地域に密着した営業で成果を上げている飲食企業のレポートも4回目となった。今回は大阪の酒販店がつくりあげたレストランを取り上げる。食の激戦地･大阪で、酒販店ながらの強みを活かし、工夫を重ねながらレストランを運営する株式会社赤坂の飲食店経営に対する取組を同社取締役竹中唯史氏にお伺いした。
－ 話がそれますが、竹中様が飲食店に携わるようになった経緯をお教え下さい。
父は大阪の出身なのですが、関東の方で飲食店をやっていました。現在でも栃木県の宇都宮市で串かつ屋を営んでいます。そのような家庭環境で育ちましたので、子供の頃からなんとなくその道に進むのかなと考えていました。
高校卒業後に調理の専門学校へ進学しました。自分でも変わっていると思いますが（笑）、高校時代から料理だけで勝負しようとは考えなかったのです。逆に自分の将来を考えた時に料理だけでは生き残っていけないなと思っていました。
高校時代というと今から15,16年前のことでしたが、飲食業を大きく分けると、画一的で数値やハードに強く経営に特化した大手チェーン型と個性的でソフトが強く現場主体的な個人店型というのが当時の一般的な分け方でした。さて、自分はどちらにしようかと考えぬきました。考えぬいた結果、出した結論が両方の良いとこ取りをして融合したお店にしないといけないなということでした。ですから高校時代から飲食に関わらず経営の本は貪り読んでいました（笑）。
－ 3店舗の飲食店経営を任された現在に活きているということですね。
そうですね。やはり飲食店をビジネスとして考えた時には、美味しいお料理やお酒、お客様に満足いただけるサービスのご提供はもちろんのこと、戦略をきちんと練り上げて、数値にも強くなって経営していかねばなりませんから確かに活きていますね。大きな会社でしたら経営と現場というように明確に分けて組織としてできますが、私どもの場合は一人である程度高いレベルを求められるということもあります。
例えば、じょうのや本店をオープンさせた時でもそうでした。一般的に飲食店をやる場合にはターゲットとなる客層を決めますよね。男性主体か女性主体か、もう少し絞ると40代のサラリーマン主体か20代のOLが主体かなどと。でもそう考えるとお客様のパイ自体が少なくなってしまいますよね。ですから私は幅広い客層に合う店舗づくりを目指しました。その結果、この辺の会社を引退された高齢の方の集まり、20歳位の女子会、30～40歳代のサラリーマンの飲み会、若いカップルのデートの場などと様々なシチュエーションでお使いいただくことができました。一般的にはこのような考え方は無謀といえるかもしれませんが、最初から戦略と戦術を練り上げて行動したからこそできたことだと思います。
－ ご自身ご経験をもとに従業員の方にどの様な教育をされているのですか。
教育といえるかどうかわかりませんが、コミュニケーションをとるようにしています。上の方から押し付けても、それではなかなか身に付かないと思っています。ですから相手の考えをしっかりと聞く、それに対してこちらの考えをきっちりと返すということを心がけています。
飲食業全般的に言えることだと思いますが、この業界で働くということは将来は自分のお店を持ちたいと考えている方が多いと思います。当社もご多分に漏れず、独立志向の強い子が非常に多く在籍しています。そうなると日々の仕事内容だけを身に付ければ良いというわけにはいけません。数字に強くならなければいけませんし、戦略･戦術の立案もできなくてはなりません。私はみんなの将来の夢、何歳までに独立したいのか、何をやりたいのかを聞いて、そのために何を勉強したらいいのか、どの様に学び取ったらいいのかときっちりと話をしています。それによって彼らがステップアップしてくれればいいですし、自主性がでてくれば、日々の仕事にもプラスになりますからお店にとっても良い方向に進みます。押し付けよりも協力の姿勢をとる、Give & Take じゃないですが、そういうことを心がけて接しています。
