米国厨房業界に見る衛生管理思想と発達
米国加熱機器メーカーを大別するとフライヤー郡では Frymaster社 や Pitco Frialator社。ケトル類では GROEN社、Cleveland社 となり、一般加熱機器では VULCAN社、BLODGETT社、Toastmaster社等がある。移動保管機器では、Carter-Hoffmann社、洗浄機器郡では HOBART社、Champio社となり、一般換気システムでは GAYLORD社が代表される。
もちろん、日本同様、加熱機器メーカーでは、スチーム&オーブンを含む各種調理機器は製造されている。このように北欧圏のブロック固定設営方式と違い、米国では日本同様、調理やオペレーションの組み換え時、厨房機器の入れ替えは容易となる。だが異なるメーカー間では機器間のジョイント思想は発達していない為、日本同様、調理時の油滴や食品屑は機器の設営隣接面に付着する。
しかし、米国内でも厨房の衛生環境を維持する工夫はされてきた。その一例ではユーティリティー・ディストリビューション・システム(UDS)という設備分配装置である([図3])。
これはガス、電気、給水等の設備供給を一箇所に纏め、各機器への二次側接続を脱着式カップラー接続具でジョイントする方式。清掃時には接続部を取り外して、作業員が機器の移動を行なう。機器はキャスター仕様となり、清掃時では機器を移動できるため、隙間や床面に落ちた油や食品屑を容易に清掃出来るので、衛生環境が維持できる厨房環境となる。
全体的な設営方針として、米国では National ・ Sanitation ・ Foundation (NSF)、Underwriters Laboratories Inc. (UL) 等、独自に機器筐体および設備設営指針ガイドラインが布かれている。
一方、北欧圏、特にドイツ国内では DIN(ドイツ規格協会) といった厨房機器の構造、能力、衛生環境面で安全性や衛生環境を維持する為のガイドラインがある。NSF、DIN ともに、衛生環境に留意した構造や機能、設営基準を設定し、毎年その規定内容に関しては見直しが行われている。
我々が関与したユニバーサルスタジオジャパン(USJ)での料飲での設備設営思想もこのNSF基準を最低条件として採用。またUSJセントラルキッチン(CPK)計画では、船の衛生基準 USPHS(United States Public Health Service ; 米国公衆衛生局)が管理する Vessel Sanitation Program(VSP) “ 客船建造ガイドライン ” に含まれる施工思想も採用した経緯がある。日本では、日本厨房工業会が板金製品も含んでサニテーション保持を考慮した設営基準を作る働きかけは行っているが、現状としては、各メーカーが自社で基準を設定して、機器製造や設置環境を構築しているのが現状である。
伊藤 芳規(いとう よしき)
1960年 福岡県出身。信州大学大学院(生命機能・ファイバー工学)。大光電気系列社にて店舗用照明デザインを学ぶ。北沢産業に入社、厨房関連設備設計に従事する。その後、大日本塗料照明部 ニッポ電機にて照明デザインに参加。88年ツカモト&アソーシエイツ事務所(T&A)に参加。多数の飲食施設プロジェクトに従事。92年エーエフディーコンサルタンツ(AFD)設立に参加後、98年(株)シニリトルジャパンに入社。(現)株式会社ループコンサルティング 代表取締役。
株式会社 シニリトル ジャパン
執行役員 / チーフコンサルタント
Cini・Little Japan、Inc.
Executive Officer FCSI (Food Service Consultants Society International) Professional Member
感性工学会 フードサービス研究部会 副会長
電化厨房フォーラム21 厨房設計部会 会長
著書、寄稿
・Vessel Sanitation Program (船舶サニテーションプログラム運用マニュアル) 翻訳 (日本外航客船協会) ・飲食店のキッチン計画・飲食店のオープンキッチン計画 (商店建築 共著) ・飲食店舗設計計画の設備改善(経済調査会)、建築設備と配管工事、月刊食堂、飲食店経営・月刊厨房寄稿、食品産業新聞、他多数。
文 : 伊藤芳規