の居酒屋です。月商は500万円で最終利益は30万円。少ないでしょ(笑)。この内ラストオーダーの売上が20万円なんですね。多いか少ないかは皆さんの判断にお任せいたします。

ただ、ほとんどのお店では 「 ラストーダーです 」 「 ラストオーダーになります 」 といかにもこれ以上注文をしてくれるなという雰囲気なんですよね。それで、ラストオーダーがないと 「 はー良かった 」 と 95%の店長が思っています(笑)。この店長たちはラストオーダーが物凄く利益を生むことを知らないんですよ。

食材原価高騰の時代を活きるVol.3 食材高騰に勝つ!大手食材卸の提案~第149回 久世食材セミナーから私のお店の場合、原材料費、人件費、光熱費等の変動諸経費を合わせて約70%です。ごく平均的だと思います。500万円で得られる営業利益が150万円。家賃、リース料、返済等の固定費が120万円ありますから、そこから引くと最終利益が30万円になります。先ほどラストオーダーで20万円売り上げると申しましたが、これにかかる費用、人件費はその日のスタッフですから追加ではかかりませんね。光熱費はその日も営業しているので追加ではかかりませんね。かかるのは原材料費だけなのですよ。原材料費が25%です。つまり75%の15万円が利益になるわけです。全体が30万円でしょ、それに対してラストオーダーが15万円。うちの女の子一人が 「 社長行ってくるね!」 と言ってホワイトボード片手に、お客様のところへ行って、愛嬌良く 「 お客様ラストチャンスでございます 」 といいながらラストオーダーを一生懸命取ってくるんですよ。10人がかりで一生懸命働いていても、女の子一人で利益額の半分を稼いじゃうんですよね(笑)。

このようにお客様を捕まえるためには、コミュニケーションが非常に重要になってきます。インターネットが普及していますが、あくまでもきっかけを作ってくれるだけです。そこからお客様を取り込めるか取り込めないかはコミュニケーション力になってくるのです。厳しい社会情勢が続きますが、是非会話とハートでいいお店を作っていきませんか?本日は、誠にありがとうございました。



株式会社久世

株式会社 久世

http://www.kuze.co.jp/

事業内容 外食産業に対する業務用食材の卸売業務等
沿革 昭和9年 久世商店を創業
設立 昭和25年1月 株式会社久世商店を設立
所在地 東京都豊島区東池袋二丁目29番7号
資本金 3億225万円(平成21年1月現在)
売上高 428億4736万円(平成19年3月期連結)

詳しいレシピの問い合わせは、株式会社久世メニュー開発課まで ≫

文: 齋藤栄紀

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