緊急特集 HOTERES(ホテレス)2012 OES最前線 ~店舗システムの中核を担うOESの今を探る

緊急特集 HOTERES(ホテレス)2012 OES最前線 店舗システムの中核を担うOESの今を探る

“フードサービス”と“ホスピタリティ”専門の展示会としては、アジア最大規模であるHOTERES JAPAN(国際ホテル・レストラン・ショー)2012が2月21日(火)~24日(金)の会期で開催される。併設の展示会(「フード・ケータリングショー」「厨房設備機器展」)と併せ、800社以上の企業が出展し、50,000人を超える来場者を迎える、外食産業に関わる大規模な展示会である。
このHOTERESでも数多くの企業が出品しているオーダーエントリーシステム(OES)。店舗オペレーションを劇的に変え、いまや店舗システムの中核をなすOESの現状を見て行きたい。

第1回 OESの誕生から現在に至るまで

第1回  OESの誕生から現在に至るまで

1980年代の半ばにファミリーレストランを中心に小型のハンディターミナルでオーダーテイクをするレストラン用のOESが普及し始めた。このレストラン用OESを世に出したと言われるのが当社代表取締役の酒美保夫である。酒美がセイコー電子工業株式会社《現セイコーインスツル株式会社(SII)》時代に開発・販売をしたOESはその後機能を充実させ飲食業界ではスタンダードな仕組みと言っても過言ではあるまい。まずは、酒美にOES誕生の裏側からどのように変遷してきたのかを語ってもらう。

緊急特集  HOTERES(ホテレス)2012 OES最前線 ~ 店舗システムの中核を担うOESの今を探る ~- OESを開発するきっかけは?

最初は完全なメーカー側のシーズからでした。当時 SII は時計事業から多角化を図っていました。私は時計の新商品としてソフトウエアを入替えて、いろいろな機能の腕時計が実現できる 「 腕コン(※ 1 ) 」 の設計をやっていましたが、その中で 「 電磁誘導データ伝送 」 「 低消費電力 LSI / CPU 」 などの要素開発が行われました。この技術を使って応用商品ができないかを探っていました。その応用の一つとしてあがったのが、レストラン・オーダリング・システム( OES )です。 OES は、まずニユートーキヨーさんに興味を持っていただき、さまざまなご意見をお聞きすることで、商品化を進めることができました。

緊急特集  HOTERES(ホテレス)2012 OES最前線 ~ 店舗システムの中核を担うOESの今を探る ~そのような時に、すかいらーくさんとの出会いがあったのです。当時のすかいらーくさんは単一業態で急速な店舗展開を目指されていました。そのために IT システムで店舗オペレーションを効率化できないかと模索中でした。具体的には、教育期間の短縮・動線の短縮・会計時間の短縮と言った効率化、オーダーや会計のミスの防止、オーダー内容のデータ化とその活用といった要望でした。ここで初めてシーズから企画した商品とニーズがマッチングしました。

(※1) 「 腕コン 」 … 腕時型コンピューター

- OESが普及した要因は?

外食産業界ではファミリーレストランが最盛期で、 OES を真っ先に導入していたすかいらーく、ロイヤルホスト、デニーズのいわゆる御三家を中心に店舗数を伸ばしていましたので必然的に OES が使われるようになりました。

また、当初は電磁誘導方式とハンディターミナルをいちいち転送機まで持っていかなければならなかったのですが、これを無線方式にすることで更なる動線短縮と言う効率化が図れたことで導入店舗が増えていきました。

1985 年~ 1988 年頃が、ファミリーレストラン各社が導入した第 1 普及期、 1988 年~ 1991 年頃が、居酒屋チェーンが急成長して OES を導入した第 2 普及期と言えるでしょう。

緊急特集  HOTERES(ホテレス)2012 OES最前線 ~ 店舗システムの中核を担うOESの今を探る ~- OESの現状について

OES が世に出た時期はちょうど外食産業界の拡大時期にあたり、大手外食企業を中心に積極的な設備投資行うとともに OES 市場に大手 IT 企業がこぞって参入したことで、今や珍しい仕組みではなくなりました。機能も充実し、サポート体制も飲食店の特徴的な営業に合わせて 365 日 24 時間対応も当たり前のようになっています。

ただ、成熟したからこそ 『 業界の常識 』 に縛られて画一的になっているようにも思われます。また、コスト的にも安い物ではないので小規模な店舗ではまだ高嶺の花といっても過言ではありませんでした。近年は飲食関連の展示会などで目に触れることもあると思いますが、多くのシステムベンダーがスマートフォンなどを使った OES を出しています。さまざまなベンダーが、新しいアイディアで OES を商品化していることは、外食産業にとって選択肢が広がり良いことだと思います。

- OESの将来像について

緊急特集  HOTERES(ホテレス)2012 OES最前線 ~ 店舗システムの中核を担うOESの今を探る ~OES は、外食店舗で発生するデータの源であり、データの宝庫です。ただ単体で OES 使うことは少ないと思いますし、それでは充分な導入効果を得ることはできません。 POS 、販売管理システムなどの基幹システムや様々なシステムと簡単につなげることができ、 OES のデータを有効に活用することが必要です。そこで 一般社団法人オープン・フードサービス・システム・コンソーシアム(OFSC) が提唱する 「 OFSC標準接続規格 」 などの利用が有効になります。 これは機器間の接続をオープン化することによりカスタマイズすることなく各機器をつなげられるものです。全米小売業界( NRF )が提唱する 「 POSLog 」 にも準拠していますので世界標準ともなりうるものです。

「 OFSC 標準接続規格 」 などが今後広まっていくことにより様々なニーズにあった OES が誕生していくことになり、様々な飲食企業が導入できるようになると考えています。



酒美保夫 株式会社フォアサイト代表取締役

酒美保夫 株式会社フォアサイト代表取締役

http://www.4sight.jp/

セイコーインスツル(SII)に25年勤務。レストラン・居酒屋・ファーストフードなど、あらゆる業種向けシステムの開発・製造・販売を事業化してきた。特に、オーダリングシステムはプロジェクトリーダとしてその当初から携わり、当時「外食産業御三家」と言われたすかいらーく・ロイヤル・デニーズなどの多くの外食企業に採用された実績を持つ。

2003年SIIを退社。同年、株式会社フォアサイトを設立。現在、外食産業企業・IT企業などを会員とし、標準化により投資対効果の高いシステムの実現を目的とする 一般社団法人オープン・フードサービス・システム・コンソーシアム(OFSC)の事務局長をつとめる。また、経済産業省委託の「外食産業向けITシステム・機器の接続規格の標準化委員会」の事務局長もつとめる。

文: 齋藤栄紀
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