【企画特集】人財戦略最前線 優れた人財を確保するための糸口を探る-飲食店経営者が考えるべきこと

企画特集 人財戦略最前線 優れた人財を確保するための糸口を探る-飲食店経営者が考えるべきこと

厳しい経営環境にさらされている飲食業界において、優れた人材、いや“人財”を確保することは経営上、喫緊急務な課題である。今回はパート・アルバイト誌「an」や転職サイト「DODA」を発行する株式会社インテリジェンスの協力のもと、優れた人財を確保するために飲食業経営者にとってヒントになることについて見て行きたい。

第1回 i-common×an経営革新セミナーレポート なぜ、スターバックスバックスで働きたくなるのか?人気と成長を支える“人間力”育成 Vol.1

第1回 i-common × an 経営革新セミナーレポート なぜ、スターバックスバックスで働きたくなるのか?人気と成長を支える“人間力”育成 Vol.1

昨年9月、元大手企業幹部などシニアエグゼクティブの顧問サービスを提供するインテリジェンスのi-commonと求人情報サービスanが 「 経営革新セミナー 」 を共同開催した。『 企業成長につながる人材マネジメント 』 をテーマとして、元スターバックス コーヒー ジャパン執行役の簔口一実氏の語ったスターバックスにおける人材育成について紹介する。

ミッションステートメントが全ての軸に

米シアトルに拠点を置くスターバックスが日本に進出したのは1995年。翌年、銀座に第1号店が誕生し、以来、着実に実績と店舗数を伸ばしてきた。その成長を支えてきたのは 「 手法ではなく、基本理念とブランディング、それと従業員のやる気です 」 と簔口氏は断言する。

「 経営理念 “ 感動体験を提供して、人々の日常に潤いを与える ” を実現するために、スターバックスでは“ミッションステートメント(使命)” を掲げています。これが現場運営の軸になっています。店舗運営もサービス内容も人事考課も、すべてこの “ ミッションステートメント ”に従って決定されているのです 」

スターバックスの“ミッションステートメント”
  • お互いに尊敬と威厳をもって接し、働きやすい環境をつくる。
  • 事業運営上で不可欠な要素として多様性を積極的に受け入れる。
  • コーヒーの調達やばい煎、新鮮なコーヒーの販売において、常に最高級のレベルを目指す。
  • お客様が心から満足するサービスを常に提供する。
  • 地域社会や環境保護に積極的に貢献する。
  • 将来の繁栄には利益が不可欠であることを認識する。

元スターバックス コーヒージャパン株式会社 執行役 簔口一実氏特に1つ目に掲げられている 「 お互いに尊敬と威厳をもって接し、働きやすい環境をつくる 」 は、働く仲間に対してのミッションであり、言葉の裏には上下関係なく共にいい環境で働こうという思いが込められている。その思いは、社員もアルバイト、役職も関係なく、同社で働くすべての人を 「 パートナー 」 と呼んでいることにも表れている。

また、スターバックスではお客様からの声を反映し、新たなサービスや商品を開発し、提供しているが、お客様の声すべてを実行するわけではない。ミッションを念頭に置いて自分たちがすべきことは何かを考え、すべきとみなしたことのみを実践している。「 どんなに優秀でもミッションステートメントに共感できない人は採用しません。だからこそ、ぶれないサービスが提供できるし、ぶれない人材育成ができるのです 」

このように同社のミッションステートメントは、日々の業務の中に浸透している。そのため、本部の決定事項に納得がいかないと、一店舗の店長が直接電話で本部へ意見してくることもあるという。

「 もちろん店長にとって、納得がいくかどうかの判断は決して主観ではなく、ミッションステートメントに則っているかどうか。今、我々がすべきことは何かを必ずミッションに落とし込んだ上で発言するわけです。だからこそ本気の話し合いができる。そういう企業体質こそが、スターバックスの魅力だし、成長の根幹を担っているのだと思います 」

なぜ、スターバックスで働くのか

「 正直、時給も決して高くない。それでも、スターバックスで働きたいと応募してくるアルバイトは多かったですね 」 と簔口氏。

「 知り合いから、ここでの経験がキャリアパスになる、社会人になって役立つと聞いて来る人も多かったし、スターバックスというブランドの下で働く自分が好きだからといって入ってくるアルバイトも多かった。今もそこは変わっていないと思います 」

同社では、基本的に新入りのアルバイトは最初の1週間は店に出ず、教育を受ける。そこで学ぶのは、スターバックスの基本理念から、勤務に関わるシフト体制、衛生面で気をつけるべき点など。やりがいのある会社であることを伝えるプログラムも含まれている。

接客マニュアルはなく、「お客様が何をしてほしいかを考えてサービスしよう」ということが問われるという。ただし、実際の接客には細かなマニュアルのようなものはない。品質マニュアルや製造マニュアルはあるが、接客に関してはたった1行、「 お客様が何をしてほしいかを考えてサービスしよう 」 という内容のみである。

「 要は、あなたがお客様の立場になった時、やってほしいと思うサービスを提供しなさいという、ただそれだけなんです。つまり、接客はすべて自分次第。だから、スターバックスで働くのは面白いし楽しいと言って、長く働いてくれる人が多かったです 」

自分で考えて提供したサービスでお客様が喜んでくれる。その経験を通して接客の真の楽しみを感じ、モチベーションにつながっているのかもしれない。



簔口一実氏

簔口一実氏

(元スターバックス コーヒー ジャパン株式会社執行役)

i-commonに登録するシニアエグゼクティブ。1997年から2004年までスターバックスコーヒージャパンに在籍し、店舗開発、店舗運営、新規事業開発などに取り組む。その後の不動産、飲食店経営など多彩な経験も活かし、現在、顧問業務に従事。

i-common

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http://www.i-common.jp/company/

「an」「DUDA」を運営する株式会社インテリジェンスが提供する新しい「顧問による実行型の経営支援サービス」。

社内の人材や通常の採用では難しい経営課題解決のため、業界を熟知した元大手企業幹部などのシニアエグゼクティブを費用対効果の高い形で活用できる。

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