政界でも地域主権が叫ばれている今、地方に根ざし、その根を広げている飲食企業は何を目指しているのであろうか?大都市圏を中心とした大手居酒屋チェーンは、低価格居酒屋を生み出し、居酒屋業界は群雄割拠の様相を呈している。そのような中で、九州という地域に密着し、80店舗強の直営店を有する居酒屋チェーンの飲食店経営の真髄について 株式会社ジェイアンドジェイ 代表取締役社長 松山勝幸氏にお伺いした。
- ジェイアンドジェイ社の成り立ちについてお教えください。
【 松山氏 】 もともとは、地場の大手のスーパーマーケットの外食部門で 「 十徳や 」 と 「 寿里(じゅり)庵(あん) 」 という屋号の居酒屋からはじまりました。「 十徳や 」 は字の通りお客様に多くの徳をご提供したいとの思いから、「 寿里庵 」 は親会社の名前を取って作りました。ですから社内では寿里庵は非常に評判が良かったです(笑)。
そこから独立したのが平成2(1990)年ですから、今年でちょうど20周年を迎えることになります。社名は社内公募で決めることにしまして、最初JJという提案があったのです。JJだと女性週刊誌の名前みたいだし、当時JAやJR、JTだとかが話題だったので、これはいかんなということでJ&J(ジェイアンドジェイ)と鶴の一声で決めました(笑)。J&Jは”JOIN”&”JOY”の略だとか諸説ありますが、Jittokuya(十徳や)とJyurian(寿里庵)もJ&Jですからね(笑)。
【 松山氏 】 平成9(1997)年に 「 さかな市場 」 という業態を出したのですが、この頃には東京や大阪からいろいろな居酒屋の全国チェーンが九州に出てきました。このような店に勝てないまでも負けないためには、やはり差別化を図っていかなくてはなりませんでした。そこで考えたのがより地域色を鮮明にしようということです。九州は魚介類も農産物も畜産物も美味しいですよね。この九州の素材を最大限に活かすお店作りをすれば差別化が図れると考えました。その中で、まず美味しさの点でレベルが違う魚を使うことにしたのが 「 さかな市場 」 です。もちろん割烹や料亭は美味しい魚を出していました。でもヤリイカが一杯6,000円、7,000円。関あじが一尾7,000円、8,000円もします。庶民的でないというか、こんな閉鎖的な商売は長続きしないと考え、例えばやり烏賊を一杯1,980円という画期的なお値段で提供するお店にしました。
- そして今度は ” 低価格 ” 業態を出されましたよね。
【 松山氏 】 世の中の流れですからね。だけど、ただ単に安くすればいいもんではないと思っています。安くて良い品を出すことが大切ですよね。そのためには素材特化型にする必要があると考えました。焼鳥に特化した低価格の業態が 「 情熱酒場 」 です。それだけじゃ面白くないから、食文化を変えてみようかなと思い、レバーを中心にしてみました。福岡で焼鳥といったら皮なんですよ。レバーって癖があるから敬遠する人が多いでしょう。でも本当に美味しいレバーって、味も匂いも癖がないんですよ。情熱酒場のレバーは絶品ですから是非一度食べていただきたいですね。
それと若い方をターゲットに考えましたから雰囲気には気をつけました。お店の内装、従業員の立ち振る舞い、注文のしやすさ、値付けのわかりやすさ、こういったことのトータルの雰囲気が受け入れられたのでしょうね。本当に雰囲気が良かったという感じがしますね。
雰囲気というと個人的にはガード下が好きなんですよ。男が飲むのに一番似合っているのはガード下。男の原点だと思いますね(笑)。有楽町のガード下なんか良いでしょう。ビールケースを椅子にして、寂れた(さびれた)コートの襟を立てて、おばちゃんと「あんた良いコート着ているじゃない」などといった他愛もない会話をする。自分の姿に酔っちゃうよね(笑)。これは全国チェーン店じゃ出せないからね。
- 次に多店舗化についてお伺いします。失礼ですが地域限定で80店舗も出店できた理由をお教えください。
【 松山氏 】 現在81店舗(2010/06/08現在)ですかね。九州7県と広島、山口県ですね。理念というか考え方ですが、80のチェーン店舗を作るということではなく、地域、地域でお客様に喜んでいただけるお店を作って行ったら、80店舗になったということです。No.1を目指すのではなく、その土地のOnly.1店を目指すということですね。個人の経営でも流行っているお店もいっぱいあるじゃないですか。熊本でも 「 HERO海 」 だとか 「 酒湊 」 だとか。彼らは凄いですよ。若いですが認めますよね。だけれど東京の店をただ真似しただけの店、これは長くは続きません。熊本でも一時期に数十店舗まで伸ばしたのに、しぼんでしまった会社がいくつかありますからね。あとは、大手全国チェーンの尻尾を踏まないことですね(笑)。彼らとは喧嘩しても勝てないですから(笑)。