ITの活用は企業経営において重要な位置を占める。飲食店におけるITは本部の効率化、店舗の効率化などに使われているが、今回は集客のためのIT活用にスポットを当ててみたいと思う。飲食店における集客の一助にもなりうると考え、少々毛色は違うが、飲食チェーンも経営する明治座が劇場の集客のために活用するデジタルサイネージ(電子看板)について報告させていただく。
サントリーの外食事業の中心を担っているダイナック。同社の創業は1958(昭和33)年と50年を超える歴史を誇る。「 響 」 「 咲くら 」 「 鳥どり 」 「 パパミラノ 」 などの業態を首都圏と近畿圏に展開すると共に、東北から中国・四国に渡る全国規模でゴルフ場のレストランを運営している。同社の特長の一つが、大手外食チェーンにもかかわらず、各店に料理長を配置し、こだわりの料理を提供していることが上げられる。また、同社は、一般社団法人オープン・フードサービス・システムコンソーシアム (OFSC) のコアメンバーでもある。 全国規模で展開している外食企業がシステムの安定運用のために活用している事例について同社システム部 部長の大橋健治氏に話を伺った。
ロードバランサー導入の目的
当社は、250店舗近い飲食店と6000人近い従業員(パート含む)を有しています。
さらには食材を調達している業者さんなども合わせると日々の管理だけでも非常に大変な状況です。この管理のために、売上、財務・経理、給与、勤怠、シフト、受発注や顧客管理などのシステムを自前で構築しました。これらのシステムをノンストップでかつ人数をかけずに運用していく必要性が2000年初頭からの経営的な課題でした。特に昨年起きた東日本大震災のような大災害が起きた場合でも全国展開をしている企業としてはシステムを止めることは許されません。そこで当社は2つの課題解決を図って参りました。
一つ目が、システムの二重化です。例えば、東京で大震災が起こったり、大規模停電が起こった場合、東京だけにシステムを集中させていると完全に業務がストップしてしまいます。それを防ぐために大阪にもシステムセンターを構築しました。当社の場合、東京のシステムセンターをメインとして稼動させ、大阪のシステムセンターはバックアップとして位置づけています。東京のシステムがストップした場合、瞬時に大阪のセンターで全く同じシステムが動き出すようになっています。ここに必要なのがロードバランサーという機器なのです。システムの稼働状況を監視していて、何らかのトラブルでストップした場合に、瞬時にもう一方のシステムを稼動させるために必要な機器です。
二つ目が、サーバーの仮想化です。先ほど申上げましたように当社では売上、財務・経理、給与、勤怠、シフト、受発注や顧客管理など数多くのシステムを有していますので、サーバーの数も30台以上保有していました。そうなるとハードウェアのコストはもちろんのこと、場所代や冷房費、さらにはそれ相応の管理者を有さなければなくなります。これらのシステムを仮想化にすると1台の物理サーバーの中に複数のゲストサーバーを格納できますので、サーバーの数を画期的に減らすことができるのです。例えば当社の場合、東京と大阪に4台の仮想サーバーがあり、windows系とLinux系のゲストサーバーを複数立ち上げることでサーバーを集約することができます。これによりサーバーの機器代が大幅に削減できるだけでなく、システム構築費、場所代、冷房費などの費用も削減できます。さらには、システム管理者の負担も軽減でき、人数が削減できることから人件費の圧縮にもつながります。
この仮想化されたシステムを二重化するために必要なロードバランサーが、KEMPテクノロジー社製の 「 ロードマスター 」 という製品なのです。特長は、仮想環境に対した製品(仮想アプライアンス)も提供されていることです。日本では株式会社OPENスクエアさんが販売しているのですが、当社はPCIアイオスさんにシステムインテグレートを頼んでいますので、機種の選定、購入から導入作業までをPCIアイオスさんにお願いしました。
機種選定を慎重に行なって頂いたこともあり、導入作業は何の問題も無くスムースに完了しましたが、PCIアイオスの石川さんからは「導入作業時にOPENスクエアさんのサポート担当者に迅速に対応して頂いたのは、大変助かった」と聞いています。
導入効果について
この仕組みは、万が一の場合に効果を発揮するものなので、幸いにもまだ 起動してしまった経験はありません (笑)。ですが、システムを仮想化できたことによって、機器の費用、システム構築費用、サーバールームの面積が減ったことによる場所代、サーバーを冷やすための冷房費といった費用は大幅に削減できました。また、運用が楽になったのでシステム要員の省力化も実現できました。
今後の取組みについて
仮想化の特徴としてクローンマシーンを作りやすい、つまり簡単に増設できることが挙げられます。その特徴を活かして、各システムの負荷を見ながら、負荷が増えてきたら増設して行きたいと考えています。
もう一つの特徴が、 遠隔操作に適している点と移設しやすい点が上げられます。今までは自社内でシステムを運用していましたが、近い将来には外部のサーバーを借りてシステムを移築したいと考えています。これによりシステム運用費用の大幅な削減が期待できます。また、ロードマスターは、外部サーバーを利用したときにも仮想化されたロードバランサーなので簡単に移動することができる利点がありますので安全性を確保する面からも今後も使い続けて行きたいと考えています。株式会社ダイナック
本社 東京都新宿区新宿1-8-1 大橋御苑駅ビル7F
設立 1958(昭和33)年3月
事業内容 飲食店経営(東京都・大阪府・他271店舗)
制作協力 システム部 部長 大橋健治氏
株式会社OPENスクエア
本社 東京都千代田区神田紺屋町17番地 SIA神田スクエア2F
代表取締役 田中昭造
TEL 03-6413-1840
事業内容 ロードマスター、セコムSSL証明書、カスペルスキーなどの販売、OSS eラーニングシステム、OSS業務アプリケーションなどのサービス
PCIアイオス株式会社
本社 東京都品川区上大崎1-1-17 LSビル6F
代表取締役社長 関谷 恵美
TEL 03-5791-3400
事業内容 1.コンピュータソフトウエアおよびサービス、企業におけるコンピュータシステムのコンサルティング、企画、開発、指導および販売に関する業務 2.コンピュータハードウエア及び周辺機器の開発および販売 3.情報処理システムの計画立案、設計、開発、運用管理および情報提供サービスなど