■後編 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Hostec Asia は、ホテルと飲食業の IT システムの展示会である。 FTH Asia に併設で開催されているが、こちらには日系の企業の出展は 1 社もなかった。 US を中心とした欧米系企業とシンガポール・台湾企業で占められていた。その中心は、この分野で世界的にシェアを持っている Micros と IBM である。しかし、この 2 社ともに日本の市場では、シェアは大きくない。 Hostec Asia の中心企業である micros と IBM ブースで話を聞いてみた。 Micros の J.Zhang 氏と R.Chenthamarakshan 氏は、「 Micros はワールドワイドに店舗の POS システムからバックオフィースの店舗管理システム、企業レベルの管理システムをトータルに提供している。多各語対応になっており、ハードウエア・ソフトウエアは同じものを販売している。ユーザでのカスタマイズはするが、国によるローカライズはしてはいない」とのことだった。しかし、日本のことを聞くと、「日本語対応はできていない。日本のことは良く分からないので日本支社から連絡させる。」とトーンダウンした。
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IBM ブースでも同じことを聞いてみた。 Darrell Tan 氏は、「 IBM はワールドワイドにホテル・飲食業で大きなシェアを持っている。言語も多各語対応になっており、世界各国に同じ製品を提供している。また、言語の組み合わせもでき、一つの店舗でレシートは英語・フロントは中国語・厨房伝票はタイ語などといった対応も出来る。」と語った。また、ハンドヘルドでは Symbol 社とアライアンスを組んでおり、日本でポピュラーなハンドヘルドのオーダリングも実現していた。その他、目を引いたのは、水がかかっても大丈夫な POS ターミナルで、飲食業やテラス席での使用を意識して開発したとのこと。そう言えば、この話をしている時、外は激しいスコールだった。
この 2 社に共通した考えは、グローバルに商品を提供する前提で開発していること。経営者、従業員、来店客がそれぞれ違う言語を話す人種であることを前提にしてシステムが作られている。これが本当の多各語対応だろう。経営者、従業員、来店客が皆日本語を話すことを前提にしている日本のシステムとは違っている。でも、 2007 年問題でクローズアップされる、日本人就業人口の減少に対しこんなことが必要なのかもしれない。 それ以外のブースでは、昨年の NRA ショウ同様に、 PDA を使ったハンドヘルドのオーダリングが多く見られた。この PDA のオーダリングはシンガポールでは、普及しはじめているとのことで、この地のレストランチェーンの Jambo でも使われていた。
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IT 関係の日系企業はいないと思い、取材を終了しようとした時に、 IT 関係の唯一の日系企業、寺岡のブースを Hostec の外に発見した。寺岡の竹本章子氏によると、 PDA を使用したオーダリングを日本で開発し今回出展したとのこと。このシステムはポータブルなセルフオーダリング端末もあり良く作り込まれている印象だ。是非、健闘を期待したい。
寺岡の出展はあったが、その他の日本市場でシェアを持った企業の出展はなく、一方世界的にシェアのある Micros 、 IBM は日本のレストラン向け IT システムの市場でのシェアは大きくない。日本だけ孤立した特殊な市場との感想を持ったし、このショウの出展社に聞いたところ同様な意見だった。 しかし、 IT システムに関しては、日本の市場だけに向けて作られたシステムはコスト面で、グローバルな市場に向けて作られたものに比べ高いはずである。また、結果として外食企業は高いものを買うことになる。日本の IT 関連企業も、日本の外食産業のノウハウを基に作られた製品でグローバルな展開を目指すべき時期に来ているのではないか。また、グローバルな市場で使われているシステムを言語の問題はあるが、積極的に評価してみる必要があるのではないだろうか。 最後に、 Hostec の Chairman の Robert Grimes 氏と話をした。彼も、「日本市場は世界の中で特殊であり、世界的に高い評価をされているシステムも日本には参入できない。日本には優秀なベンダーが多くあるのだから、トータルシステムを持って、出てきて欲しい」と語った。
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酒美 保夫
大手外食システムメーカに25年勤務。レストラン・居酒屋・ファーストフードなど、あらゆる業種向けシステムの開発・製造・販売を事業化してきた。特に、オーダリングシステムはプロジェクトリーダとしてその当初から携わり、他社に先駆けて大規模展開を行い、長年に渡りトップシェアの座を保持してきた。
また、近年ではインターネットの急速な普及に着目し、早くから店舗のバックヤード業務や本部業務をASPモデルで提供し、EDIやB2Bなどの方面への挑戦も進めてきた。
ハードウェア・ソフトウェア・インターネットサービスなど、ソリューションビジネスを志向する中で、更にもう一歩、お客様の懐に飛び込んだ、“新しいビジネスの形”を追求しようと考える。