政界でも地域主権が叫ばれている今、地方に根ざし、その根を広げている飲食企業は何を目指しているのであろうか?大都市圏を中心とした大手居酒屋チェーンは、低価格居酒屋を生み出し、居酒屋業界は群雄割拠の様相を呈している。そのような中で、九州という地域に密着し、80店舗強の直営店を有する居酒屋チェーンの飲食店経営の真髄について 株式会社ジェイアンドジェイ 代表取締役社長 松山勝幸氏にお伺いした。
- 飲食チェーン店を経営していく上で、経営者の役割とは何でしょうか?
【 松山氏 】 それは難しい質問ですね。” 社長が偉くて、立派であれば・・・ ” なんていう戦後の時代はありましたが。居酒屋業界には結構わがままな経営者がいますよね。だけどそういう経営者は一発屋で終わってしまっている人が多いように思います。だけれどコツコツやっているだけでも駄目、そうなると世の中の流れが変わった時に流されてしまうことがある。「 流れに抗った(あらがった)ため、流れに押さえ込まれてしまった 」 と仰られた大手の社長さんがいましたよね。難しいですね。
経営というのは継続させるということが重要なのでしょうね。雇用を継続させる。お客様やお取引先との信頼関係を継続させる。そのために私たちがすべきことが地域貢献なのでしょう。うちだけでなく、向かい側にお寿司屋さんがありますが、まさにそうですよね。3億も4億も売上を上げていますが、きっちりとこの地域に根ざして経営をしていますから。そういう店が生き延びていくのではないかと思います。
- 従業員の方に対してよく話されていることは何でしょうか?
【 松山氏 】 「 うちは料理屋だけれど、料理だけできればいいんだという考え方をするな 」 とは口が酸っぱくなるくらい言っていますね。飲食店は料理ができれば商売が成り立つというものではありません。お客様が楽しんでくれて、その結果お金を払っていただいて成り立つものなのです。皆が皆とは言いませんが、料理ができると頭が固くなって横着になる子って結構見受けられます。飲食店に勤めているのなら、その前に 「 この食材はどこでどの様に作られているのか 」 「 お客様は楽しんでいただいているか 」 「 何故この店が成り立っているのか 」 「 何故自分がここにいられるのか 」 とか考えることがたくさんあるはずです。こういうことが考えられない。人間として当たり前のことが。人間力が無いのでしょうね。うちの子には 「 二十歳までの顔は親の責任、二十歳からの顔は自分の責任 」 と言っています。顔って結構人間性が出るじゃないですか。言葉遣いとか、所作とか、態度とかね。自分がやってきたことで顔かたちが変わるもんなんです。成人までは、ちゃんとできなかったら親を恨めばいいんです。だけれど成人を超えたらね。やっぱり自分の責任なんですよ。人間力をつけないとそのまま会社に残っても、独立して自分の店を作っても上手く行かないでしょうね。だからこそ人間力を身に付けさせたいと思っていろいろと口が酸っぱくなるくらい言っているわけです。
それと、学歴、学歴といいますが、僕は 「 学歴より学力を付けろ 」 と言っています。学ぶ力、学ぼうとする力があれば必ず大成できますよ。
- 人間力を身に付けるために重要なことは何でしょうか?
【 松山氏 】 世の中を見るということでしょうね。世の中の流れがどうなっているのか。その為には世の中を知る必要があります。知るためには勉強しなくてはいけない。自ら学ぼうとする意識を持てれば、人間謙虚になれるのです。謙虚になれば勉強をしようとする。勉強をすれば世の中を知ることができる。こうなるわけです。
世の中の流れが見えれば、独立してもどういう業態がいいのか、どういうお店がいいのかと自分のプラスに働きますからね。だから勉強をしないといけないんですよ、新聞を読むとかね、競馬の予想紙ばかり見てても勉強になりませんよ(笑)。
調理技術が上がると生意気になるのは勉強が足りないからなんですよ。世の中は勉強。技術を身に付けようとする前に、まず学ぼうという意識を持ちなさい。謙虚になりなさい。そして挨拶をきちっとしなさい、身なりをきちっとしなさい。そうすれば顔が変わって行くんです。人間力が身に付くんです。それから学力、学ぶ力、学ぼうとする力も身に付くんです。
- 逆に経営者がやってはいけないことは何ですか?
【 松山氏 】 人間力が身に付いていないことですね。トップに人間的な魅力が無いと 「 この人についていこう 」 という気にならないでしょう。例えば、自分が飲みに行くと10万もするワインを飲んでおきながら、従業員には 「 お前たちは辛抱せい 」 と給料をケチったりする経営者ね。そうすると従業員の心もすさんじゃうんです。メニューブックには肉500gと書いてあるのに実際には300g出さないで差分を懐に入れちゃうとかね。ただ単に流行の店を造ればいい、お金儲けをしたいと考えているような経営者には人間力が無いのです。