4 月 25 日から 28 日の 4 日間、シンガポールでアジア最大級の食とホテルの展示会 FHA2006 ( Food&Hotel Asia 2006 )が開催された。出展社は、約 2700 社、来場者は 37,000 人を越える規模で、ホテルとレストランの IT の展示会 Hostec Asia 2006 (出展者 18 社)を併設の形で開催した。この 2 つの展示会を合わせると、米国の NRA Show のコンパクト版といった感じである。
この会場で、最初に感じたのは、食材を除くと日本企業の出展社もほとんどなく、来場者も日本人はほとんどいないということだった。会場を歩いていても、中国語・韓国語は耳にするが、日本語を聞くことは無かった。
一方、会場の外では、商店には日本製品が溢れ、法人タクシーの殆どが日本車、ホテル・飲食店やショッピングセンターなどでは多くの日本人ビジネスマンや観光客に出会った。会場で感じたことは、日本とシンガポールの経済関係や距離を考えると奇異であった。そんなことを感じながら各社ブースで説明を聞いた。
食材に関しては、シンガポールの国際性や多民族国家であること、ターゲット市場の周辺各国を反映して、世界各国の食材ベンダーがブースを並べていた。日本からも JA 全農のブースをはじめ数社の出展があった。 JA 全農の安藤充氏は、『南アジア地域での日本米のビジネスは増加傾向にある』と話されていた。
しかし、設備機器や厨房機器となると、ほとんどが欧米企業で、そこに一部地元企業が加わり、日本企業は極端に少なくなる。多く目にしたのは、欧米系企業のブースで欧米人の説明者と地元の来場者の商談のシーンだった。
<欧米系の厨房機器ブースの商談風景>
そんな中でやっと見つけた厨房機器の出展日本企業が三洋とホシザキだった。この 2 社の方にシンガポール周辺諸国の市場についてお聞きした。三洋電機・コマーシャルカンパニー社長の川島克久氏は、「ここでのビジネスは 30 年ほど。長い年月をかけて人間関係を作る必要があった。急な市場参入は難しいでしょう。欧米のメーカも同様に古くからここの市場に参入している。また、ホテルの設計者は欧米人が多く、その人たちが選ぶので、良く知っている欧米のメーカが選択されることになる。そんな理由で欧米系のメーカ中心の市場になっている。」と市場の特徴を説明された。
<三洋電機・コマーシャルカンパニー社長の川島克久氏、三洋ブース>
また、ホシザキ電機・海外事業部の山下和彦氏は、「ホシザキはグローバルな企業で、世界各地にある工場から、そこの市場に合った商品を投入している。そのようなアプローチでないとグローバルなビジネスはできない。また、三洋・ホシザキともに冷蔵機器メーカで、調理機器メーカは、ほとんど欧米系である。調理機器は使う人の身長や厨房の大きさ、ガスのカロリーなどに左右されるため国ごとの状況に合わせる必要があり、これから日系のメーカの参入は厳しいのではないか。」と話された。
<ホシザキ電機・山下和彦氏、ホシザキブース>
このお 2 人のお話を総合すると、当然ではあるが市場参入には時間がかかり人間関係を醸成すことと、企業自身がグローバルなビジネス展開をしていてその市場に最適な商品を投入できることが浮かび上がる。この条件に合う日系企業が少なく、一方欧米系企業が多数ここの市場に参入している。それをこのショウの出展社数が反映しているということだろう。日本の厨房機器メーカは日本中心のビジネス展開で、グローバルな展開が出来ている企業が少ないことが浮き彫りになった。
酒美 保夫
大手外食システムメーカに25年勤務。レストラン・居酒屋・ファーストフードなど、あらゆる業種向けシステムの開発・製造・販売を事業化してきた。特に、オーダリングシステムはプロジェクトリーダとしてその当初から携わり、他社に先駆けて大規模展開を行い、長年に渡りトップシェアの座を保持してきた。
また、近年ではインターネットの急速な普及に着目し、早くから店舗のバックヤード業務や本部業務をASPモデルで提供し、EDIやB2Bなどの方面への挑戦も進めてきた。
ハードウェア・ソフトウェア・インターネットサービスなど、ソリューションビジネスを志向する中で、更にもう一歩、お客様の懐に飛び込んだ、“新しいビジネスの形”を追求しようと考える。