厨房機器の今と未来を知る ~厨房機器の進化と発展~ 株式会社シニリトル ジャパン(現ループコンサルティング代表取締役) 伊藤芳規氏

厨房機器の今と未来を知る 厨房機器の進化と発展第一章:北欧と米国そして日本の厨房機器思想と設備環境の動向

第1回 欧州と米国に見る司厨者の思想と設備環境のながれ

欧州と米国に見る司厨者の思想と設備環境のながれ

欧州と米国に見る司厨者の思想と設備環境のながれ本稿では、様々な外食事業の発展する中、外食の仕組み作りの中核をなす厨房と関連の周辺環境を捉え、概要を述べて行きたい。国内の厨房産業では、戦後の外食繁栄と共に発展してきた。

ホテル業界以外、国内厨房文化は生業家業を中心とした台、流し、氷蔵、コンロ、焼き物器で成り立つ和食料理が中心となる設備構成であった。だが、戦後の米国を中心とする各種外食文化が輸入、模倣され、同様にホテルが主となり活用されていたレンジ、ブロイラー、スチーマー等も一般外食業へ流用される経緯となる。現在、国内厨房の構成では、戦後の米国外食文化と設備技術の影響を受ける経緯もあり、各種調理機器は専門メーカー毎に製作。飲食業態ごとに必用な機器、板金製品類を単品毎設置する、設営シナリオとなる。

一方、北欧圏での外食、特にホテル系では日本同様、縦社会の技術伝承の意識が強く、徒弟思想の名残は生きている。厨房機器の構造では、米国の機器個別製造に対し、ホテル特有の囲み式ブロック(アイランド)設営方式となる。料理を作る概念では同じである厨房でも、北欧、米国では設備の形態や設営思想が大きな違いがある。

一方、国内厨房環境では設営と機器製造思想では米国様式の模倣でありながら、司厨者の技術者思想では北欧圏の職人気質を併せ持つ環境と考えられる。以降では米国、北欧圏そして日本の厨房環境に関し、設備環境を構築するスタッフの特性や今後の厨房環境の発展動向を検討したい。

 

欧州と米国厨房機器の特徴

欧州圏における厨房設備事例では[図1]の写真の様に、中央には、レンジやフライヤー、グリドルといった加熱調理機器群が設置され、アイランド(機器が集まったブロック体)を形成しているのが特徴。

欧州と米国厨房機器の特徴 欧州と米国厨房機器の特徴

この厨房機器群はすべて同じメーカーで製作された厨房機器群となる。同一のメーカーで製造された機器群となり、機器固定のジョイントがしっかり組まれ、肉汁や、油滴などのしみこみ、菌の温床となる隙間がなく、衛生面で非常に優れた筐体構築となる。機器間ジョイントの方式は、各メーカーによってパーツディテイルが異なり、他メーカーとの機器連結は出来ない状況となる。

欧州と米国厨房機器の特徴対して[図2]の写真事例。こちらはアメリカンタイプの厨房設営例で、一般に壁面に厨房機器を並べるバックバースタイルと呼ばれる。米国の場合、厨房メーカーの多くはレンジはレンジ、フライヤーはフライヤー郡を製造する専業メーカーが多く、違うメーカー機器配置の場合、北欧機器群と対照的に機器を隙間なく設置する思想はそれほど発達していない。

北欧圏での飲食環境では、上記でも触れたが、フレンチレストランに代表される様に、従来の日本でいう徒弟制度が現在でも慣習としてある。ドイツ、スイス地区でのレストラン施設での見聞では、日本で言う和食料理店の板長と弟子たちの状況と同じ “ 目で見て盗む ” 技術習得方式が今でも基本となっている事を痛感する。その厨房棒環境では、厨房配置でもスタッフが囲んで調理する “ アイランド施工様式 ” 基本ベースであり、各役割の違う中、お互いの技術面を伝授し合う環境が機器の配置思想に反映されているのが特長となる。もちろん、基本的な調理作業指示やレシピは存在するが、最終的味付けや盛り付けは文字では表現できない領域として大事に温存している。

欧州と米国に見る司厨者の思想と設備環境のながれ一方、米国内では 1950 年代以降、モータリゼーションの発達と共に、ハイウエイの沿線上へコーヒーショップが出店し始めた。その中で発展した系列レストランが点在、拡大へ努力した、いわゆる “ チェーンレストラン ” の始まりとなる。

同系列店では同じ調理メニューを提供するのが基本であり、一定な調理手順を行なうマニュアル作りとオペレーション教育が組まれてきた。その経営者達の命題は、“ 稼げる時間帯に稼ぐ ” つまり、料理技術が未熟な人でもマニュアルに従い調理を行なえば、一定な料理を迅速に提供できる機能の追及を追い求めた。その努力の結果が米国の厨房配置構成に影響している。

迅速な調理工程、つまり、グリル、ソテー、フライ等の加熱工程が一連で出来る様に配置。振り返るとソースやガルニを迅速に盛り付け出来る機器配置のアッセンブル配置思想が発達したと言える。結果、北欧圏と対象的に、能力や性能を競う単品毎の調理機器が発達してきた要因となる。



伊藤 芳規(いとう よしき)

1960年 福岡県出身。信州大学大学院(生命機能・ファイバー工学)。大光電気系列社にて店舗用照明デザインを学ぶ。北沢産業に入社、厨房関連設備設計に従事する。その後、大日本塗料照明部 ニッポ電機にて照明デザインに参加。88年ツカモト&アソーシエイツ事務所(T&A)に参加。多数の飲食施設プロジェクトに従事。92年エーエフディーコンサルタンツ(AFD)設立に参加後、98年(株)シニリトルジャパンに入社。(現)株式会社ループコンサルティング 代表取締役。

株式会社シニリトルジャパン

株式会社 シニリトル ジャパン

http://www.cljapan.com/

執行役員 / チーフコンサルタント
Cini・Little Japan、Inc.
Executive Officer FCSI (Food Service Consultants Society International) Professional Member
感性工学会 フードサービス研究部会 副会長
電化厨房フォーラム21 厨房設計部会 会長

著書、寄稿
・Vessel Sanitation Program (船舶サニテーションプログラム運用マニュアル) 翻訳 (日本外航客船協会) ・飲食店のキッチン計画・飲食店のオープンキッチン計画 (商店建築 共著) ・飲食店舗設計計画の設備改善(経済調査会)、建築設備と配管工事、月刊食堂、飲食店経営・月刊厨房寄稿、食品産業新聞、他多数。

第1章 北欧と米国そして日本の厨房機器思想と設備環境の動向

文 : 伊藤芳規

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