政界でも地域主権が叫ばれている今、地方に根ざし、その根を広げている飲食企業は何を目指しているのであろうか?大都市圏を中心とした大手居酒屋チェーンは、低価格居酒屋を生み出し、居酒屋業界は群雄割拠の様相を呈している。そのような中で、九州という地域に密着し、80店舗強の直営店を有する居酒屋チェーンの飲食店経営の真髄について 株式会社ジェイアンドジェイ 代表取締役社長 松山勝幸氏にお伺いした。
- “ 地域のお客様に喜んでいただく ” とは具体的のどの様なことでしょうか。
【 松山氏 】 地域に根ざしたお店であることが重要です。どれだけその地域の方々を雇用するか、どれだけその地域の食材を使うかということですね。地域で商売するということではなく、その地域に貢献をするという考えです。
当社には1,500人以上の従業員がいますが、ほとんど地元採用です。この地元採用は利点があります。地元の大学生がうちの店でアルバイトするじゃないですか。そうすると、その子たちが社会人になってもうちの店に来てくれますからね。それも友達を連れて。福岡で就職したら福岡のお店に友達を連れてきてくれる。結果的に良いお客様になってくれます(笑)。
地域の食材を使うことに関しては、地場のお取引先と深いお付き合いになります。ここでも商売というより協業、お互いに夢を共有しながら一緒に一つのものを築き上げるということじゃないでしょうか。“ 三方良し ” ではないですが、お客様とお取引先、そして従業員が幸せになる。そういうことが大切じゃないでしょうか。
話はそれますが、地域に根ざしていると著名人も来てくれます。例えば、武田鉄也さんは 「 十徳やにはよう行った 」 と言ってくれましたし、ソフトバンク・ホークスの松中選手。彼は八代の出身なのですが、うちの八代店に来ていただいた時に 「 十徳やの社長です!」 と言ってサインを貰いましたよ(笑)。
友人でもある、ツタヤの創業メンバーだった ニューコ・ワン の村井社長も 「 お金儲けをしたいから、家庭を幸せにしたいからではなく、その仕事をやることで、どれだけその地域のお客様のためになるのか、世の中のためになるのかと考える事が重要だ 」 と言っています。つまり自分たちの利益を優先させるのではなく、仕事に関わっている全ての方々のことを考えなさいということですが、正にその通りだと思います。
- お考えを浸透させるにはかなり密な従業員教育をされているのですか。
【 松山氏 】 従業員教育はしなくても良いというと表現が悪いのですが、特別なことはしていませんね。というのは多くの子は将来は独立したいと思って来ているわけだから当事者意識が高いです。自分で勉強して、技術を盗んでと一生懸命やっています。とはいえども全くやっていないわけではなく、若手に対して ” 夢セミナー阿蘇山研修 ” というのをやっています。今の若い子は集合教育を嫌がるでしょう。でもうちの子達は、「 また行きましょう 」 などといって辞めないんですよね。4班に分けてやったのですが、彼らは良いですよ、1回登れば良いだけだから。私は4回登らなくてはいけないんですからね。大変ですよ、山の頂上まで一歩一歩登らなくてはいけない。阿蘇山って何メートルあるか知っていますか?1,592mですよ。1(ひ) ・ 5(ごの) ・ 92(くに) ですから(笑)。
【 松山氏 】 “人” ”物” ”金” の管理をきっちりとルール化していくことだと思います。飲食店だからといって皆が皆、料理がわからなくても、料理ができなくてもいいのです。自分自身、包丁を握ったことがないですからね(笑)。世の中には料理長だとか、シェフだとかが幅を利かせているお店があります。もちろんそういう業態も在り得るでしょう。だけど居酒屋は違う、数店舗作ったら行き詰ってしまうと考えました。我々がすべきは、きちんとした組織を作って、きちんとした人を入れて、きちんとした教育を行って行くことだと考えました。事実若い子でも1ヶ月できちっとしたものが造れるようになりますからね。さっきも申し上げましたが、今の若い子の多くは独立したいと考えていますから、仕事に対しても本当に真面目に取組んでいます。ですから短期間で結果が出るのです。
同じ九州でも某FRの創業者は 「 俺の目が黒いうちは、俺の味付けを・・・ 」 などと言う方がいましたが、私はそういうのに無頓着だから(笑)。料理を中心にすると難しいと思います。組織化をして、“人” ”物” ”金” の管理をきっちりとルール化していくことが重要ではないでしょうか。